5段階評価の“インフォメーション進化論”― SASが提唱

2006/6/9

 米SAS Internationalのプロフェッショナルサービス部門 担当副社長 グロリア・J・ミラー(Gloria J. Miller)氏は6月8日、同社のイベントで講演し、SASが提唱する情報活用の評価基準「インフォメーション・エボリューション・モデル」(情報進化モデル、IEM)を説明した。データ統合や高度な分析など「企業が情報革命にどれだけ対応できているか分かる」(ミラー氏)評価基準で、SASが考える「インフォメーション進化論」ともいえる。IEMの評価を基にSASは同社ビジネス・インテリジェンス(BI)製品の活用や、情報活用組織「BI Competency Center」の設立を呼びかける。

米SAS Internationalのプロフェッショナルサービス部門 担当副社長 グロリア・J・ミラー氏

 IEMは5段階で企業の情報活用を評価する。データを個人だけで活用するレベル1、部門ごとにデータ活用を標準化しているレベル2、データ活用を全社で行うレベル3、全社で統合したデータを活用し、データ分析を駆使して企業のパフォーマンスを最適化するレベル4、自社だけでなく、サプライヤや顧客も含めてデータを連携させ、全体のパフォーマンスを向上させているレベル5、と定義している。

 さらにIEMでは人的資源、業務プロセス、企業文化、インフラの4項目についても5段階で評価する。5段階のデータ活用評価と合わせて企業の情報活用度が総合的に判断でき、強化すべき点が見えてくるという。

 SASはIEMの評価を向上させるソリューションを提供する。人的資源、業務プロセス、企業文化、インフラのうち、インフラについてはBIプラットフォーム「SAS Enterprise Intelligence Platform」を提案する。クエリやレポートを中心とした従来のBIではなく、「BIをプラットフォームとしてとらえてさまざまな分析手法を提供するのが重要」とミラー氏は説明する。SASは特に企業の業績について計画、予測、プロセスの実行、監視、改善という「Enterprise Performance Management」の重要性を強調している。

 人的資源、業務プロセス、企業文化の最適化では企業の情報活用組織「BI Competency Center」(BICC)の設立が必要としている。BICCは米ガートナーが提唱している組織。ビジネス担当者、ITシステム担当者、分析担当者を集結させて、ビジネスとITの同期化や全社的なデータ活用、分析を担う。ミラー氏は「企業で一番欠落しているスキルは分析力」と話し、データ分析がBICCでの重要な仕事になると説明した。

 SASはBICCを設立する企業に対してSAS製品を活用するためのテンプレートやチェックリスト、ガイドなどを提供している。BICCは「真に有効にするには全社展開が必要」(ミラー氏)なため、「正式にBICCを設置している企業は少ない」といい、企業に本格的に広がるのはこれからだ。ただ、国内ではNTTドコモがIT部員やデータマイニング担当者、マーケティング担当者などからなる30人規模のBICCを設立した。ミラー氏は「多くの企業はIEMでレベル2〜3にある」と語り、「BICCを設立すべき時期にきている企業は多い」と訴えた。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
SAS Institute Japan

[関連記事]
企業戦略と連動しない予算は不要、SAS (@ITNews)
「最も働きやすい企業」SASが考えていること (@ITNews)
社員150人を採用して「Beyond BI」、SASの成長戦略 (@ITNews)
戦略倒れの企業を救うパフォーマンス管理、SASが新製品 (@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)