リッチクライアントな電子カルテとは、ニイウスが来春出荷

2005/12/23

 ニイウスとニイウスのグループ会社ハルクは、統合医療情報システム「HAL-I Web版」が2006年1月に完成し、第1号顧客となる医療機関で2006年4月にカットオーバーすると12月22日発表した。HAL-I Web版は当初9月末に完成させる予定だったが開発が遅れていた。ニイウスの代表取締役会長 末貞郁夫氏は、HAL-I Web版の完成を受けて「いよいよエンジンをかけて売っていく」と述べた。

ニイウスの代表取締役会長 末貞郁夫氏

 HAL-Iは、電子カルテと検査依頼などのオーダリングシステム、会計システム、各部門システムとの連携機能を統合した医療情報システム。他社の医療情報システムが電子カルテやオーダリングシステムなどで別々のデータを使っているのに対して、HAL-Iは電子カルテやオーダリングなど医師が入力した患者の情報を「統合患者データベース」に集約している。他部門のシステムや会計システム、データウェアハウス(DWH)などとの連携が容易だという。

 HAL-Iの現行バージョンは5。来春に出荷するHAL-I Web版はデータセンターなどにサーバを設置して、各医療機関からネットワーク経由でアクセスしてサービスを利用するASP型をサポートした。ASPを採用したことでハードを院内に設置する従来型と比較して、導入コストを半分にできるだけでなく、医療機関間で電子カルテの共有ができるなど医療サービスの向上が期待できるという。HAL-I Web版はニイウスのデータセンターに置くだけでなく、地域の中核病院のサーバに導入し、その地域の別の病院とで共有するなどの使い方が可能。

 HAL-I Web版はアーキテクチャとしてストレージ、データベース、ビジネスロジックの三階層を採用した。クライアント側ではリッチクライアントを使い、ビジネスロジックとXMLデータで通信する。ハルクの代表取締役社長 大島茂氏は、三階層とリッチクライアントの採用で、画面表示の速度、カスタマイズ性能、データ入力の容易さなどが向上したという。特にカスタマイズ性能では、テキスト形式の定義ファイルを修正するだけで、医師自身が電子カルテをカスタマイズできる。各機能をコンポーネント化し、自由に組み合わせられるようにする「Multi View EPR」機能を2006年4月に追加する。

 リッチクライアントは.NET Frameworkの機能であるノータッチ・デプロイメントを採用。クライアントソフトウェアの高パフォーマンスと、Webアプリケーションのメンテナンス性の良さの2つを取り入れているという。

 HAL-I Web版の導入、運用管理コストは5年間利用した場合で、ベッド数が1000以上の病院で50〜100億円、500〜1000のベッド数で8〜20億円。ベッド数200以下で3〜5億円程度。

 ASP型の医療情報システムはセコム医療システムなど複数のベンダが展開していて、大規模なIT投資が難しい中小規模の医療機関で利用が広がっている。HAL-I Web版は「国公立病院をはじめ、優良なプライベート病院、地域中核病院、小規模病院をカバーする」(末貞氏)としていてターゲットは幅広い。ニイウスは2006年1月1日付で、ハルクの開発子会社であるハルクシステム開発からエンジニア約100人をハルクに移動させる。HAL-I Web版の開発、販売をハルクに一体化させることで顧客のサポート力を強化する狙いだ。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
ニイウス
ハルク

[関連記事]
富士通が電子カルテ拡充、最短3カ月導入の製品も (@ITNews)
デルとMS、中小規模医療機関向けIT導入で協業 (@ITNews)
SAPが期待する「病院向けERPへの追い風」 (@ITNews)
病院にパッケージ化の流れ、NECが新電子カルテ製品 (@ITNews)
狙いは政府系金融の“リスク”、ニイウスが買収で上流拡大 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)