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@IT > Linuxの真実、Windowsの真実(7) |
企画:アットマーク・アイティ 営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限2004年12月31日 |
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Linuxの真実、Windowsの真実(7)
インターネット上に独自のWebサーバを持つことは、もはやほとんどの企業にとって常識である。社内にWebサーバを設置できない場合は、プロバイダが提供するWebホスティング・サービスを利用できる。
インターネットは、普及の初期段階において、UNIXによって支えられたという歴史を持っている。このためメールやWebを始め、当初のインターネット関連ソフトウェアはUNIX上で開発されたものが多く、インターネット・エンジニアもUNIXカルチャーで育った人が多い。こうした歴史的背景から、Webホスティング・サービスの多くは、現在でもUNIXないしLinuxプラットフォームで運営されている。 しかしドメイン登録で圧倒的なシェアを誇る「お名前.com」サービスを提供するグローバルメディアオンライン株式会社(以下GMO)は、Webホスティング・サービスの「プレミアサーバー」をUNIX/Linuxプラットフォームではなく、Windows Server 2003+IIS 6.0で構築し、システムの運用管理にかかるTCOを大幅に削減して、サービス価格の低減と、低価格を原動力とするシェア拡大に成功したという。 Webホスティング・ビジネスでは実績のないWindowsを採用した理由は何か、可用性やセキュリティ面において、とかくネガティブなイメージのあるWindowsプラットフォームを利用したサービス運用の現実はどうなのか。今回はGMOで「お名前.com」を担当されている阿部啓二氏にお話を伺った。
―― まず最初に、「お名前.com プレミアサーバー」とはどのようなサービスですか? 阿部:Windowsベースの共有型Webホスティング・サービスです。「お名前.com」でドメイン登録されたユーザーの方を中心に、取得したドメインによるWebサーバ構築用としてご利用いただいています。Webホスティングだけでなく、Windowsプラットフォームである強みを生かして、Webメール・サービスやスケジュール管理などのグループウェア機能を安価に提供しているのが大きな特徴です。 ―― なぜ実績あるUNIXではなく、Windowsを選択したのですか? 阿部:周知のとおり、世の中WebホスティングといえばUNIXが圧倒的で、実績にしても、構築・運用ノウハウにしても、UNIXをベースにしたものがほとんどです。またこの分野のエンジニアも、UNIXを得意とする人が圧倒的でした。しかし、ホスティングはWeb、Mailを基本とするものの、そのほかにもASP(Application Service Provider)としてのサービス提供も視野に入れ、数多くのサーバ製品を提供しているマイクロソフト社の最新技術を導入することにより、他社との差別化を図るという観点からプラットフォームとしてWindowsを選択しました。 ―― Linuxの利用を検討したことはありますか。 阿部:弊社のレンタルサーバの総合ブランド「レンサバ本舗」では、1台のサーバを丸々提供する専有型ホスティング・サービス「まるごとServer」も提供しており、これには、Windowsサーバはもちろんのこと、Linuxサーバを選択していただくことが可能です。共用型サーバでは利用が制限されるCGI や、自由度の高いWebコンテンツの運用が、専有型サーバでは可能で、ご希望のプラットフォームを選択できるという利便性があります。 しかし、プレミアサーバー(共用型)による大規模運用においては、Windowsプラットフォームで、安定的かつ低コストなサーバ運用の経験とノウハウを得たいまでは、Linuxを採用するという選択は、現時点では考えておりません。 ―― プレミアサーバーはWindows Server 2003で運用されているのですか。 阿部:従来はWindows 2000 Serverを利用していたのですが、2003年6月にWindows Server 2003の採用を決定し、移行作業を開始しました。新システムでのサービス運用は2003年7月です。移行のための検証や開発作業はわずか1カ月でした。これだけ短期間に移行ができたのも、Windowsプラットフォームに対してこれまで培ってきた社内での実績とノウハウがあったこと、また関連サービスやツール、ドキュメントが充実したWindowsだからこそだと思っています。 ―― 共有Webホスティング・システムとは、具体的にはどのようなものですか。 阿部:1台のサーバ内にお客さまのサイトを数百単位で格納し、ディスク・スペース、ネットワーク帯域を共有してお使いいただくのもです。WebサーバのOSにはWindows
Server 2003, Standard Editionを採用し、数台のサーバでネットワーク負荷分散と冗長性の確保を行います。また、クラスタ化されたWindows
Server 2003,、Enterprise Editionでファイル・サーバをNAS(Network Attached Storage)接続しています。弊社ではこれを「セット」と呼び、1セットで数万のサイトを収容しています。
