売り上げ100億円に耐えるシステムを、マクロミルが調査ASP刷新

2006/3/30

 インターネットを使ったリサーチサービスを展開するマクロミルはASP型のリサーチシステム「AIRs」(Automatic Internet Research System)を刷新し、3月22日にカットオーバーさせた。システムの処理能力を2.5倍に引き上げ、年間100億円分の受注に対応できるようにした。インターネットリサーチ業界はマクロミルをはじめとする大手や中小が激しく競合している。マクロミルの取締役CIO ビジネス開発本部長の柴田聡氏は「新システムで競合を突き放すことができる」としている。

マクロミルの取締役CIO ビジネス開発本部長の柴田聡氏

 新システムの名称はAIRs3。調査依頼をする企業がWebサイト上で調査票を作成すると、調査対象者の抽出、モニター会員への依頼、回答のリアルタイム集計、納品ファイル作成などのプロセスを自動で行う。マクロミルは顧客ニーズの反映や処理能力向上のため、3年に1度のタイミングでシステムを刷新している。

 現行システムでは年間6000件のリサーチを処理、モニター会員も40万人を超えてすでに「いっぱいいっぱいになっていた」(柴田氏)。今後の需要拡大を見込んでAIRs3では処理能力を現行の2.5倍に当たる年間1万5000件に引き上げた。サーバやネットワークを増強し、リサーチ処理のアプリケーションを全面的に再構築した。

 同社では専門担当者が顧客の個別案件に対応する「カスタマイズリサーチ」の需要が高まっている。カスタマイズリサーチの単価は、AIRsを使う自動調査と比較すると高額だが、1つ1つの案件が複雑で受注件数を増やすことはできない。AIRsでは従来はカスタマイズリサーチが担当していたような複雑な調査も引き受けられるように機能を追加し、急増する調査案件を効率的に処理できるようにした。具体的には割合回答、順位回答、対マトリクスの質問タイプを追加した。さらにエンドユーザー向けの集計ソフトウェア「Quick-CROSS2」もバージョンアップし、クロス集計やデータ加工のほかにコメント付のレポートを自動作成できるようにした。

 AIRsの初期開発コストは5億円。柴田氏は「リサーチシステムではこれまでにない規模。一から作り直し、市場変化に対応できるようにした」と語った。開発期間も1年3カ月の長期間に及んだ。開発は同社のシステムユニットを中心に15人が担当。外部の開発パートナーとプロジェクトを組んで開発した。同社のシステムユニット マネジャー 柄澤一士氏は「要件定義とテストに最も時間がかかった」と説明する。高度な調査に対応するため「システム内部のロジックが複雑になった。さまざまな組み合わせを試す必要があり、手作業でテストを行った」という。

 柄澤氏は「インターネットリサーチの特徴は24時間いつでも利用できること。われわれはエンタープライズの領域に入ってきていると認識している」と語り、システムの堅牢性を強調した。

(@IT 垣内郁栄)

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