「何よりも短期開発」、富士通がSDASを刷新した理由

2004/4/10

 富士通は2003年11月に刷新を発表した統合システム開発体系「SDAS」の現場への適用を進めている。SDASはWebアプリケーションを中心とする基幹業務、フロント業務のシステムを「何よりも短期開発する」(富士通 ソフト・サービス共通技術センター センター長 坂下善隆氏)ことにフォーカスした開発体系。2006年までに従来の開発期間を半分にすることを目指している。松下電工インフォメーションシステムズの事例では、従来の手法で9カ月かかるとみられていた開発が、SDASを用いることで6カ月に短縮できたという。

富士通 ソフト・サービス共通技術センター センター長 坂下善隆氏

 SDASは、富士通がメインフレーム環境でのシステム開発を対象に1987年に発表した。その後、開発ノウハウを蓄積し、オープン系への対応、Webアプリケーションを中心としたシステムへの対応を進めて刷新したのが昨年11月に発表した新生SDASだ。新生SDASは要求、設計、構築、テストなど開発のコア部分を以前のSDASから受け継ぎながら、より上流に当たる全体計画のコンサルティングやメンテナンス技術を強化した。

 SDASの短期開発は「早く決める」「減らす」「並列化する」という3つの考え方で実現する。

 「早く決める」とは具体的には要件確定の早期化を指す。富士通では基幹系システムなどの大規模案件では従来と比較して10%の短縮、情報系など中小規模案件では5%の短縮を目標としている。

 「減らす」では開発にかかわるドキュメントの削減を進めている。コンポーネント化の技術を活用し、既存システムからの使い回しを多用する。実績があるベストプラクティスを採用することで、テスト工数の削減につなげられるという。また、テストの自動化ツールも使い、生産効率性を向上させる。

 「並列化する」はさまざまな開発プロセスを組み合わせる内容。段階的に要求を受け入れて複数の開発を同時に行う「並列型」、要求と短期開発を繰り返す「直列型」、仕様から開発、テストという一般的な手法の「テストファースト型」をプロジェクト別に最適になるよう組み合わせることで、短期開発につなげるという。

 SDASは上記3つの考え方に追加して、オープン技術、国際標準の技術を導入したことも特徴。Eclipseを採用し開発効率をアップさせ、UMLでソースコーディングの自動化にも取り組んでいる。

 短期開発を実現するうえではアプリケーションフレームワーク「B2.Sframework」が果たす役割が大きい。B2.Sframeworkを導入することでセッション管理や画面制御など制御ロジックに関する開発を大きく削減できる。その結果、エンジニアは業務ロジックに専念できるようになった。松下電工インフォメーションシステムズの開発事例では、B2.Sframeworkを使うことで業務ロジック部分の外注工数を削減でき、開発工数全体は15%の効率化、基盤部分の工数の半減、などの効果があったという。結果として従来の手法では9カ月かかると予想されていたパッケージ開発が6カ月で終了した。

 また現在、富士通が取り組んでいる金融機関システムの開発では、富士通製メインフレームで動いていた業務と、日立製作所製メインフレームで稼働していた業務を単一のSolarisプラットフォームに統合。B2.Sframework上で、富士通が開発を担当する業務と日立が担当する業務を稼働させるという。データベースにはOracle、運用管理にはJP1を使う。異なるベンダの製品が混在するシステムでも人材やソフトの既存資産を活用することで短期開発が可能だという。B2.Sframeworkはすでに200以上のプロジェクトで適用が進んでいる。

 富士通ではSDASを使ってユーザー企業の開発を手がけてくれるよう協力企業、パートナー企業にそのメリットを説明し、無償で関係ツールを貸与している。さまざまなパートナー企業に使ってもらうことでベストプラクティス、ノウハウを蓄積し、SDASの開発生産性を向上させる考えだ。

(編集局 垣内郁栄)

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富士通 SDASの紹介ページ

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