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@IT > 業務システムのフロントエンドとしてのMicrosoft Office Systemの実力(2) - Page1 |
企画:アットマーク・アイティ 営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限2004月5月31日 |
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業務システムのフロントエンドとしての
前回は、Microsoft Office SystemのXMLスキーマ対応に注目し、これにより定型業務と非定型業務がいかにしてOffice上で融合されるかについて解説した。これに続く今回は、Microsoft Office SystemのXML Webサービス機能に注目してみよう。
ネットワークの普及により、インターネット上にある膨大な情報からWebブラウザで必要なものを検索したり、社内に存在するさまざまな情報システムに手元のPCからアクセスしたりできるようになった。紙のドキュメント類から手作業で情報を検索していた時代や、情報システムごとに異なる端末を操作しなければならなかった時代と比較すれば、これでも生産性は大幅に向上した。しかし必要な情報を見つけ出し、それらを組み合わせて求める形式に再加工することを考えたとき、それらの作業を必要最低限の工数で実行できるように統合されているかといえばそうではない。 例えば、Wordでの報告書作成、Excelでのデータ集計やグラフ作成などは、多くのインフォメーション・ワーカーが日常的に行っている作業だろう。このとき、必要な情報をWebブラウザを利用してインターネット/イントラネット上のWebサーバから検索したり、Webアプリケーション化された社内の業務システムから検索したりできる。あるいはMicrosoft Visual Basic(以下VB)を利用したクライアント/サーバ型システムなら、VBによるクライアント・アプリケーションを利用してサーバにアクセス可能だ。 しかしこうして収集された情報をWordやExcelで利用するには、データを手作業でコピー&ペーストしなければならない。簡単にコピー&ペーストできればよいが、場合によってはWebブラウザやクライアント側のVBアプリケーションで表示された情報をキーボードから再入力する羽目に見舞われるかもしれない。1つのWindowsデスクトップに表示して、コピー&ペーストできるだけでも以前に比べれば便利になったが、生産性という観点ではまだまだ改善の余地が大きい。
このように異なる情報システム間の情報を、効率的かつシームレスに統合可能にするインターフェイスとして注目されているのがXML Webサービスである。このXML
Webサービス以前にも、さまざまなアプリケーション統合のプロトコルが開発されたが、XML Webサービスは、Webのプロトコルとして広く普及したHTTPをベース・プロトコルとして利用できるため、既存のネットワーク・インフラをそのまま利用できること、ファイアウォールを越えた通信などが容易であること、データ交換には標準仕様であるXMLを利用するため汎用性が高いなどの特徴がある。
マイクロソフトは、次世代の情報環境戦略として.NET構想を提唱し、各製品の.NET対応を進めているが、この.NET戦略の核心にあるのがXML Webサービスだ。インターネット/イントラネット上の情報サービスや社内システムなどがXML Webサービスに対応することにより、それらのシステム同士が人間の手を介さずに連携できるようになる。すでにXML Webサービスは、異なる複数の社内システムをイントラネット環境で統合するインターフェイスとして、あるいは異なる企業の情報システム同士をインターネットを介して連携させるBtoBシステムのインターフェイスとして普及が進みつつある。 Microsoft Office SystemはXML Webサービス対応を強化した最新かつ最強のビジネス・アプリケーションである。Microsoft Office SystemのXML Webサービス対応により、エンド・ユーザー、アプリケーション開発者、ネットワーク管理者のそれぞれが利益を享受できる。本稿では、これらの視点に立ち、Microsoft Office SystemのXML Webサービス機能が具体的にどのような価値を提供してくれるのかを見ていくことにしよう。
Microsoft Office SystemのXML Webサービス対応がもたらす価値を説明する前に、ここでXML Webサービスについて簡単にまとめておこう。 XML Webサービスとは、XML形式で記述されたデータを、HTTPなどの標準的なインターネット・プロトコルを利用して送受信することで、アプリケーション間通信を可能にする仕様である。Webサーバで利用されるHTTPをトランスポート・プロトコルとして利用できることから、インターネット/イントラネットで構築されたネットワーク・インフラをそのまま利用可能で、ファイアウォールを越えた通信も容易になる。 通常のWebブラウジングでは、HTTPプロトコルを利用して、WebサーバとWebブラウザ間でHTMLデータをやりとりする。このHTMLデータは、Webページを構成するためのもので、HTMLデータを受け取ったWebブラウザは、その内容を解釈して結果をブラウザ・ウィンドウに表示する。 これに対しXML Webサービスでは、同じHTTPプロトコルを利用しながら、HTMLデータではなく、XML形式で記述されたSOAP(Simple Object Access Protocol)メッセージと呼ばれるデータをサーバ/クライアント間で送受信する(仕様上はSMTPなどHTTP以外のプロトコルも利用可能)。このSOAPメッセージの内部には、SOAPエンベロープ(envelope=封筒)と呼ばれる構造化データが含まれる。SOAPエンベロープには、メッセージの送信先、送信オプションなどがヘッダ情報として記録され、メッセージの本体となるデータが格納されている。このSOAPメッセージをやりとりすることで、アプリケーション間連携を実現するわけだ。
