リスニング上達のコツは「発音の基礎+繰り返し練習」:あなたも取れる! TOEIC925点(3)(3/3 ページ)
1年4カ月の自習で、545点から925点に。独学で短期間にTOEICのスコアを上げた筆者が、英語力向上のノウハウを伝授する。
同じ音声素材を繰り返し練習する
『英語耳』『英語耳ドリル』の練習に限らず、リスニングの練習全般にいえることがあります。それは「同じ音声素材」を多くの回数(100回〜300回)繰り返し聞くことが本質的に重要だということです。これには2つの理由があると思っています。
- 人間が新しい音声を身に付けるには、そもそも同じ発音を何度も何度も繰り返し聞かないと、身に付かないため
- 異なる素材を学ぶときには、音を聞き取ること以外にもたくさんすべきことがあり、純粋なリスニング練習の障害になってしまうため
新しい音声素材にチャレンジするときには、未知の単語に出会って辞書を引いたり、文章そのものを読解したりなど、音声素材として学び始める前の準備が必要になり、リーディングの練習にもなってしまいます。これ自体は悪いことではないのですが、リスニング能力を高める練習の際は、リーディングの練習とは分けて考え、同じ音声素材を何度も繰り返し聞き続ける方が効率的であると思います。
同じ人の発音ばかり聞いていると、ほかの人の発音が聞き取れなくなるのではないかという疑問を口にする人もいますが、そんな心配はいりません。『英語耳ドリル』の練習を終えた段階で、ほかの人の音声の聞こえ方も劇的に変わってきます。また、いろいろな素材を聞きまくる「多聴」の練習が効果的になるのは、もう少し後の段階です。
もしかすると、練習を数多く繰り返すということ自体が、なかなか持続しにくい要素に感じられるかもしれません。しかし前回も述べましたが、回数をある程度こなし始めると、繰り返しているという事実そのものが自信につながり、モチベーションにもつながっていきます。
そこで、リスニングの繰り返し練習には、音声素材を何回再生したかが分かる装置を使いましょう。私はiPod nanoを常に携帯し、仕事の移動時間や、昼休みの歯磨きの時間、夜寝る直前など、余分な時間をフル活用して回数を稼いでいました。そして1日に1度iPodをPCに接続し、「昨日から30回繰り返しが増えた」などをチェックしていました。この段階が、英語学習全体を通して最も身近な達成感を得やすい段階でした。
『英語耳ドリル』の後
『英語耳ドリル』の練習を終えた後は、かなり道標の少ない状態になります。『英語耳』と『英語耳ドリル』は、とても整備された道でした。この段階をリスニング300点前後しか取れないレベルで終えてしまった場合は、いったん道を引き返すべきだと思います。なぜなら、この後は練習用の教材ではなく、映画、本、ニュースなどの厳しい音声素材を使う段階が待っているからです。
私の場合、「Tuesdays With Morrie」というアメリカでヒットした本の朗読CDをAmazon.comで購入し、ひたすら繰り返して聞きました。この練習は3カ月程度継続しました。
いま思うと、当時の私にとっては難易度が高すぎる内容でした。この段階でこの素材に取り掛かるのは、皆さんにはあまりお勧めしません。私はこの3カ月間のあとで、リスニングが410点になりましたが、劇的な進化とはいえないでしょう。
「Tuesdays With Morrie」の後は、英会話スクールであるNOVAの教材CDを利用しました。以前少しだけ通ったときに配布されたCDで、当時は難しすぎて使えなかったのですが、この段階で使ってみると、練習用にかなり優れていることが分かりました。
これは現在も使っています。ある程度練習した結果、リスニング480点に達することができました。
少なくとも私の場合、いま(2008年11月)の時点で、英語の映画や本、ニュースなどを一度ですべて理解してしまうことはできません。しかしそれらを教材として利用できるところまではきたと感じています。しかし教材としての効率の高さを考えると、しばらくはNOVAのCDの練習を続けると思います。
映画やニュースにまだ歯が立たない理由
TOEICのリスニングで高得点を取っても、現実の映画やニュースに歯が立たない理由はいくつかあります。
- 使用される単語が広範にわたるため、そもそも文章で読んでも理解できない
- TOEICのリスニングのスピードよりかなり速い
- なまっていることがある
- スラングが使用されることがある
などです。
冒頭にも書きましたが、文字で読んでも理解できないものは、聞いても決して理解できません。そしてネイティブの語彙は、一般的には2万語程度といわれています。TOEICではどの程度の単語が必要なのか詳しくは分かりませんが、おそらく6000語〜8000語程度なのではないでしょうか。
TOEICでは、例えば日本語では日常的に使用する表現「さかむけができて血がにじんだ」などの表現は出ません。状況や場面が限定されていることによって、単語も限定されています。しかし特に映画ではネイティブが理解できる単語がフルに使用されるので、なかなか歯が立たないというわけです。ニュースは映画ほど表現が自由ではないため、使用される単語は映画と比べると限定されていますが、それでもTOEICよりは多いです。
私は、必要な語彙をすべて映画やニュースで身に付けるのは困難であると考えています。効率的な語彙の習得方法については、次回以降ご紹介する予定です。
さらに映画ではジャンルによってはなまりやスラングが多数登場します。これらは特別に身に付けなければなかなか理解できないものです。なまりについては私自身、インド出張やイギリス出張で多少なりとも経験しましたので、後のコラムで多少触れようと思います。スラングについては、スラング語彙を知っているかどうかです。刑務所や貧しい暮らしを題材にした映画などはスラングの宝庫なので、特に学習したい場合は題材としては適しているといえるでしょう。
私はこの1年ほどの間に、映画を50タイトルは見ていると思います。しかし現在の私のレベルでは、英語学習の役に立っているというより、英語学習のモチベーション維持の役に立っているといえます。映画を利用した学習の実際については前回にも詳しく述べましたが、さまざまなネイティブの表現について学び、表現を広げるためには適切な素材であるかもしれません。しかし、これはTOEIC満点レベルをクリアした後の話です。
筆者紹介
平生宗之
ITエンジニア8年目。中学3年よりコンピュータを始め、これまでに読んだ関連書籍は200冊以上。コンピュータでできることを模索するうち、紆余(うよ)曲折を経て数学基礎論に行きつく。仕事はインフラ、開発、マネジメントをこなすが、本人的にはプログラマが一番性に合う模様。趣味は旅行(車、電車)と音楽(歌、ピアノ)とスポーツ(スノーボード、サーフィン)。元柔道部主将。
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