Weekly Top 10
TANAKAのフライトシミュレータとiPhone
2008/08/25
先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングは第1位は「iPhoneアプリ市場に参入した理由、UEI清水氏に聞く」だった。iPhone/iPod touch向けメモツール「ZeptoPad」などで、いち早くiPhone市場に参入したユビキタスエンターテインメントの清水亮氏に話を聞いた。ケータイ向けソフトウェア/コンテンツ市場の話、開発環境や審査体制の話、事業の海外展開の話など話題は多岐にわたった。
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清水氏のインタビューでおもしろいなと思いつつも、記事にできなかった話の1つが「TANAKAのフライトシミュレータ」とジンバルロックの話だ。
幼少時のパソコン体験やプログラミングへの接触について話を聞いているとき、清水氏が口にしたのが1983年発売のNECのパソコン「PC-9801F」だった。父親に買ってもらった最初のパソコンだそうだ。
当時マイコン少年だった記者は思わず懐かしくなり、「イー(PC-9801E)の次のやつですね」と言ったところから昔話は始まった。「Fは8MHz、ああ、じゃあ結構速いやつだ」と記者は当時の基準でものを言っていた。8ビットパソコンのCPUは長らくZ-80(もしくはその互換チップ)の4MHzと相場が決まっていて、5MHzとか8MHzという速いCPUはマイコン少年の記者には大変なあこがれだった。
もしやと思い、「田中のフライトシミュレータってご存じですか」と尋ねると、「T-A-N-A-K-Aですよね」と返ってきた。そうだった、正しくはアルファベットで「TANAKAのフライトシミュレータ」と表記するのだったと記者も思い出した。それは1981年か1982年に発表されたNECのPC-9801用のフライトシミュレータで、3次元ワイヤーフレームで描画された地面がリアルタイムで動くという当時としては驚くべきソフトウェアだった。
清水氏によれば、このTANAKAのフライトシミュレータにはバグがあったそうだ。宙返りして左右に首を振ろうとすると反対方向に動くという問題だ。子ども心に不思議に感じた清水氏だが、後に18歳になってそれが「ジンバルロック」というコンピュータグラフィックの世界では比較的よく知られた問題だったと分かったという。
3次元空間中で物体がどの方向にどのくらい回転したかを表すときにオイラー角というのを用いることがある。X、Y、Z軸のそれぞれで回転角を扱い、行列を使って座標変換する。ところがこの方法では特定の軸が90度回転してほかの2軸が作る平面と重なるとき、計算モデルが破綻する。これはソフトウェアの世界だけでなく、物理的な世界でも同じで、特定の回転角になったときに回転の自由度が落ちることがある。ジンバルロックはアポロ計画でも大きな問題だったという。
清水氏がこの話をしたのは、ZeptoPadのように幾何学図形やその変換を扱うグラフィックソフトウェアでは、こうした幾何学的な知識が不可欠だという指摘の文脈もあったからだった。
ZeptoPadは8月22日にバージョンアップし、最新の「ZeptoPad 1.5」では図形やテキストの回転が可能となったほか、複数図形のコピー&ペーストもできるようになった。ジンバルロックとはあまり関係のなさそうな2次元グラフィックスだが、iPhoneのユーザーインターフェイスとも相まって独特の操作感を実現している。
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