紙の上の標準ではなく、使われる標準を

2005/11/26

 富士通と日本IBMは11月25日、自律コンピューティング分野に関する協業の取り組み状況を発表した。両社が協業を開始したのは2004年11月。マルチベンダ環境で自律型のシステムの構築を実現するためには、機械が状況判断や対処方法を決定する「自律制御機構」が必要であるとのモデルを描き、そのうえで、自律制御機構の動作を現実化するためのさざまざま技術仕様を標準化を視野に入れながら共同でまとめてきた。

富士通 ソフトウェア事業本部 開発企画統括部 プロジェクト部長 吉田浩氏

 発生するイベントの内容と形式を共通化した「共通イベント形式」を標準化機関OASISに提案、WEF1.0として標準化したことは、両社の1年間の協業の成果として挙げられる。なお、共通イベント形式については、現在、拡張案をOASIS WSDM TC[*1]に提案中。

 今後の協業作業としては、自律制御機構から制御対象に対して出される指示を共通化する作業を継続して行い、早期の標準化を目指す。同時に、ソフトウェアの統合的なインストール仕様の調整も行っている。ただし、これは複数の標準化機関の動き(OASIS SDD[*2]とGGF ACS[*3])が矛盾が出ないようにそれぞれの機関と協調を図りながら作業を進める。

 自律制御機構はポリシーベースで対象の運用管理を行う仕組みである。問題はどのようなポリシー(判断基準)を組み込むかだが、現在はまだ詳細まで詰めきれていない。なお、自律制御機構は各社が製品として開発することを前提としてるが、それぞれの自律制御機構をいかに連携させるかといった技術も継続して検討していく。

 企業間の独自仕様技術を連携させ、規格化を推進する活動を行うのが標準化機関の本来の機能であり、富士通や日本IBMが行っているような協業作業も実際には、標準化機関で行われる範囲の作業である。しかし、「紙の上の標準ではなく、使われる標準を策定していかなくてはならない」と富士通 ソフトウェア事業本部 開発企画統括部 プロジェクト部長 吉田浩氏がいうように、標準化作業に入る前のレベルで企業同士が実際的なすり合わせ作業を行い、実用性を検証したうえで、標準化提案を行う方が、標準技術の実用度は高まる。そういう意味で、両社はマルチベンダ環境の自律型システム技術に関する「標準化のドライブ役」(富士通 常務理事 ソフトウェア事業本部 エグゼクティブ・アーキテクト 石田安志氏)を強く指向しているということになる。

[*1] 「OASIS WSDM TC」:Webサービス技術ベースの分散リソース管理手法を検討する技術委員会:OASIS Web Services Distributed Management(WSDM)Technical Committee(TC)

[*2] 「SDD TC」:ソフトウエアの導入とライフサイクル管理の標準的な手法を策定する技術委員会:OASIS Solution Deployment Descriptor Technical Committee

[*3] 「GGF ACS」:Global Grid Forum/Application Contents Service WG

(@IT 谷古宇浩司)

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