@IT読者調査結果:データベース編(1)
〜データベース製品の利用状況は?〜
小柴 豊アットマーク・アイティ
マーケティングサービス担当
2004/11/6
Webシステムの台頭やリッチクライアントの復権など、刻々と変化する情報システム構成の中で、常に変わらぬ位置付けを占める基盤ソフト=データベース。しかし実際のデータベース製品はそんな印象と異なり、XML対応/自律管理などの機能拡張を続け、日々進化している。では現在の情報システムに求められるデータベース製品の条件とは、何なのだろうか? @IT Database Expert/XML & SOA両フォーラム共同で実施した読者調査の結果から、その状況をレポートしよう。
■主利用データベース製品の大半はOracle
はじめに読者が現在業務でかかわっている主なデータベース製品を尋ねたところ、全体の半数近くが「Oracle Database」を利用しており、同製品の浸透率の高さが明らかになった(図1)。以下「Microsoft SQL Server」「IBM DB2 UDB」と“3大商用DB製品”が続く中、「PostgreSQL」「MySQL」のオープンソース陣営も、2製品合計で14%のシェアを獲得している。ではこれら3大商用DB+オープンソースDBは、どのように使い分けられているのだろうか? その状況を、さまざまな角度から検証してみよう。
図1 現在の主利用データベース製品(N=467) |
■Oracleの成功要因はマルチプラットフォーム戦略
上記のデータベース製品利用状況を、稼働プラットフォーム(OS)別に集計した結果が、図2だ。ご覧のとおり商用UNIX上でOracleが7割のシェアを占める半面、Linux上ではオープンソースDB利用率が65%に達しており、それぞれ各プラットフォームにおけるデファクト・スタンダードとなっている。一方、現在最も普及しているWindowsプラットフォームでは、OracleとSQL Serverのシェアが接近した“一騎打ち”状況を呈している。こうして見ると、UNIXという地盤を維持しながらも、拡大するIAプラットフォーム(Windows/Linux)でそれぞれ一定のシェアを押さえてきたマルチプラットフォーム戦略が、現在のOracleの成功要因であることが分かる。
図2 プラットフォーム別主利用データベース製品 |
■ユーザー規模の大小によって異なる利用状況
次にデータベース・システムのユーザー規模別に製品利用状況を見たところ、大規模システムではOracle、小規模システムではSQL Serverの利用率が、それぞれ高い傾向にある(図3)。SQL Serverが今後シェアを高めるためには、この“規模の壁”を乗り越える必要があるだろう。
ところで同図を見る限り、オープンソース製品の利用率は、ユーザー規模の大小にかかわらず一定であった。これをもって“オープンソースDBの性能/拡張性は、商用製品に遜色ないレベルに達した”といえるだろうか? その判断を下す前に、次のデータを見てみよう。
図3 ユーザー規模別主利用データベース製品 |
■まだ十分な信頼性を獲得できていないオープンソースDB
図4は、財務会計や生産/販売管理などの「基幹系システム」、ナレッジ共有などの「社内情報系システム」、一般個人向け「BtoC Webシステム」の各用途ごとに主利用製品を集計した結果だ。これを見ると、オープンソース製品はBtoC用途においてOracleを上回るシェアを得た半面、基幹系用途での利用率は5%にとどまっている。図3と図4を合わせて解釈すると、“不特定多数の個人ユーザーを相手にする大規模システムには採用されているが、ミッション・クリティカルな用途では、まだ十分な信頼性を獲得できていない”のが、オープンソースDBの現状であるようだ。
図4 システム用途別主利用データベース製品 |
■データベース製品選択時の重視点は“機能性+アルファ”
ここまで主要データベース製品の利用状況を分析してきたが、後半ではそれらがどのように選ばれているのか、その選択理由を明らかにしていこう。
まず現在の主利用データベース選択時に、読者が重視した要素を尋ねたところ、製品機能や性能を抑えてトップに挙げられたのは「導入実績/事例」であった(図5 青棒グラフ)。データベースはシステムのバックエンドをつかさどるコンポーネントであるだけに、実績に基づいた安心感が強く求められるのかもしれない。また実績以外にも「製品や利用ノウハウに関する情報の多さ/入手しやすさ」、「導入/保守コスト」といった非機能要件が上位に続いている点が興味深い。現代のデータベース市場は成熟化が進んでいることから、情報提供力などの“機能性+アルファ”の部分が重要な意味を持つようだ。
図5 データベース製品選択時の重視点(N=467) |
ではこれからのデータベース製品選びにおいて、重視度が高まる要素とは何だろうか? 同じ選択肢の中から1つだけチェックしてもらった結果、「処理性能/パフォーマンス」「導入/管理のしやすさ」および「データの暗号化などのセキュリティ対策」が、トップ3に挙げられた(図5 赤線グラフ)。データベース製品の基本的なチェックポイントである性能や管理性に、インターネット環境に必須のセキュリティ対策を加えて、今後は“実質本位のデータベース選び”を希望する読者が多いようだ。
■OracleとSQL Serverそれぞれの選択重視点を比較
参考までに、図5の選択重視点を主利用製品別に集計するとどうなるか、紹介しておこう。ここでは、利用率上位2製品であるOracleとSQL Serverを比較してグラフ化した(図6)。
図6 主利用製品別選択重視点(複数回答) |
まずOracle利用者の選択重視点を見ると、「導入実績/事例」を筆頭に「情報の多さ/入手しやすさ」「顧客/ユーザーの指名」といった項目が上位に並び、トップシェア製品ならではのブランド力が表れている(図6 赤棒グラフ)。それに対してSQL Server利用者では、「導入/管理のしやすさ」「導入/保守コスト」「設計/開発ツールの生産性の高さ」の重視度が突出しており、“簡単/ローコスト”なニーズに応えることで、Oracleとのすみ分けがなされていることが分かる(図6 黒棒グラフ)。
ここまでデータベース製品の利用/選択状況を見てきたが、これはあくまで現時点のスナップ・ショットにすぎない。最近の動きを見ても、マイクロソフトが規模の壁を超えるべく“64bit版SQL Server”を出荷すれば、Oracleはコストと管理のしやすさにフォーカスした“Standard Edition One(SE One)”を投入し、互いの得意分野に向けた攻勢を強めている。またPostgreSQLにおけるvacuum処理の改善/PITR(Point In Time Recovery)実装への取り組みに見られるように、オープンソースDBの機能/性能も、商用製品との溝を埋めつつある。データベース市場がどう変わっていくのか、今後も継続的にウォッチしていきたい。
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