フォーティネットが2009年上半期の脅威を分析
日本でボットネット急増を招いた「クライムウェアキット」の存在
2009/08/03
「日本では、ボットネットの一種である『Zbot』の活動が爆発的に増加している」――米フォーティネットのサイバーセキュリティ&脅威リサーチ プロダクトマネージャのデレク・マンキー氏は7月30日に行った説明会において、最近の脅威のトレンドを解説し、特に日本国内ではキーロガーとZbotの活動が顕著であると警告を発した。
同社では、世界中の顧客に導入されたセキュリティアプライアンス「FortiGate」を通じて収集した情報を基に、マルウェアやスパムといったインターネット上の脅威の動向をまとめ、レポートとして公開している。
その調査によると、近年は脅威の絶対数が増加しているほか、複雑化が進んでいるとマンキー氏は述べた。例えば、2009年上半期のマルウェアの検出数は、1年前に比べて57.4%増加した。また感染経路も多様化しており、FacebookのようなSNSやインスタントメッセンジャーを介したスパムが増加している。悪意あるサイトへの誘導手段としても、SNSや短縮URLサービスが利用され始めているという。
「スパムメールを送信するボットネットが拡大しており、スパムメールの総量が増えている。この結果、悪意あるサイトに誘導されるケースが増えている」(同氏)。
中でも、日本で目立ってまん延しているボットが「Zbot」だ。2009年上半期、Zbot活動が最も多く検知されたのが日本だったほか、6月には2回に渡って検出数がスパイク状に急増した。このボットがこれほどまん延した理由として、マンキー氏は、マルウェア作成キットの「Zeus」の存在を挙げている。
「クライムウェアキットが流通しており、これを購入した人はオリジナルバージョンのボットを作成し、情報を盗み取るのに利用している。こうしたクライムウェアキットは違法なものだが、感染状況を把握できる管理コンソールが提供されていたり、マニュアルが用意されていたりとインフラが整っており、技術的な知識を持たない人でも使えるようになっている」(マンキー氏)。
同氏はまた、2009年下期にはクライムウェアキットを利用したボットに加え、ソーシャルネットワークやオンラインゲームを狙う攻撃やトロイの木馬が増加するだろうと予測。また、利用が広がるスマートフォンをターゲットに、ショートメッセージサービスなどを悪用した脅威も登場するだろうと警鐘を鳴らしている。
関連リンク
関連記事
情報をお寄せください:
- Windows起動前後にデバイスを守る工夫、ルートキットを防ぐ (2017/7/24)
Windows 10が備える多彩なセキュリティ対策機能を丸ごと理解するには、5つのスタックに分けて順に押さえていくことが早道だ。連載第1回は、Windows起動前の「デバイスの保護」とHyper-Vを用いたセキュリティ構成について紹介する。 - WannaCryがホンダやマクドにも。中学3年生が作ったランサムウェアの正体も話題に (2017/7/11)
2017年6月のセキュリティクラスタでは、「WannaCry」の残り火にやられたホンダや亜種に感染したマクドナルドに注目が集まった他、ランサムウェアを作成して配布した中学3年生、ランサムウェアに降伏してしまった韓国のホスティング企業など、5月に引き続きランサムウェアの話題が席巻していました。 - Recruit-CSIRTがマルウェアの「培養」用に内製した動的解析環境、その目的と工夫とは (2017/7/10)
代表的なマルウェア解析方法を紹介し、自社のみに影響があるマルウェアを「培養」するために構築した動的解析環境について解説する - 侵入されることを前提に考える――内部対策はログ管理から (2017/7/5)
人員リソースや予算の限られた中堅・中小企業にとって、大企業で導入されがちな、過剰に高機能で管理負荷の高いセキュリティ対策を施すのは現実的ではない。本連載では、中堅・中小企業が目指すべきセキュリティ対策の“現実解“を、特に標的型攻撃(APT:Advanced Persistent Threat)対策の観点から考える。