今後もポイントプログラムの連携は拡大していく

2006/3/18

 野村総合研究所(NRI)は3月16日、第37回メディアフォーラムを開催し、「ポイント提携の先にある企業間連携のビジネスモデル」を説明した。講演したのは、野村総合研究所 情報・通信コンサルティング一部 上級コンサルタント 梶野真弘氏と、同 コンサルタント 上田恵陶奈氏。

野村総合研究所 情報・通信コンサルティング一部 上級コンサルタント 梶野真弘氏
 梶野氏は、近い将来にインターネット革命によって、GoogleとAmazonが合体したようなフロント企業「Googlezon」的企業が登場するとし、企業はこういった「フロント型」と「Enabler型」企業に分離すると予測。フロント型企業はリアル業界やインターネット業界の上位企業で形成されており、Enabler型企業はそれぞれの中位以下の企業で形成している。Enabler型企業は自社で多くの顧客を囲い込めないため、サービスや商品開発に特化し、マーケティング活動や顧客との接点はフロント型企業が担う。そして、フロント企業とEnabler企業をマイレージプログラムを代表とした企業の疑似通貨である「企業通貨」が結ぶ。

 企業通貨の原資は、現在6兆円規模といわれている企業の広告費と13兆円規模といわれている販売促進費。これらを原資とした企業通貨が、Enabler型企業からフロント型企業へ、フロント型企業から顧客へ流通する構造になるという。

 梶野氏は、「現在、多くのポイントプログラムが存在しているが、単体で差別化を図れるプログラムは少ない」と指摘。ポイントプログラムの魅力を増やすために、ポイントプログラムの提携が増えていると分析した。ポイントプログラムの提携形式は、航空や鉄道など“トラベルを軸にした動線”などの「動線型企業連携」と、必ずしも動線で結びついてはいないが、多くの企業が参加することで面をカバーする「魚の群れ型(非動線型)企業連携」の2種類に分けられる。さらに魚の群れ型は、Star Allianceを代表とした個々の強い企業同士が結びついた「カツオ型」と、中心企業が核となってグループを形成する「コバンザメ型」、弱者連合の「イワシ型」の3種類に分類できるとした。

 また、ポイントプログラムの成否は「コストと知覚価値の関係が大きい」とし、ポイントプログラムの勝ち組である航空マイルや家電量販店は、事業者が実際に負担するコストを消費者が想定する価値、つまりイメージが上回ればプログラムが成功する確率が高いと分析する。両者の共通点は、航空マイルであれば予約制で利用をコントロールできる点や、家電量販店では納入業者とコストシェアできる点などのコスト抑制策ができることと、旅行へのイメージ価値が高いことや大幅な値引きでカバーするなど一定以上の来店頻度が成功の要因だとした。

 そのほか、提携がうまくいっている「Win-Winモデル」の例として、航空会社と紳士服チェーンの例を挙げた。このケースでは、航空会社は会員の満足度アップが図れ、紳士服チェーンは新規の優良顧客が来店するというメリットがあった。さらに、紳士服チェーンのメイン顧客である40代〜50代サラリーマンが、マイレージを集めているユーザーと見事に合致していたため、さらにポイントプログラムの価値が向上し、Win-Winの関係を築けたという。

 さらに将来的には、ポイント提携のみに留まらず、共同で顧客を囲い込みを行う一歩進んだポイントプログラムマーケティングが出現するだろうと予測する。例えば、あるカード会社が航空会社AとホテルBと提携し、顧客の許諾を得たうえで顧客DBを共有する。そうすると、クレジットカードの利用履歴から、顧客の行動や購買活動が共有でき、それぞれマーケティングに活用できる。

 さらに具体的な例を挙げると、あるユーザーXが、出張時にいつも航空会社AとホテルBを使っていたとする。しかし、あるときからホテルBしか使わなくなった場合、航空会社Aはすぐに航空会社を乗り換えられたことに気付き、何らかのアクションをユーザーXに対して取ることができる。このように、現在よりさらに一方踏み込んだ優良顧客の囲い込みが可能になるという。

 この点について、梶野氏は「ポイントプログラムの本来の目的はユーザーの囲い込みだ。その点でこういった顧客情報の共有は非常に重要になる。将来的にはユーザー側も、『ある程度の個人情報を企業に提供しなければ、割りの良いポイント還元を受けられない』と考えるべきだろう」と説明。今後のポイントプログラムについて、「今後、ポイント連携はますます盛んになるだろう。そして企業側もマーケティング活動が活発化し、一層ワンポイントマーケティングに向かっていくのではないか」と予測した。

(@IT 大津心)

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