「動画配信サービスの“圧倒的No1”になりたい」〜孫社長

2005/12/20

 ソフトバンクとヤフーは12月19日、共同出資によってTVバンクを設立し、事業を開始したと発表した。合わせて「Yahoo!動画」を強化し、無料コンテンツ1万6000本を含む約10万本の動画コンテンツを提供する動画コンテンツポータルサイトとしてリニューアルするとした。

応援に来た上戸彩さん。家族みんなで使ってみたいとコメントしていた
 TVバンクはソフトバンクが60%、ヤフーが40%を出資し、動画コンテンツの調達や動画配信・検索システムの開発・運用などを行う動画配信会社。ソフトバンクとヤフーは、動画コンテンツサービスに関する人材とノウハウを同社に集中し、一層動画コンテンツサービスの強化を図るという。

 ソフトバンク 代表取締役社長 孫正義氏は、「情報改革はいま始まったものではない。15世紀の印刷技術の発明に始まり、19世紀の電話や20世紀のテレビ、1995年のインターネットとさまざまな技術改革が行った。2000年にはブロードバンド革命が起こり、日本はいまや世界一のブロードバンド大国になった。これからは、静止画や画像だけの『インターネットI』から、動画・音声中心の『インターネットII』に移行する」と予測し、今後動画コンテンツに力を入れていくことを明らかにした。

 TVバンクは「Yahoo!動画」にコンテンツを提供し、動画ポータルサイトとしての機能を充実させていく。当初の動画コンテンツ本数は10万本を予定しており、Yahoo! JAPANが持つ4000万人のユーザーを早い段階で動画ユーザーに移行させるとした。また、同サイトの特徴として、インターネット上の動画コンテンツだけを専門的に検索できる「動画検索インデックス」機能を搭載し、今後も強化していく。孫氏は、「Yahoo! JAPANの4000万ユーザーとTVバンクのコンテンツ調達力で、動画配信サイトとして圧倒的No1の地位を築きたい」と意気込みを語った。

 配信コンテンツは無料と有料の2種類を用意。ビジネスは、無料コンテンツに挿入する動画広告の広告収入と、有料コンテンツの視聴料の2つが柱となる。当初は、無料コンテンツが1万6000本、有料コンテンツが1万5000本、検索インデックスが7万本の計10万本からスタートする。これは、「無料動画配信サイトの競合他社の保有本数は、それぞれ4600本と3800本だ。これは他社を圧倒しているといえるだろう」(孫氏)とコメントとした。

並んで説明する(左)ソフトバンク 代表取締役社長 孫正義氏
(右)ヤフー 代表取締役社長 井上雅博氏

 配信コンテンツは、ワーナーブラザーズのハリウッド映画や、K-1、福岡ソフトバンクホークスの試合模様のほか、メジャーリーグの独占配信権も取得した。また、韓国や台湾のテレビドラマや、オスカープロモーションのコンテンツを集めたオスカープロチャンネル、海外の報道番組なども配信する予定だという。また、段階的ではあるものの、NTTや国内民放各局のコンテンツも配信していく予定だとした。

 孫氏は、「最近、特定の民放局1社を独占的に支配しようとする会社があるようだが、特定の1社を支配するのは良いことではない。われわれは、すべてのテレビ局を自由に見られるプラットフォームを構築する。プラットフォームやポータル事業はヤフーが最も得意とする分野だ」と語り、ライブドアや楽天の買収劇を暗に批判。「民放各社もそれぞれコンテンツ配信を考えている。権利の問題もあるため、現実的にはまず権利関係を整理し、今後製作するコンテンツについてはインターネットの二次利用権も考慮したうえで作成し、各社のサイトやYahoo!動画上で配信していく流れなのではないだろうか」(孫氏)と独自の考えを示した。

 そのほか、視聴者が独自に撮影した動画をテーマ別に投稿する「動画投稿」コンテンツや、オスカープロモーションが実施している国民的美少女コンテストのインターネット版ともいえる「インターネット美女コンテスト」なども実施する予定だ。

 孫氏はブロードバンド人口が2005年9月末で2100万人を突破したことや、ブロードバンドの普及でページビューや利用時間が数倍に増えている点、インターネット広告費が拡大している点を指摘。「インターネットの1日当たりの平均利用時間は新聞を抜き、テレビ、ラジオに次ぐ第3位になった。広告費用も2004年は1800億円、2009年には5660億円に達する見込みだ。米国では動画広告の市場が伸びており、2005年から2009年の間に6倍になると予測されている」と説明し、動画広告マーケットが拡大していることを説明した。

 Yahoo!動画の無料動画コンテンツは、会員登録をしなくても閲覧可能。クリックやマウスオーバーするだけでストリーミング配信が始まる仕組みだ。ソフトバンクは、福岡ソフトバンクホークスのプレーオフ試合をネットで中継した際、独自の配信技術を利用し、「従来は同時接続数千人が限界だったが、プレーオフ時には56万人が同時アクセスをしたが大丈夫だった」(孫氏)と語り、配信技術にも工夫をこらしているとした。

コメントを寄せたペ・ヨンジュン氏 左から、ボブ・サップ選手、新垣渚選手、井上社長、孫社長、上戸彩さん、鈴木亜久里氏

 ヤフー 代表取締役社長 井上雅博氏は、「Yahoo! JAPANが開設されて10年たつが、この10年間は『数と量を増やす10年間』だった。その目標は達成しつつあり、今後10年間は『コンテンツの質を高める10年間』にしたい。その中心としてまずYahoo!動画を強化する」と語った。孫氏は「すでに六十数社が広告を出向している。コンテンツはあってもあっても足りない状況だ。今後、権利者の意向をくみながら、どんどん追加していく。ダウンロード配信も権利や利用者の意向次第では開始するかもしれない。いまやテクノロジは米国や他国主導となっているが、ブロードバンドや動画配信は日本が世界を先導できる分野であり、世界を引っ張っていきたい」と意気込みを語った。

(@IT 大津心)

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