米ピープルソフトの“敵はオラクル、味方はIBM”

2004/9/23

 米ピープルソフト主催のユーザー・カンファレンス「Connect 2004」が、米カリフォルニア州サンフランシスコで9月21〜24日にわたり開催されている。米ピープルソフト CEOのクレイグ・コンウェイ(Craig Conway)氏は基調講演で、IBMとの戦略提携を発表した。

米ピープルソフト CEOのクレイグ・コンウェイ氏

 コンウェイ氏は基調講演の中で、ビジネス・システムの変革について語った。同社がこれから目指すべき次世代プラットフォームとして紹介したのは、「Adaptable Business Process Generation」と呼ばれるシステムで、個々のアプリケーションをさらに細かいサービス単位に分解し、ビジネス・プロセスで統合するという。これは、Webサービスを標準サポートし、それらをビジネス・プロセスで統合する、いわゆる「SOA」(Services Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)である。最大の特徴は、今回のカンファレンスの主要テーマとして掲げられた「Flexible(柔軟性)」というキーワードにみられるように、ハードウェアやアプリケーションの種類を問わずにシステムを統合できる点にある。

 「システムを構築するアプリケーションは、ピープルソフト以外にも、SAPやオラクルなど、どのベンダのものでもかまわない。また、異なるプラットフォームが混在するヘテロジニアス環境に適用できるのが重要だ」と述べ、コンウェイ氏は今後ピープルソフトの方針として同アーキテクチャに対応していく方針を説明した。

 コンウェイ氏はさらに、「そしてこの世代において、ミドルウェアが非常に重要な意味を持ってくる。では、ミドルウェア分野のトップ・ベンダはどこか? それはIBMだ。IBMとのパートナーシップが、今後のプラットフォーム展開に大きな意味を持つ」と述べ、IBMの提携を発表した。提携は今後ピープルソフトのビジネスアプリケーションとIBMのミドルウェア製品(WebSphereなど)を統合していくこと。IBMはミドルウェアを中心に地盤を固めており、SAPやシーベルとの提携にもみられるように、アプリケーション部分はパートナーに任せる戦略をとっている。ピープルソフトはそのパートナーの1つとしてタッグを組んだ形になる。

■オラクル戦争のゆくえ

 コンウェイ氏は基調講演の冒頭で突然「みなさんは最近“悪夢”を見たことがありますか? わたしは見たのです。でも、みなさんが想像するようなことではないですよ。2人の息子のことなんです」と、思わせぶりな話題を振ってきた。もちろん、オラクルによる買収提案についての話題だが、同氏は核心に触れなかった。オラクルによる買収提案については、米司法省がオラクルを反トラスト法違反で訴えた訴訟で、9月9日、オラクル側勝訴の判決が出た。ピープルソフトは司法省の支えがなくなり、再びオラクルと直接対峙することとなった。

 コンウェイ氏は「少し過去の話をしましょう。ピープルソフトは1年前にJ.D.エドワーズとの合併を完了させてから、ずっと両製品の統合と機能強化に努めてきました。その間、周囲ではいろいろ騒がしかったようですが、われわれはただ静かにユーザーのために働いてきたのです」と、ユーザー本位の姿勢を保ちつつ、オラクルの提案を意に介さない様子を見せた。

 この発言は株主やユーザーの意向がない限り、オラクルの提案に乗ることはないという意思表明だったと考えていいだろう。IBMとの提携で後ろを固めたのも、その意思の現れだったといえる。

(鈴木淳也/Junya Suzuki)

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