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ミクシィ採用担当が語る 1年目エンジニア奮闘記ITエンジニア入門講座(1)(1/2 ページ)

本連載では、学生がITエンジニアとして就職する前に身に付けておいた方がいいスキルを紹介する。第1回は、Web系企業を代表してミクシィが、1年目エンジニアの仕事内容、役割、求められる能力について語る。

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 こんにちは。ミクシィで採用を担当している水本です。今回はミクシィの「Webエンジニア」について、弊社の新卒メンバーを中心にご紹介します。

WebのITエンジニアに求められる主体性

 WebのITエンジニアに求められる能力の大前提にあるのは、“自分で調べて何かを作った経験がある”ことです。ミクシィでは「本当に興味があれば、Webページや書籍を通じて、ある程度の情報は簡単に手に入るのだから」という考え方を基に、技術に対してどれだけ主体的に取り組んでいるかをとても重要視しています。

 この点にはかなりこだわっているので、結果的に、技術への興味がとても強い(=技術力が高い)人たちが集まってきているのだと思います。

 これまでミクシィに「エンジニア」として新卒で入社したメンバーは約30人いますが、全員、入社前に「何らかのプログラミング経験」を持っています。

 中にはIPAのスーパークリエイターに認定されたメンバーや、学生の時にシステム開発会社を起業して運営していたようなメンバーもいます。

情報系学生との親和性

 専門性が強みになるので、必然的に情報系の学生の方との親和性は高くなっています。

 また、全体的に技術的な素養が高ければ高いほど、mixiへの興味や理解、想像力も高くなるという傾向はあります。

 学生の皆さんとお話ししていると「mixiのトラフィックやメタデータの膨大さ」だけではなく、そこから「Webとリアルの接点」に興味が広がっていることを実感します。そもそもの学習量が多いこともあると思うのですが、情報系の学生の皆さんのキャッチアップの早さには驚かされます。

ミクシィの新卒エンジニア

 さて、ここからは、ミクシィに入社した後の話をします。

 「エンジニア職」として入社した場合、5〜6月に本配属となり、すぐに実際の現場で仕事をしていくことになります。

 mixiの開発現場は、フロントエンド開発のグループとバックエンド開発のグループの大きく2つに分かれているので、配属にはまずこの2択があり、さらにそのグループの中に各チームがあります。個々人の希望と適性が考慮されたうえで配属されます。

 実際の業務に入ると、まずは、環境に慣れることからスタートします。ここでは、Webアプリケーションを開発するフロントエンド開発に配属された場合を例に見ていきます。

 はじめに、mixiの開発環境であるLAMP環境(Linux、Apache、MySQL、Perl)での開発に慣れる必要があります。複数人で同じコードに対してコミットしていくことになるので、分かりやすい記述方法や保守をしやすくするためのノウハウを学んでいきます。

 次に、mixi独自のフレームワークについて学びます。このフレームワークとは、mixiでよくある処理の流れを簡略化したり、処理を共通化したものです。このフレームワークを使えるようになって初めて、mixiに手を入れられるようになるのです。

 さらに、高トラフィック環境でプログラムを動かしますのでWebサーバやデータベースの負荷を考慮したコーディングも学んでいくことになります。

 早い人であれば配属から1〜2カ月で1700万人以上のユーザーが利用する機能のリリースを経験することになります。かなり緊張するでしょう。しかし、その緊張を乗り越えてリリースした機能が多くのユーザーに使われていることを実感できれば、次の仕事へのやる気につながるというものです。

 3カ月ほどたつと、ちょっとした案件であれば完全に任されるようになるのですが、ここでポイントなのが影響範囲の調査です。先輩社員は1ファイルを修正した場合の影響範囲を経験則として把握していますが、新入社員は当然のことながら把握できていません。地道に調べていくことになります。mixiはさまざまな機能が複雑に絡み合っているので調査はとても大変ですが、頑張るしかありません。

 配属から半年もたてば、少しずつ周りが見え始めます。エンジニア以外の先輩スタッフとの接点が多くなるのもこのころです。その中で、情報共有の重要性や、その方法を身に付けていきます。視野が広がることで、自分自身が目指すエンジニアとしてのタイプが見えてくる時期でもあります(タイプに関しては後ほど記述します)。タイプが決まれば、それに合わせた進化が急速に進み、(多少の個人差はありますが)入社から1年たたずに一人前のエンジニアとして活躍することになります。

(例)2008年11月に行われたメッセージ画面のリニューアルや2008年12月から順次公開しているmixiアプリには、2008年4月入社のスタッフが主力メンバーとして携わっています。

ODFと研究と実務

 ミクシィには、One Day Free(ODF)という制度があります。これは、週に1日(現状は金曜日)を実務とは関係のない技術研究や開発に充てることができるという制度です。2006年4月にスタートしました。

 この制度を活用してより幅広い技術を身に付けたり、研究発表の糧にしたり、エンジニア主体でさまざまな取り組みが行われています。

 例を挙げると、一見Webとは無関係に思われる電子工作を研究し、リアルとWebの接点を演出するシステムのプロトタイプを作ったり(詳しくはミクシィ エンジニアブログをご覧ください)、Haskellでのプログラミングの有用性を検証したりするなど、mixiと直接的な関係を持たない技術へのアプローチに取り組んでいるスタッフもいます。

 また、実際にODFのアイデアがmixiのサービスに組み込まれることがあります。友人検索画面にある「あなたの友人かも?」というレコメンドによる友人紹介機能がその1つですし、mixi Radioの選曲アルゴリズムもODFで作成された、アーティスト同士の関連情報を参考にしています。

 ODFでは、3カ月に1度社内で発表会を行います。ここでは、各人の取り組み(研究)成果を共有します。

 発表会を実施することで、研究と成果を全員のナレッジにすることができ、同時に人前で発表する経験が積めると考えています。また、発表会には開発職だけでなく企画職のメンバーも参加します。エンジニアの発表した内容から新たな機能のアイデアがわくようです。

 少し話は変わりますが、ミクシィではエンジニアが外部で発表することを推奨しています。世界最大のPerlのカンファレンス「YAPC」をはじめ、技術的なカンファレンスはもちろん、最近では会社で働くスタッフを紹介する「中の人ナイト」というイベントを、2007年、2008年の新卒たちが立ち上げるという活動を行いました。

 学生の方々から学校での研究内容を生かしたいというお話を聞くことが多いのですが、実際の業務だけでは、その貴重な経験を生かすことが難しいケースは少なくありません。外部で発表する環境をつくることで、業務と各人の研究を両立していくことが可能です。

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