オラクルの批判に反論も

「顧客に朗報だ」、SAP社長が「アップグレードしません宣言」を説明

2006/11/02

 「バージョンアップせずに次の5年間使えるのは顧客にとって朗報だ」。SAPジャパンの代表取締役社長 ロバート・エンスリン(Robert Enslin)氏は11月1日会見し、主力のERPパッケージ「mySAP ERP 2005」を2010年までアップグレードしないことを発表した独本社の戦略を説明した。エンスリン氏は「mySAP ERP 2005は次世代のプラットフォームだ」として先進性を強調。「顧客企業はクリアなロードマップを作ることができる」と話し、顧客のメリットになることを訴えた。

sap01.jpg SAPジャパンの代表取締役社長 ロバート・エンスリン氏

 SAPは定期的に拡張パッケージをリリースしてmySAP ERP 2005に機能を追加するとしている。しかし、mySAP ERP 2005のコア部分は2010年までアップグレードせず、「安定的に利用してもらう」(同氏)方針だ。アップグレードをしないことで顧客のコスト負担を軽減するのが狙い。「顧客はSAPのイノベーションをいつ利用すればいいか、自分で決められる」(エンスリン氏)。

 ただ、SAPのこの戦略に対してはライバルのオラクルなどが「SAPの計画は遅れている」などと批判している。エンスリン氏は「競合は顧客に選択肢を提供していない。確固たる内容がないのに2008年まで顧客に待っていただくことはない」などと、新しいERPパッケージ「Oracle Fusion Applications」を2008年に出荷予定のオラクルに反論した。

 SAPジャパンの2006年第3四半期(7-9月期)はソフトウェアライセンス売り上げが日本円ベースで前年同期比65%の伸び。9月末までの通期では同期比19%の成長だった。エンスリン氏はCRMやSCM、NetWeaverが製品では好調で、ハイテク、小売り、サービスなどの業種で販売が拡大したと説明した。エンスリン氏は「CRMは、大きく成長するのはあと1年くらいかかると思っていたので、少し意外だった」と語った。SAP全体では11四半期連続の2ケタ成長を記録。エンスリン氏は「オーガニックグロース(有機的成長)が正しいことに確信を強めている」と話した。

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(@IT 垣内郁栄)

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