富士通のSOA的システム構築はノウハウの結晶

2005/8/27

 富士通がSOAに基づくソリューション体系の確立を発表したのが7月12日。コンサルティングとサービスインテグレーション、実行基盤(ミドルウェア)という3つの階層で構造化したこの新しい体系は、過去数十年に渡ってインテグレーションビジネスを展開してきた同社のノウハウの集大成であるといえそうだ。富士通 共通技術本部 薮田和夫氏は「現時点での(富士通のシステム構築体制における)現実解」だとする。

富士通 共通技術本部 薮田和夫氏

 『作りかえ方』から『成長・発展・継承型』のシステム構築を目指すこと、これが、富士通がSOAで実現する情報システムの新しいコンセプトだが、では、そのプロセスはどこまで実際の開発案件に適用できるほど具体化されているのか。この問いに答えるために同社が頻繁に公開している事例が、KDDIの料金請求・顧客管理システムの構築案件である。相次ぐ企業合併(DDI、KDD、セルラー各社)によって肥大化したシステムを段階的に再構築を行いながら統合するというこの巨大な案件は、2004年度までに固定網領域のシステムが完了し、2008年までに移動体通信網領域のシステム統合を行うことになっている。この開発案件で培ったSOA的なアプローチが、同社のシステム開発アプローチに大きな影響を及ぼした。

 SOA開発技術として同社がその重要性を強調するのが上流工程における作業である。特に、業務データモデリングあるいは業務プロセスモデリングを重視することで、構築すべきシステムのサービス構造の素早い見極めが可能になる。システム構築段階へ橋渡しを行うこのモデリング領域のノウハウを体系化したのが、「SDAS/Service Modeling」と名付けられた体系である。この段階で作成されたサービス設計を実際に構築するには、同社がこれまで蓄積してきた業種別のテンプレートやパッケージを活用する。これらのアプリケーションは、同社のミドルウェア(Interstage)を核とした実行基盤上に構築され、オープンインターフェイスによるサービスバスを介して疎結合される。

 このようなSOAに基づくシステム構築のプロセスや開発支援製品、技術は、同社がSOAのために新たに開発したというより、既存資産を調整することで再構築したとみるべきだろう。体系は一応整った。同社には今後、新たなシステム構築プロセスに力を発揮できるエンジニアの育成という課題が待っている。

(@IT 谷古宇浩司)

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