時には力技も、東レのコグノス導入に見る定着化のキモ
2006/2/22
東レは営業部内の業務改革のため、コグノスのビジネス・インテリジェンス(BI)ソフトウェア「PowerPlay」を導入した。導入、展開を担当した東レシステムセンター Eソリューション事業部 EC1課長 池田幸一郎氏は、ガートナー ジャパンのイベント「ビジネスインテリジェンスサミット 2006」で講演し、「システムを完成した後がわれわれの勝負だった」と振り返った。
東レは営業部内の業務効率化と業務変革のためにPowerPlayを導入。販売実績や在庫データをBIに統合することで、営業の各担当者が自らでデータを分析できるようにした。利益や経費を組み合わせた複雑なキューブを作成し、データ活用が進んだ。
PowerPlay導入はもともと、全社的な営業改革の流れから決まった計画。そのため「業務の効率化は当然の前提条件。ITを使って業務そのものを改革して合格点となる」(池田氏)という高い目標が設定されていた。池田氏らは「営業改革のためには、PowerPlayをまず使ってもらって、そのよさを体感してもらうことが大事。ユーザー部門の支援が重要になる」と考えた。
ユーザー部門のトレーニングを担当したのは、東レのEC推進室だった。導入ではEC推進室が営業各部門の意見を聞いて、情報システム部門に伝達。情報システム部門がシステムの概要設計や運用設計を行って、システム子会社の東レシステムセンターが開発、運用を担当した。
EC推進室はPowerPlayの導入に当たり、「きめ細かい支援のためには全社一斉に浸透を図るのは難しい」と考えた。そのためまずは特定部署に集中してトレーニングなどの支援を行い、その成功例を他部門にピーアールする作戦を採った。最初に支援するのは「新しいことを取り入れるのに抵抗がない、やる気のありそうな課長」(池田氏)がいる課を選んだ。
支援では、営業部隊が最も困っていた資料作成の効率化を最初に提案した。PowerPlayで資料作成が簡単になることを示し、信頼を獲得。次段階として業務そのものを変革するデータ活用を提案した。トレーニングは課単位に実施。その課の生データを使って月次資料の作り方や、当該部署の課題の分析法をトレーニングした。
「操作よりもデータ活用の有効性を理解してもらうことに重点を置いた」(池田氏)といい、生データを使って分析するため、「説明会が突然、課内会議になり、業務改善に関するディスカッションが始まることもあった」という。多忙な営業担当者の業務を考慮し、トレーニングは1時間程度の短時間にし、高頻度で開催した。
ただ、当然ながらPowerPlayの導入には抵抗もあった。最も抵抗があったのは紙ベースの定型帳票の廃止。しかし、池田氏らは「データの活用度を上げて一層の改革推進のためにはどうしても廃止が必要」と訴えて、「力技で押し切った」という。「(システムを)作るよりも定着、浸透を図るのが、より大変ということを実感した」
(@IT 垣内郁栄)
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