1年4カ月の自習で、545点から925点に。独学で短期間にTOEICのスコアを上げた筆者が、英語力向上のノウハウを伝授する。
前回まで、私の経験を基に、独学で短期間にTOEICのスコアを上げるための学習方法を紹介しました。今回は番外編として、私のインド出張とアメリカ出張の体験談をお話しします。
語学の実践という面で有意義だったのはもちろん、ITエンジニアとしても得るものの大きい体験でした。
2007年秋ごろ、ある開発案件において、インドのチームによるオフショア開発を行うことになりました。技術的な理由により、インドチームで開発した方がよりリスクが低いと判断したのです。私はこのプロジェクトの開発責任者として開発を取りまとめるほか、インドの開発チーム向けに英語での仕様書などを書いていました。
開発初期に私がインドの開発現場へ足を運んでおくことが、プロジェクト成功の要件だと思われました。現地で進ちょくを管理すること、品質のチェックを行って改修の指示を出すこと、直接コミュニケーションを取ってチームメンバーの性格や特徴を理解しておくことが重要だと考えたのです。
しかし、私のインド出張は初めから決まっていたことではありませんでした。むしろその重要性を、日本の関係者、インドの責任者に説いてまわるところからスタートしました。
インド出張は、会社に利益をもたらすという点で意義のあることでした。加えて私自身にとっても、大きな意義がありました。
語学の実践のためということもありましたが、実はこのインド出張、私にとって初めての海外経験であり、かなり大きな意味を持つイベントだったのです。しかも出張するのは私1人です。現地には日本語の分かる人などいません。
初海外、単身、インド。私自身が希望したこととはいえ、よくこの条件で会社が行かせたものだといまさらながら思います。
インド出張が決まってから実際の出発まで、約2カ月間ありました。その間に私は、『地球の歩き方』という本のインド版などを買って、インドの文化、生活、独自性について勉強しました。英語の勉強にも多少力が入りました。
初海外なので、パスポートを取り、スーツケースを買いました。インドの入国にはビザが必要です。ビジネス目的で訪問する場合、ビザの取得には受け入れ先の会社のInvitation letterが必要でした。
そういった準備を進めるうち、少しずつ「ああ、本当にインドに行くんだなぁ」という気持ちになってきたというか、現実感がわいてきたように思います。
出発までに、インド出張にはさまざまなリスクがあることを耳にしました。しかし、リスクへの不安はそれほどありませんでした。新しい経験を積んで成長できることが、ただただ楽しみでなりませんでした。
2007年10月6日、ひどい飛行機酔いの状態で、やっと着いた深夜のムンバイ空港。ホテルから来るはずの迎えはなく、自力で乗ったタクシーでは、正規の20倍ほどの料金をぼったくられました。
翌日は日曜日でした。午前中にホテルから徒歩10分のオフィスの位置を確認しておき、午後はムンバイ市内のインド門まで、リキシャー(オート三輪のタクシー)、電車、タクシーなどを乗り継いで行きました。途中で露店のマンゴージュースを飲んだり、よく分からないきゅうりのような物を食べたり、ワイシャツを買ったりして、少しずつインドの街に順応していきました。
しかし後からインドの開発マネージャに、かなり真剣な顔で「初心者が勝手にインドの街を1人で出歩くのは危険だ」と注意されました。私はインドチームにとって「お客さま」なので、万が一を考えてのことだと思います。
インドという異国で自由に動ける数少ないチャンスを生かすため、できるだけいろいろな経験をしたかったのですが、やはり多少の危険はあったようです。1人の旅行ではないのだから、軽率な行動は慎むべきだったのかもしれません。
英語という面でいえば、相手はだいたいはこちらの話す英語を聞き取ってくれます。しかし私には、相手の英語はかなり聞き取りづらいものでした。
基本的に外国語の発音は母国語に左右されます。インド人の発音はアメリカ人の発音とはかなり異なっています。
リキシャーの運転手、タクシーの運転手など、半分くらいの運転手は何かしら話し掛けてきます。「どこから来たのか」「インドは初めてか」「観光かビジネスか」「もう街は回ったのか」。こういった質問は皆が問い掛けてくるので、だんだん答えるのに慣れていきました。
日本製の電化製品などが身近な割に日本人が珍しいせいか、興味を持ってたくさん話し掛けてくる人もいました。「日本は優れた電化製品を作っている経済大国」というイメージが主流なようでした。
インドでの仕事始めの月曜日、朝の8時40分にオフィスに行きました。10月とはいえ、ムンバイの日中の気温は33度くらいあります。服装はワイシャツと背広のズボンにしました。
80人くらいいるはずのオフィスに3人くらいしかいませんでした。出社してくる人が増え始めたのは10時ごろでした。
後で聞いてみると、定時という考え方はないらしく、昼近くから仕事を始めて、遅くまで働くのが通常とのことでした。私が8時40分に来たというと、とても早いと驚かれました。ただこれはうちの会社に限っての事情かもしれません。
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