ここまでの説明からも分かるように、データベース統合プロジェクトにはアプリケーション担当部門も関与している。ただし、アプリケーション開発チームは複数の部門に分かれて存在し、それぞれが異なるSIerにアプリケーション開発を委託していた。しかも、各アプリケーションと外部SIerとの間には属人的な依存関係が強くあったという。
一方、Oracle Exadataをベースにした新システムでは、旧システムからのアプリケーション移行作業に共通する部分が多く、外注先を絞り込んだ方がコストメリットを得やすい。また、外部のSIerに対する依存体質、より厳密にいえば外部SIerの特定担当者への依存体質から抜け出さない限り、IT企業が本来持つべき業務遂行の能力を高めていくことは困難となる。
そこで永易氏は、アプリケーション担当者と外部SIerとの旧来の関係を断ち切り、1社の海外ベンダーにアプリケーション移行/開発作業を集中的に請け負わせることにした。その結果、プロジェクトの進捗は計画よりも1カ月前倒しのペースで進み、外部委託単価についても約30%の削減を実現したという。ただし、そうしたコスト削減効果よりも、ITスタッフのスキルが向上し、業務領域が広がったことの方が重要だと永易氏は強調する。
「これまで当社のITスタッフは、多くの場合、損害保険/生命保険システムの決められたプロセスの中で仕事をこなしてきました。そのため、自分たちでプロセスを考え、全体をコントロールするという機会が少なかったのです。しかし、今回のプロジェクトで海外ベンダーと直接やり取りすることにより、多くのスタッフが自社のシステム要件を満たすためのプロセスを自ら考え、遂行する能力を獲得できました。これは非常に大きな変化であり、当社にとって中核的な価値の創出だといえるでしょう」(永易氏)
ここまでの説明から、永易氏がITコストの削減はさほど重視していないかのような印象を受けたかもしれないが、実際にはそうではない。永易氏はITコストの削減、とりわけ一般にIT予算の約7割を占めると言われる運用コストの削減を重要な課題として取り組んできた。
とはいえ、単純にコスト削減だけを追い求めればコスト構造にゆがみが生じ、企業競争力の源泉であるITスタッフのモチベーションを損なう恐れがある。そのため、たとえプロジェクトの目的がコスト削減に置かれていたとしても、そこにITスタッフの負担軽減につながる仕組み、あるいはスキルアップや業務領域の拡大につながる仕組みを取り込むことが必須だと永易氏は説く。
「結局のところ、コスト効果を最大化するのは人の力です。コスト削減や性能向上の実現だけでプロジェクトを完結させるのではなく、プロジェクトを通じて人材の視野を広げたり、スキルアップを図ったり、あるいは業務領域を広げるプロセスを構築したりしていくことが大切なのです。例えば、オープン共通基盤部では現在、基盤の共通化と標準化を図りながら、現場のニーズにフィットしたサービス作りと提供に力を注いでいますが、その過程で“ITスタッフの成長”という大きな価値も生まれるのです」(永易氏)
そして最後に、永易氏はオラクルに対する要望を次のように語り、講演を締めくくった。
「今回のプロジェクトを通して、Oracle Exadataの効果は性能向上やITコスト削減にとどまらず、当社のようなユーザーIT企業を変革していく上で強力な原動力となることを実感しました。だからこそ、オラクルにはテクノロジーの提供のみならず、Oracle Exadataの能力が本当に導入企業の変革のために使われているかどうかをチェックし、もし問題先送りのための道具としてしか使われていないとしたら、そのことをキチンと伝え、企業を正しい方向へと導いていただきたいですね。そのことが、Oracle Exadataユーザーの真の成功につながるのだと思います」
「企業ITをシンプル化し、それを核心的なビジネス価値に変える」──オラクルがそうした思いを凝集して誕生したOracle Exadata。東京海上日動システムズのデータベース統合プロジェクトは、企業変革に向けたプロジェクト推進者らの強い意志と構想に、Oracle Exadataが最適なかたちでマッチした好例である。
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提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2014年10月28日
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