日本版SOX法 実施基準公表は6月中か、金融庁部会長が見通し

2006/4/26

 財務報告に関する内部統制の評価と監査を上場企業に義務付けるいわゆる「日本版SOX法」の実施基準が6月中にも公表されることが4月25日、分かった。金融庁の企業会計審議会内部統制部会は当初、早ければ5月中旬にも公表する予定だった。青山学院大学大学院教授で、同部会長の八田進二氏がイベント「ITトレンド・フォーラム」(主催:ソフトバンク クリエイティブ)の基調講演終了後に見通しを示した。

青山学院大学大学院教授で、金融庁企業会計審議会の内部統制部会部会長 八田進二氏

 日本版SOX法の正式名は「金融商品取引法案」。同法案は3月10日に閣議決定し、国会で審議中。不正や間違いがなく財務報告が作成されていることを企業の経営者が確認し、公認会計士が監査する制度。内部統制の構築にはITシステムが不可欠とされ、またITに対する統制も実施されることから、IT業界を中心に注目を集めている。2008年4月1日以降に開始する事業年度から適用する。

 同部会は2005年12月8日に日本版SOX法の「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準案」を公表。現在は日本版SOX法対応のガイドラインとなる実施基準を策定する作業を続けている。12月8日には実施基準の主な検討項目案を発表していた(金融庁サイト)。実施基準は法案成立後に公表するとみられる。

 八田氏は4月25日の講演で、日本版SOX法について「目玉はITへの対応」と指摘。たとえITシステムをそれほど活用していない企業であっても、「取り巻く環境は進んでいる。それとの整合性を理解してもらいたい」と語った。また、昨年来発生している証券取引所のシステム障害や銀行ATMのパスワード盗撮事件などを挙げて、「このような企業はITの利便性に胡坐(あぐら)をかいて、リスクを理解していなかった。ITの脆弱性や危険性も理解する必要がある」と語った。

 さらに、企業の実際の対応について「ある程度の指針は示されるが一律的に適用できるものではない」と説明。「まずもって経営トップがどのような状況であれば自分が財務諸表の信頼性にサインをすることができるのか、洗い出すことが必要。そのときに会計システムがバラバラだったりするとリスクを生む可能性がある。ITを使った標準化や集約化は当然、必要になってくるかもしれないといえる。しかし、そうでなくてはいけない、ということはない」と語り、経営者が主導する内部統制構築の重要性を指摘した。

(@IT 垣内郁栄)

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金融庁
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