「政府としてオープンソースを支援」、経産省IT産業室長が強調
2002/12/21
経済産業省の商務情報政策局 参事官・IT産業室長 福田秀敬氏 |
経済産業省の商務情報政策局 参事官・IT産業室長 福田秀敬氏は「オープンソースウェイ」で講演し、オープンソースソフトウェアについて「政府として開発を支援したい。だが、コミュニティとの関係のとり方など政府側にも複雑な気持ちがある」と述べ、少しずつ足元を固めながら、オープンソースソフトを含め国内のソフト産業の国際競争力を高めていく考えを示した。
福田氏は国内のソフト産業について「外資のソフトベンダにやられている。日本のプロダクトを輸出できるようビジネスモデルを変換する必要がある。そう考えてオープンソースソフトに注目した」と、現況を説明。国内のソフト産業を「世界で勝てるようにすること」が目標だ。
一方で電子政府向けの公共調達をすべてLinuxにしようという政府内の一部の意見については、セキュリティの評価が科学的に実証されていないことなどを挙げて「乱暴な意見だ。くみすることはできない」と述べ、慎重な姿勢を見せた。
政府がオープンソースソフトを支援する理由は、福田氏によると「政府もROIを意識したいから」。政府はe-Japan構想で年2兆円のシステム調達をしているが、福田氏は「馬鹿げた投資だ。もうかっているのはマイクロソフトやインテルなど外資の企業だけ。政府でも国内企業で安くてよいものを使いたい」と、政府がオープンソースソフトを推進する理由を説明した。
福田氏はオープンソースについての政府の本音として「支援したい、しかし、コミュニティを運営するNPOに政府は嫌われているのではないか、という複雑な気持ちがある」と心情を明らかにした。ソフトはそれぞれの機能ではなく、結局はマーケティングで勝負が決まるのではないか、という考えも政府内にあり、「半導体や、ハードの支援と異なりソフト開発の支援は難しい」と率直な意見を述べた。
国内オープンソースソフト開発を政府が支援する方法として福田氏は「一番いいのは政府調達」と指摘。だが、入札参加条件をオープンソースにすることなどは世界貿易機関の規約などがあり、難しいという。そこで力を入れるのが、R&D(研究開発)に関するコミュニティへの助成。どのような分野で、どの団体に助成するかを判断するのが難しいため、メンテナンス体制が確立された後に、本格的な助成が始まりそうだ。経産省ではebXML(Electronic Business XML)も重視していて、仕様の標準化などを資金面も含めて支援する方針。
オープンソースソフトの中で経産省が最も注目しているのが、組み込み系OSを使うデジタル家電。福田氏は「OSはLinuxなどオープン系にしなければ世界との勝負はできない」と指摘して、「マイクロソフトOSとインテルのチップの組み合わせというデジタル家電のPC化は、日本のソフト産業の競争にとって最悪だ」と述べ、組み込みLinuxなどの開発を支援する考えを強調した。デジタル家電を開発している各ベンダに対しても、「Windowsを使うと世界で勝てない。Linuxを使えと強烈に言っている」という。必要ならベンダに対して助成金も出し、将来の普及が見込まれるデジタル家電の“PC化”を防ぐ考えだ。
福田氏の講演からは政府として国内のオープンソースソフトを強力に支援し、ソフト産業の国際競争力を高めたいという考えが伝わった。一方でオープンソースソフトが独自のコミュニティを基に発展してきただけに、どのように付き合えばいいのかという戸惑いも政府内にあるようだ。とはいえ、政府としても外資系のソフトベンダに牛耳られるのは「しゃく」(福田氏)。ソニーと松下電器産業がデジタル家電向けLinuxを共同開発することで提携したように、既存OSとオープンソースソフトの「戦いの火蓋は切って落とされた」(福田氏)状態だ。マイクロソフトなどからの強烈な反撃も予想される。オープンソースソフトは日本のソフト産業にとって光明となるか。
(垣内郁栄)
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