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Oracle9i Application Server
Java Edition
その中身と役割を知る
〜Oracle9iAS Java Editionとは何なのか?〜
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最初にその実体を明らかにしておこう。Oracle9i
Application Server(以下、Oracle9iAS)Java Editionとは一体どういう製品なのか。
これはEnterprise EditionとStandard Edition、従来2種類だったOracle9iASファミリーに3番目に加わるエントリレベルのWebアプリケーション・サーバである。
9iAS製品 |
特徴 |
Java Edition |
J2EEに対応し、クラスタリング、IDE、OEM(Web)機能を備える |
Standard Edition |
Java Editionの機能に加え、PortalとFile System機能を備える |
Enterprise Edition |
スタンダード版の機能に加え、キャッシュ、ビジネスインテリジェンス、LDAPに準拠したディレクトリサーバ機能などを備える
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表1 Oracle9iASファミリ |
具体的なコンポーネントとしては、ApacheベースのOracle HTTP Serverと、J2EE実行環境であるOracle9iAS Container
for J2EE(以下、OC4J)を搭載する。もちろん大規模向けの運用も可能なクラスタリング機能もある。別な表現をすれば、これまで基本バージョンとして扱われてきたStandard
EditionからOracle9i Portal、9i Internet File Systemの機能を引いたものがJava Editionとなる。
本体そのものはシンプルだが、軽量、高速パフォーマンスのJ2EE実行環境であることは変わらない。そこに管理ツールと統合開発環境が同梱される。管理ツールはOracleユーザーならなじみの深いGUI管理ツールOracle
Enterprise ManagerのWebブラウザ対応版Oracle Enterprise Manager Web Site、統合開発環境はJavaの統合開発環境として広く知られるOracle9i
JDeveloper。その開発ライセンスが5ユーザー分ついてくるのだ。
対応するOSは、Sun Solaris、HP-UX、AIX、HP True64 UNIX、Microsoft Windows、Linux。価格は62万5000円。これはどのOS対応版製品でも変わらない。
意外と進んでいない? Webコンピューティングシフト
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Webアプリケーション・サーバベンダとしては、途中に停滞期があり、最後尾からの再出発となることを日本オラクルは自ら素直に認めている。しかし、彼らはそれを悲観してはいない。
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写真1 日本オラクルマーケティング本部9iビジネス推進グループ担当マネジャー、鈴木大介氏 |
その理由は、日本において基幹システム分野でのJavaをベースとしたWebコンピューティング化は意外と進んでおらず、参入して収益を上げる余地はまだまだ残されていると見ているからである。特に彼らは地方に大きな商機があると考えている。そこではまだまだホストベース、クライアント/サーバベースの企業情報システム資産がたくさん残っており、そうした手つかずの市場に向け、9iAS
Java Editionをフックとして積極的にセールスを仕掛けていく法があるというわけだ。
一方、都市圏はどうかというと、さすがにJSPやJavaサーブレットを使ったアプリケーションは増えている。しかし、ここでもビジネスロジック層までJava/J2EEで作りこんだ基幹システムの事例はまだそれほどないというのが日本オラクルの認識だ。
「この世界に移行するためには、非常にたくさんのJ2EE技術を学ぶ必要があり、またこれまでのプラットフォームと比べてシステム構築の自由度が高すぎることから、採用に二の足を踏んでいる企業が多いからではないかと考えています」。日本オラクルマーケティング本部システム製品マーケティンググループ担当マネジャー、鈴木大介氏はこう語る。
「最後発であることは不利ではない、むしろそれゆえに優位に立てる点がある」と鈴木氏は力説する。
まずその1つは、先行の他社製品をにらみながら高められていったパフォーマンスだ。2002年7月に実施されたECPerf Benchmarkの結果では、Sun
Solaris上のOracle9iASが、アプリケーションの繰り返し実行回数が6万1863BBops/Minと2位以下を大きく引き離した(図1)。
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図1 ベンチマークテストで最高のパフォーマンスを発揮したアプリケーション・サーバ、Oracle9iAS
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Oracle9iASが高パフォーマンスを発揮する理由は、OC4Jの設計にあるという。
「このJ2EE実行環境は、メモリのリソース配置、CPUリソースの制御に工夫があり、一時にセッションが集中してもそれらに負荷がかからないようになっています。基本的にメモリをあまり必要としない構造で、オーソドックスなJSPプログラムやJavaサーブレットプログラムなら、数十Mbytes程度で稼動します」(鈴木氏)。
第2に、Oracle9iAS Release2からはOracleデータベースで実績のあるGUI管理ツールOracle Enterprise
Managerが利用できるようになった。Java Editionに同梱されているのはそのWebブラウザ対応版Web Siteだが、基本的に操作性は変わらない(画面1)。すでにOracleデータベースに慣れたユーザーであれば、新しく学習することなくすぐに使いこなせる。
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画面1 Oracle Enterprise Manager
Web Siteでのアプリケーションのデプロイ(画面をクリックすると拡大表示します) |
第3の利点として、統合開発環境であるOracle9i JDeveloperの存在がある(画面2)。そのGUIベース開発、RAD開発ノウハウの高さには一日の長があるだけでなく、ツール自体をJavaで記述しているため、LinuxなどのWindows以外のOSでも、同じGUI開発環境での操作が可能だ。
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画面2 Oracle9i JDeveloperの開発画面(画面をクリックすると拡大表示します) |
DBとWebアプリサーバをオラクルに統一するメリット |
それに加えて、Oracle9iASには他社製品には決して持てないセールスポイントがある。Oracle9iデータベースとの高い親和性だ。これによって、技術面と保守面でユーザーは大きなメリットが得られるのである。
まず、技術面で得られるメリットには、例えばTransparent Application Failover(TAF)がある。これは、OracleデータベースとOracle9iASの連携で実現する障害対策機能で、両者の間でセッションの遮断が生じても自動復旧してくれる。このテクノロジの実現には、双方の機能を利用するため、OracleデータベースとOracle9iASとの相互補完の関係が成り立つのだ。
保守面でのメリットは、データベースサーバとWebアプリケーション・サーバ間で原因不明のトラブルが起こった場合、ユーザーは問題の切り分けをする必要がなく、トラブル発生の当初から日本オラクルのテクニカルサポート部隊にお任せできる。マルチベンダ環境で発生しがちな責任の回避合戦というリスクをなくし、迅速に問題解決に向かえる安心感は何ものにも代えがたい。
さらに、米国オラクルの開発部門は、Oracle9iASをあらためて戦略製品と位置付け直している。今後はOracleデータベースと同じ開発サイクルでアップグレードが図られていく。今後徐々にWebコンピューティングシステムの基幹利用が進む中で、中核製品2つの最新版をタイムラグなくリリースしていくという同社のコミットには大きな意義がある。
Java Edition投入でオラクルが目指しているもの |
日本オラクルがOracle9iAS Java Editionの投入で目指しているのは、Webアプリケーション・サーバ市場でのシェア奪取だ。この製品はまた、対応するデータベースバージョンがOracle9iとなっていることから、Oracle9iデータベースの導入促進剤としての使命も帯びている。さらに「Java
Editionで試験的に開発されたJava/J2EEアプリケーションが発展を続けた結果、Standard Edition、Enterprise
Editionで再構築されるというシナリオもあり得る」と鈴木氏は語る。
出口の見えないデフレ時代、システム投資の予算抑制傾向はこの先もしばらくは続くだろう。基本性能を備えた低価格Webアプリケーション・サーバは、この分野におけるオラクルの存在感を引き上げる製品で、十分に魅力的だ。
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