次期Windows OSを見据えるシトリックス、アプリ配信を強化へ
2005/11/30
米シトリックス・システムズのCEO兼社長 マーク・テンプルトン(Mark B. Templeton)氏は11月29日、日本法人が主催したイベント「iForum 2005 Japan」で講演し、「クライアント/サーバアプリケーション、Webアプリケーション、デスクトップアプリケーションのそれぞれに対してシトリックスが最適なアプローチを提供する」と述べ、シトリックスが得意とするアプリケーション配信技術をWebアプリケーションなどに横展開する考えを強調した。
米シトリックス・システムズのCEO兼社長 マーク・テンプルトン氏 |
テンプルトン氏は企業が利用しているアプリケーションをクライアント/サーバ型、Webアプリケーション型、デスクトップ型の3種に分類。そのうえで、クライアント/サーバ型には仮想化、Webアプリケーション型には最適化、デスクトップ型にはストリーミングがベストなアプローチと説明した。
クライアント/サーバ型アプリケーションに提供する仮想化とは、シトリックスのアプリケーション配信ソフトウェア「Citrix Presentation Server」を指す。サーバでアプリケーションを稼働し、その画像イメージだけをクライアントに配信するソフトウェアで、運用管理の一元化やセキュリティの確保が可能。シトリックスは、マイクロソフトのサーバ向け新Windows OSに合わせて、次世代テクノロジ「Constellation」を開発している。「マイクロソフトはベースのプラットフォームを提供し、シトリックスがアクセス周りを提供する」(米シトリックス アドバンストテクノロジー担当副社長 マーティン・ダーズマ[Martin Duursma]氏)という強い協調体制をこれからも推し進める。
ダーズマ氏はConstellationについて、ユーザーのセッションを記録できる機能や、エンドユーザーのレスポンスをモニターできる機能、グラフィックスの高速化などが特徴と説明した。ユーザーセッションの記録機能では、ユーザーの操作やVoIPの音声などをデータベースに保存可能で「日本版SOX法などのコンプライアンスに則ったプロセスが実行されているか、あとからチェックできる」と指摘した。
Webアプリケーションはシトリックスが最近、最も力を入れている分野。同社は全アプリケーションのうち、2008年にもWebアプリケーションの比率が半数を超えると見ていて、関連技術の開発や企業買収を急いでいる。テンプルトン氏がキーワードに上げたWebアプリケーションの最適化を実現するのは、2005年6月に買収を発表した「NetScaler」の技術だ。
NetScalerはWebアプリケーションの負荷分散と負荷軽減機能のほか、レイヤ7スイッチやロードバランス機能、DDoS防御やSSLなどのセキュリティ機能を集約したアプライアンスで、「Webアプリケーションの処理を高速化し、セキュアにする」(NetScalerの創業者で、買収後に米シトリックスのアプリケーション・ネットワーキング・グループ副社長兼ジェネラルマネージャーに就任したビー・ヴィ・ジャガディーシュ[B.V. Jagadeesh]氏)。シトリックスはアプリケーション・ファイアウォールのベンダ、Terosも買収し、アプリケーション向けセキュリティも強化している。
米シトリックス アドバンストテクノロジー担当副社長 マーティン・ダーズマ氏 |
デスクトップアプリケーションでは、シトリックスが開発したアプリケーション分離環境技術を使ってクライアントPCにアプリケーションをストリーミングする。このストリーミング技術は「Tarpon」のコード名で開発中で、PCがオフラインでも利用できるなど利便性とセキュリティを高める仕組みになるという。ダーズマ氏は「リリースは2006年を予定している」と述べた。
日本法人の代表取締役社長 大古俊輔氏によると、個人情報保護の流れなどを受けて同社製品の導入企業数は10カ月前に比べて2000社増の1万1000社になったという。ライセンス数も60万を超えて好調を維持している。Webアプリケーションなどへ横展開を見せる米本社の戦略を、日本の顧客企業にも拡大していく方針だ。
x64、FOMA M1000をサポート
シトリックス・システムズ・ジャパンは11月29日、「Citrix Presentation Server」に、Windows Server 2003 x64 Editionsに対応した「Citrix Presentation Server 4.0 for Windows 2003 Server x64 Edition」を追加したと発表した。バージョンは従来と同じ。32ビット版と比較してサポートするユーザー数を65%以上増やすことができるという。前バージョンのMetaFrame XPと比較すると同じユーザー数をサポートする場合、稼働するサーバ数を3分の1に集約できるという。
シトリックスはNTTドコモのスマートフォン「FOMA M1000」で稼働するICAクライアント「Citrix Presentation Server FOMA M1000クライアント」を2006年初めにも無償で提供開始することも発表した。ICAクライアントを通じて、通常のPCアプリケーションをM1000上で利用できるようになる。シトリックスはウィルコムが12月上旬に発売するスマートフォン「W-ZERO3」に対応するICAクライアントの開発も表明した。
(@IT 垣内郁栄)
[関連リンク]
シトリックス・システムズ・ジャパンの発表資料(x64対応)
シトリックス・システムズ・ジャパンの発表資料(M1000対応)
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