このようにXML Webサービスは、Webで広く普及したHTTPインフラをそのまま使用してSOAPによるアプリケーション連携が可能になる。ファイアウォールから見れば、通信自体は通常のWebページ・ブラウジングと同じHTTPプロトコルでのやりとりなので、Webブラウジングが可能な環境なら、XML Webサービスを利用した通信が可能になる。 アプリケーション連携のプロトコルとしては、XML Webサービスが開発される以前からCORBAやDCOM(Distributed COM)などがあった。しかしこれらは独自のプロトコルであるため、通信には事前の準備が必要である(ファイアウォールの設定変更など)。このため実際には、すべてを内部で管理可能な社内ネットワークやVPN環境が対象で、インターネットを介したBtoB通信などには向いていない。 このようにXML Webサービスのメリットは、HTTPベースのSOAPやXMLなどのインターネット標準プロトコルで構成されるため、特別な環境設定などを行わなくても、インターネット/イントラネットのインフラを利用して、広くアプリケーション連携が可能だということである。このため例えば、データベースや情報システムにXML Webサービスのインターフェイスを準備しておけば、必要に応じて、アプリケーション・レベルでそれらを柔軟に組み合わせて利用できる。急速に変化するビジネス環境に対し、既存のデータやシステムを素早く柔軟に組み合わせてアプリケーションを構築できることは、何より現代の情報システムに求められていることである。XML Webサービスは、このようなニーズにこたえることができる本命のアプリケーション連携プロトコルといってよいだろう。
数年前から、すべての処理をWebサーバ・サイドで集中的に実行し、クライアントからはWebブラウザだけで利用可能にするWebアプリケーションの導入が広まった。この理由の1つは、従来型クライアント/サーバ型システムに対する反省からだ。 こうしたクライアント/サーバ型システムの問題を解消する方式として注目され、普及したのがWebアプリケーションである。Webアプリケーションでは、データベースに加えビジネス・ロジックについてもサーバ側で処理する。クライアント側は、Webブラウザさえあればサーバにアクセス可能で、入出力にはWebのインターフェイスを利用する。このためWebアプリケーション形式の情報システムは、サーバ側だけでシステムの変更が可能、クライアントはWebブラウザさえ動く環境であればプラットフォームを選ばないという特徴がある。インターネット/イントラネットの普及とあいまって、Webアプリケーションは多くの情報システムで採用されることとなった。 しかしWebアプリケーションにもいくつか問題点がある。1つは、クライアント側のユーザー・インターフェイス構築をWebのしくみ(Webで利用できるコントロール群)に依存しているため、VBなどで開発したWindowsアプリケーションと比較すると、インターフェイスがどうしても貧弱になってしまうことだ。例えば具体的にいえば、単純なプッシュ・ボタンやチェック・ボックス、ラジオ・ボタンなどはブラウザでも利用可能だが、マウスの右クリックでポップアップ・メニューを表示させるなど、Windowsアプリケーションで常識となった操作でも簡単には実現できないものが少なくない(Dynamic HTMLなどを駆使することでリッチなインターフェイスを構築することは可能だが、この場合はクライアント環境が限定されてしまう)。 またもう1つの欠点は、クライアント側での操作に対する応答がすべてサーバ側で処理されるため、クライアント操作に素早く反応するようなインターフェイスを構築するのが困難なことだ。これは使い勝手の善し悪しの問題だけでなく、例えばオペレータが大量のデータを連続入力するような作業は、Webアプリケーションでは実装しにくい。サーバでの処理が追いつかず、データ入力が正しく行えなかったり、実用的な入力速度が得られなかったりするからだ。 こうしたWebアプリケーションの欠点を克服する方法として、Windowsアプリケーション・ベースの「スマート・クライアント」が注目されている。ただし、VBを利用した以前のクライアント/サーバ環境に逆戻りするということではない。XML Webサービスをクライアント−サーバ間の通信インフラとして利用し、リッチなユーザー・インターフェイスを実現しながら、クライアント管理の問題をも回避しようとする次世代の情報システム環境である。 Microsoft Office SystemのXML Webサービス機能を活用すれば、使い慣れたOfficeアプリケーションをフロントエンドとして、バックエンドのシステムを連携させることが可能となる。 さらに続けて、エンド・ユーザーが直接的に受けるメリットなどを紹介していこう(次ページへ続く)。
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