“謎のインターフェイス”を排せ、IPAのOSS実証に4自治体採択

2006/10/3

 情報処理推進機構(IPA)は10月2日、オープンソースソフトウェアを使ったデスクトップPCの実証実験を行う4つの自治体を、採択したと発表した。IPAは2004年度から実証実験を開始。2006年度はデスクトップPCの現場への導入だけでなく、ITシステムの基盤や周辺自治体との連携についても検証する。

IPA オープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏

 採択したのは栃木県二宮町、山形県庁、大分県庁、千葉県市川市。応募件数は11件だった。IPA オープンソースソフトウェア・センター長の田代秀一氏はこれまでの実証実験から、OSSデスクトップPC導入の課題として、ユーザー認証基盤などの基盤システムに相互運用性が乏しく、OSSデスクトップPCを既存デスクトップPCと共存させながら、移行するのが難しいと指摘した。

 「ベンダによるロックインが進んでいるPCを置き換えるだけでは問題は解決しないことが分かった。ITシステムの基盤が特定のベンダによる“謎のインターフェイス”で作られていて、そのベンダしか触れない状態だとOSS化の障害になる。オープンスタンダードに基づき基盤を作ることで、既存デスクトップPCと共存させながらOSSデスクトップPCを徐々に導入にしていくことができる」(田代氏)

 山形県庁、大分県庁はITシステムの基盤も含めてOSSで構築することを目指す。山形県庁はエンタープライズ・サービス・バス(ESB)である「ServiceMix」とアプリケーションサーバの「Tomcat」、メッセージ処理ミドルウェア「ActiveMQ」、BPEL実行コンポーネント「Process eXecution Engine」などのOSSを組み合わせてSOA基盤を構築。そのうえで文書管理システムを開発し、OSSデスクトップPCや既存のWindowsデスクトップPCと連携させる。SOA基盤はSRA東北などの開発担当ベンダによって検証済みという。

 大分県庁は県庁内のITシステムの最適化を目指していて、まずはファイル管理基盤、職員認証基盤、電子決済基盤をOSSで構築する。OSSデスクトップPC、既存デスクトップPCのどちらからもアクセスできるようにする。IPAの田代氏は基盤システムをオープンスタンダードに基づきOSS化することで、クライアントPCやほかのシステムとの連携が容易になり、「ITシステムの選択肢が増えてコスト減につながる。地場の業者などの参入も容易になる」としている。開発は財団法人ハイパーネットワーク社会研究所。

 栃木県二宮町は2005年度に続く採択。2005年度は町役場全体や出先機関にOSSデスクトップPCを導入したが、2006年度は近隣の自治体にもOSSデスクトップPCの導入を呼びかけて業務連携を広げる。また、「OpenOffice.org」でのVBA互換機能や文書コンバート機能の利用、既存文書をODF(OpenDocument Format)化する場合のマニュアル作成、OSSについてのトレーニング実施などに取り組む。NECが主に開発する。

 千葉県市川市は市民が利用する公共施設予約システムをOSSで構築する。このシステムは運用管理のために市職員が市職員IDカードを使ってアクセスする。実証実験ではOSSデスクトップPCで市職員IDカードを使って認証できるように、ICカードリーダライタにアクセスするためのアプレットもOSSで開発する。開発担当はNTTPCコミュニケーションズ。

 各自治体の開発は1件あたり5000〜6000万円規模。4自治体で2億円強とIPAは概算している。開発は2007年2月までの予定。開発されたソフトウェアは開発担当企業がOSSとして公開する。

(@IT 垣内郁栄)

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IPAの発表資料

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