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@IT > 業務システムのフロントエンドとしてのMicrosoft Office Systemの実力(2) - Page2 |
企画:アットマーク・アイティ 営業企画局 制作:アットマーク・アイティ 編集局 掲載内容有効期限2004月5月31日 |
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業務システムのフロントエンドとしての
Microsoft Office 2003 EditionsのXML Webサービス対応により、エンド・ユーザーが直接的に受けるメリットの1つに「リサーチ機能」がある。これは、Microsoft Office 2003 Editions内部の作業ウィンドウから、Officeでの作業を中断することなくインターネット上に開設された情報サイトからシームレスに情報を検索可能にするものだ。Webブラウザ・ウィンドウをOfficeとは別に開き、ここで情報検索を行うスタイルは一般的だが、このリサーチ機能を利用することで、Office文書の作業とネット検索をより高度に統合させることが可能になる。従来は、ブラウザ・ウィンドウとOfficeのウィンドウを交互に切り替えながら情報検索を行う必要があったが、このリサーチ機能を使えば、Officeのウィンドウを使いながら、ネット情報検索を行えるわけだ。
このリサーチ機能によるネット検索は、XML Webサービス・インターフェイスを利用して実行されている。このためファイアウォールの内部にいる企業ユーザーでも、多くの場合特別な設定を行うことなくシームレスなネット検索が可能である。
標準では、国語辞典(デイリーコンサイス国語辞典)と単語翻訳(12カ国語対応)、Encarta Dictionary(英語)、類義語辞典(英語のみ)、MSNサーチ(Web検索)などをXML Webサービス経由で利用可能だ。
これら標準の辞書/サイト検索以外にも、有料の情報サービスなどを利用することもできる。原稿執筆時点では、日経BP社のIT情報サービス「BizBoard」、日経新聞のニュース検索サービス「日経デスクトップ」、新聞記事に加え人事情報・企業情報なども検索可能な「日経テレコン21」、ロイターやダウジョーンズ、読売新聞、毎日新聞などの国内外メディアのニュース検索サービス「ファクティバ・サーチ」などがサービスとして提供されている。Microsoft Office 2003 Editionsのリサーチ機能から利用可能な情報サービスは、今後も順次増加していくものと考えられる。このように柔軟な拡張が容易なのは、通信インターフェイスとしてXML Webサービスを利用しているためといってよいだろう。 情報検索では、単一の情報ソース(辞書やリサーチ・サイト)だけでなく、複数の情報ソースを指定して検索処理を実行できる。またOfficeアプリケーション・ウィンドウ内部ですべての作業を行えることから、作業中のOffice文書から検索したい単語を簡単に指定したり、検索結果をOffice文書に簡単に反映したりできる。例えばWord文書中で適当な単語上でAltキーを押しながらマウスの左ボタンをクリックすると、その単語が自動的にリサーチ機能で検索され、結果が作業ウィンドウに表示される(作業ウィンドウが非表示の場合は自動的に表示に切り替わる)。また情報ソース側が対応していれば、検索結果にスマート・タグを埋め込み、検索結果に対するユーザーの操作(クリップボードへのコピーや、さらなるリサーチ検索の実行など)をタグとして表示することも可能だ。 まだ始まったばかりのサービスではあるが、今後のアプリケーション連携時代におけるビジネス・アプリケーションの新たな可能性を感じる機能である。
ソフトウェア開発者は、スマート・クライアントのためのベース・プラットフォームとしてMicrosoft Office 2003 Editionsを活用することができる。Officeによって提供される高度で実績ある機能をカスタム・アプリケーションで利用すれば、開発工数を大幅に削減することができる。またエンド・ユーザーにとっては、使い慣れたOfficeのユーザー・インターフェイスをそのまま利用できるメリットもある。 特に前回解説したXML対応とXML Webサービス対応により、エンタープライズ・レベルのビジネス・プロセスやデータを扱うフロントエンドとしてOfficeを応用することが非常に容易になった。例えば、BizTalk ServerやSQL Server 2000など、XML WebサービスやXMLインターフェイスを持つサーバ・ソフトウェアとOfficeを直接連携させることが可能だ。従来、これらサーバ・システムのデータをOfficeとの間でやりとりする場合、CSV形式のデータ・ファイルを経由しなければならないなど、操作は煩雑で、やりとりできる情報も最低限のものに制限されることが多かった。この点Microsoft Office 2003 Editionsなら、XML Webサービスを利用してサーバ・システムと直接データを交換できるので、リッチなスマート・クライアント環境を構築できる。例えば、Excelをフロントエンドとして、バックエンドのデータベースから必要なデータを検索して取得し、グラフ表示などのビジュアライズを行い、素早い意思決定を行うなどが可能になるだろう。 ■VBAからのXML Webサービス利用を可能にするMicrosoft Office 2003 Web Services ToolkitXML Web Serviceを参照するOfficeカスタム・アプリケーションを開発するには、大きく2つの方法がある。1つは、Microsoft Office 2003 Editions向けとして無償公開されているMicrosoft Office 2003 Web Services Toolkitを利用するものだ。このWeb Services Toolkitを利用することで、Officeのカスタマイズ用言語であるVisual Basic for Application(VBA)からXML Webサービスを参照可能になる。VBAによるOfficeのカスタム・アプリケーション開発に慣れた開発者なら、Microsoft Office 2003 Web Services ToolkitによってOfficeソリューションにXML Webサービス対応を容易に組み込むことができるだろう。 