【特報】東証で大規模システムダウン、プログラム改変が原因

2005/11/2

 東京証券取引所は11月1日、株式売買システムに障害が発生し、午前の取引が全面的に停止した。東証1部、2部、マザーズなど全2520銘柄が停止。東証で全銘柄の取引が停止するのは初めて。注文数の増大に対応するためのシステム増強でプログラムミスが発生したとみられる。東証ではシステムを開発した富士通と協力して障害の原因を探るとしている。

東京証券取引所の常務取締役 天野富夫氏

 東証の常務取締役 天野富夫氏は「システム、取引所に対する市場からの信頼を損なった。大変申し訳ない」と謝罪し、「徹夜してでも原因を探る」と述べた。東証とシステムを共有している札幌証券取引所と福岡証券取引所でも午前中の売買ができなくなった。東証は手動でシステムを復旧させ、同日13時30分に全取引を再開した。

 東証によると、システム障害が発生したのはメインフレームで稼働する株式売買システムの手組みアプリケーション。東証は最近の株式注文数の増大に対応するため、10月8日から10日にかけて、株式売買システムのアプリケーションの1日当たりの受注数を620万件から750万件に増強する改変を行った。変更では古いプログラムを削除し、新しいプログラムを追加した。

 東証のシステムでは月末に月次処理としてテーブルを自動で移動、整理して、データベース領域の容量を回復させている。10月31日の月次処理では、アプリケーションの改変にともなって、証券会社と証券会社が利用する端末のコードを格納する「会員情報テーブル」も移動した。しかし、11月1日朝、売買システムのアプリケーションが移動した会員情報テーブルを検知できずにシステム障害が発生した。

 天野氏は「月次処理は毎月行っている。本来は自動処理後にテーブルが移動していても、アプリケーションがテーブルの新しい場所を指定するはずだ。今回はプログラムに欠陥があり、移動したテーブルを見つけられなかったようだ」と説明した。

 システムの開発は富士通、運用は富士通と東証が担当。天野氏は「システム障害の責任の所在は原因を究明してからはっきりさせたい」と述べた。新アプリケーションの事前検証やテストは、東証と富士通の両社で「必要な期間、回数はやった」(天野氏)としているが「データの場所の変更で予測できないところに影響がでた」(同氏)とも述べた。

 システム障害に関連し、東証はシステムを開発、運用するベンダとの契約を一本化する作業を進めていることを明らかにした。これまでシステム開発ごとに異なっていた契約書の内容を同一にし、サービスレベル・アグリーメント(SLA)などを組み込む。システムのバージョンアップに合わせてベンダと新しい契約を結ぶ考えだ。

 証券取引所のシステムを巡っては、ジャスダック証券取引所で8月29日にシステム障害が発生し、午前の全銘柄で取引ができなくなった。ジャスダックの障害の原因は売買システムと証券会社のシステムを接続するシステムのプログラムミスだった。ジャスダックはシステムを開発したベンダの計算ミスが根本原因と説明した。

(@IT 垣内郁栄)

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東京証券取引所の発表資料

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