―― 一部にはWindowsによるWebホスティングの可用性やセキュリティについて疑問を持つシステム管理者もいます。実際に大規模なWebホスティング・システムをWindows OSで構築、運用されてみて、実際のところはいかがでしょうか。 阿部:Webホスティングを事業として、低コストにシステムを構築、運用するためのノウハウの獲得ではいろいろと苦労がありましたが、システムの信頼性とか安定性といった意味であれば、まったく問題のないレベルです。特にWindows Server 2003のIIS 6.0では、アプリケーションのコンポーネントを独立したワーカー・プロセスに分離して、相互に影響を受けることなく管理できるようになり、可用性がさらに向上しました。例えば、別のコンポーネントに影響を与えることなく、特定コンポーネントのプロセスを再起動することもできます。弊社では別サービスでUNIXベースのシステムも運用しています。サービスの内容が異なりますので単純比較はできませんが、Windowsだから不安定だということはありませんね。 ―― セキュリティという面ではどうでしょうか。マイクロソフト製品にはセキュリティ・ホールが多く、修正プログラムも多数公開されるため、適用時の再起動などで可用性が低下するという声もあります。 阿部:いま述べたとおり、システムはNLBやクラスタリングによって冗長化されており、このうち1台のサーバに修正を適用して再起動したとしても、ほかのサーバは通常どおりに稼働しており、サービスは停止しません。Windowsは修正プログラムが多いというお話しですが、それではUNIXは少ないかといえば、そんなことはないと思います。 ―― サポートという意味ではどうでしょうか。 阿部:万一自分たちで解決できない問題に遭遇しても、マイクロソフト社が責任を持ってサポートしてくれるので心強いです。Windowsに統一したことで、マイクロソフト社のサポートだけで問題の所在や解決法を素早く見つけられます。複数のプラットフォームを混在させた環境ではこうはいかないでしょう。
―― Windowsを採用することでWebホスティングのTCOを大幅に削減されたとのことですが、具体的にはどこがポイントでしょうか。 阿部:1つはシステム運用にかかる人的コスト削減、1つはWindows Server 2003のパフォーマンス向上によるサーバ収容密度の大幅な増大によるサーバ台数の削減です。 ―― 大規模なWebサーバ運用を経験しているエンジニアは少ないと思いますが、ホスティングサーバの運用担当者の採用や教育はどうしているのでしょう。 阿部:運用担当者はほとんどが中途採用ですが、ご指摘のとおり、WindowsでWebホスティングの経験を持つエンジニアは数多くはおりません。しかし弊社のマニュアルに基づいた運用業務であれば、基本的なネットワークの知識などやWindows GUIの利用経験などがあれば、サーバ運用の経験がない人でも2週間もあれば管理作業の70%はこなせるようになり、運用の現場で仕事ができるようになります。 UNIXに比べると日本語のドキュメントが多いということ、システム管理においても、GUIは使い慣れたWindowsと同じということが管理者の短期育成を可能にしていると思います。 ―― サーバの収容密度について、もう少し具体的にお話しください。 阿部:従来のWindows 2000 Server+IIS 5.0ベースのシステムでは、SMBコネクションに使えるセッション数の制限(最大2048個まで)などがあり、1セットで収容できるサイト数は2000程度でした。これに対しWindows Server 2003では、セッション数の上限値が65536個と大幅に拡大されたこと、IIS 5.0→IIS 6.0のパフォーマンス向上などにより、当初理論的には1セットで2万サイトを収容できると見込みました。実際は2万には及びませんが、従来の数倍のサイトを1セットで収容して運用しています。これにより、物理的なハードウェア・コストが低減するとともに、運用管理に必要なオペレーション・コストも低減しました。 ―― それらのTCO削減効果により、サービス価格の低減が可能になったのですね。 阿部:プレミアサーバーは月額2480円から利用できます。弊社で提供しているUNIXベースのWebホスティングに比較しても圧倒的に低価格ですし、他社のサービスと比較しても高い価格競争力があると自負しています。正直申し上げて、サービス開始当初は厳しい価格設定だったのですが、現在では安定した利益を確保しながら、お客さまには低価格なサービスを提供し、それによって利用者が広がるという好循環にあります。
―― ASP.NET対応、XML+SOAPによるWebサービス対応など、将来計画についてお教えください。 阿部:現在は個人事業者様やSOHOなど小規模なユーザー様が多いのですが、将来的にはEコマースやオンライン決済の機能、データベース・サービスなどを提供して、中規模以上の企業様にも積極的にアピールしていきたいと思っています。この際にもマイクロソフト社が提供してくれる各種サーバ・ソフトウェアを活用できると期待しています。 ASP.NETについては、対応する方向でセキュリティを中心とする技術検証とマーケット・リサーチを進めています。またマイクロソフト社の開発環境であるVisual Studio.NETへの対応(開発したプログラムの配置など)、Webサービス対応も視野に入れています。このように、新しいテクノロジによって新しい可能性が広がるのがWindowsプラットフォームの魅力ですね。
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