【参考:マイクロソフトダウンロードページMicrosoft Office 2003 Web Services Toolkit 2.01】 Web Services Toolkit自体はOffice XP向けにも提供されていたが、このMicrosoft Office 2003 Web Services Toolkitでは、SOAP 3.0対応(Office XP向けに提供されていたのはSOAP 2.0)、複雑な型への対応強化(IXMLDomNoteListオブジェクト)、VBAエディタからのUDDIレジストリの利用機能などが追加、改善されている。 なおMicrosoft Office 2003 Editionsは、標準でSOAP 3.0の機能が組み込まれているので、Office XPのようにSOAPの機能を追加インストールしなくてもVBAプログラムからXML Webサービスを利用可能だ(従来のOffice XPでは、各クライアント・コンピュータにMicrosoft Office XP Web Services Toolkit 2.0をインストールしなければならなかった)。多数のクライアント・コンピュータが存在する大企業では、この違いはTCOに大きな影響を及ぼすだろう。
■.NET Frameworkを利用するC#、VB.NETベースのカスタム・アプリケーション開発を可能にするVSTO Officeカスタム・アプリケーションからXML Webサービスを参照するもう1つの方法は、Visual Studio Tools for the Microsoft Office System(以下VSTO)を利用するものだ。VSTOは有償の開発支援ソフトウェアで、別途販売されているソフトウェア開発環境のMicrosoft Visual Studio .NETに追加インストールして使用する。製品情報は以下のリンクを参照されたい。 【参照:Visual Studio Tools for the Microsoft Office System 製品情報(マイクロソフト)】 VSTOを利用するメリットは大きく3つある。第1は、プログラム開発言語として高機能なC#やVisual Basic.NETを利用できること。第2はCLR(Common Language Runtime=共通言語ランタイム)ベースのマネージ・コードとしてカスタム・アプリケーションを開発できること、第3は高機能な.NET Frameworkの各種クラス・ライブラリを利用できることである(ただしVSTOで開発したプログラムを実行するには、クライアント・コンピュータに.NET Framework 1.1をインストールしておく必要がある)。 第1のメリットは詳しく説明するまでもないだろう。伝統的にOfficeのカスタマイズ用言語として利用されてきたVBAは、Visual Basicをベースに開発された言語処理系で、一通りの機能は備えているが、本格的なプログラム開発言語のように高機能ではない。これに対しC#やVB.NETは、一般のアプリケーション開発言語であり、言語処理系として最高クラスの機能を提供する。またVSTOによるアプリケーション開発では、開発環境として高性能なVisual Studio .NETを利用できるため、開発作業(ソース管理など)やデバッグ作業が非常に容易というメリットもある。 第2のメリットは、主に実行プログラムの信頼性向上などに役立つ。CLR上で実行されるマネージ・コードは、CLRにより完全に管理されている。このため例えば不正なメモリ・アクセスをプログラムが行おうとしても、実行環境であるCLRによってこれが禁止される。 .NET Frameworkによって提供されるさまざまな機能をカスタム・アプリケーションから利用できるというのが第3のメリットである。これにより、従来ならプログラマが独自に開発しなければならなかったコードの多くを.NET Frameworkに委ねることが可能になるだろう。作成するコード量が減れば、アプリケーションの開発期間が短縮されるのはもちろん、実績ある.NET Frameworkのクラス・ライブラリを利用するため、コードの信頼性を阻害するリスクを大幅に低減できる。 ■プログラムレスでのXML Webサービス利用の可能にするInfoPath 2003上記2つは、VBAやC#、VB.NETなどのプログラミング言語を利用して、開発者自身がカスタム・アプリケーションを開発する場合であるが、Microsoft Office 2003 Editionsで新たにラインナップされたInfoPathを利用すれば、プログラムレスでXML Webサービス対応のビジネス・フロントエンド・アプリケーションを作成できる(InfoPathの詳細については別稿「Insider.NET:InfoPathの衝撃」を参照)。InfoPathは、自身がXML Webサービス対応機能を標準で備えており、XML Webサービス機能を提供するバックエンド・システムと直接データ交換することができる。 InfoPath 2003は、W3CのXSD(XML Schema)標準に準拠するユーザー定義スキーマをサポートしている。このためユーザーは、データベースなど既存のスキーマに基づいてフォームをデザインすることができる(スキーマが存在しなければ、作成したフォームからスキーマを生成可能)。 またInfoPath 2003は、XML Webサービス対応に加え、HTTPや電子メールなどの通信プロトコルをサポートしており、コードを記述しなくても、BizTalk Serverとデータ交換を行い、ワークフロー制御を行うことができる。BizTalk Server側でビジネス・ルールを実装しておき、そのフロントエンドとしてInfoPathを利用することが可能だ。
Microsoft Office 2003 Editionsは、スマート・クライアント開発に向けたさまざまな最新テクノロジが組み込まれている。特に今回ご紹介したXML Webサービス対応の強化により、インターネット上の情報サービスから、イントラネット内部の社内情報システムまでをシームレスにアクセス可能なスマート・クライアント・ソリューション・プラットフォームとなった。Microsoft Office 2003 Editionsを利用して、さまざまな情報にダイナミックにアクセスし、分析し、処理することが可能である。 XML Webサービス・テクノロジを統合したMicrosoft Office 2003 Editionsは、バックエンド・システムとクライアント・フロントエンドを高度に統合する新たなアプリケーション連携時代を切り開くに違いない。その可能性を知る最良の方法は、実際にXML Webサービス対応のスマート・クライアントを開発してみることだ。このための環境は、すべて身近に整っている。
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