NFCやLTE対応が期待されるiPhoneと、スペック面で先を行くAndroid:カイ士伝のアプリライフ(10)
iPhoneとAndroid、そしてWindows Phoneという3つのOSの今後を占う。それぞれの通信規格とコンセプトは?
新iPhoneのハード面に期待
携帯電話3キャリアがスマートフォンへ注力し、OSとしてもついにWindows Phoneが日本に上陸するなど、スマートフォン業界において大きな変化があった2011年。こうした変化を踏まえて、国内でどのような動きがあるか、iPhoneとAndroid、そしてWindows Phoneという3つのOSの視点で考えてみたい。
AndroidやWindows Phoneのように多種多様なメーカーから発売されるスマートフォンと異なり、アップル1社だけがリリースするiPhoneシリーズにおいて、注目はiPhone 4Sに続く端末、おそらくはiPhone 5としてリリースされるiPhone最新モデルになるだろう。iPhone 4Sでやや発売タイミングにずれはあったものの、1年に1回は新モデルがリリースされるiPhoneにおいて、基本的にはマイナーチェンジモデルであったiPhone 4Sに次ぐ新モデルはスマートフォン業界全体にとっても注目の存在といえる。
iPhone新モデルで期待されるのはソフト面よりもハード面だろう。OSは2007年に発売されたiPhone初期モデルからバージョンアップを重ねることでほぼ完成されつつあり、メジャーバージョンアップであるiOS 5でも、iCloudなど新サービスの対応はあってもOSそのものの大きな機能拡充は少なかった。後継として期待されるiPhone 5についても期待すべきはハードウェアによる機能拡充であり、その中でもLTEとNFCへの対応いかんがスマートフォン業界に大きな影響を与える。
LTEについては米国でベライゾンが、日本ではNTTドコモがそれぞれ商用サービスを開始しており、LTE対応のAndroidやWindows Phoneもリリースされ、次世代の通信インフラとして普及が始まりつつある。しかし日本においては、現状iPhoneを手掛けているauとソフトバンクモバイルの2社ともLTEへの対応は表明しているものの、現状では商用サービスを提供していない。
ソフトバンクではTD-LTEとの互換性を唄う「SoftBank 4G」を2月にもリリースするが、商用サービスとして先行するNTTドコモのXiでもいまだエリアは東京・神奈川・千葉、愛知、大阪に限られているところを考えると、次のiPhoneリリース時にどれだけエリアが拡充しているかという点では心細さが残る。
一方で商用のLTEとしてXiを展開しているNTTドコモは、いくつもの報道やインタビューによれば、自社の各種サービスを取り入れられない限りiPhoneの発売は難しいという姿勢を見せている。iPhone次モデルのLTE対応は未定ではあるものの、いざLTE対応のiPhoneが登場した際、LTEには対応していてもネットワークとしてはほぼ利用できない状況になるのか、それともLTEを手掛けるNTTドコモが満を持してiPhoneを発売するのかは日本のスマートフォン業界において大きな注目を集めるところだろう。
一方、NFCについては国内ではまだGalaxy SII LTE、Galaxy Nexus、Galaxy SII WiMAXモデルのみが対応しているが、iPhoneがNFCに対応すれば一気にシェアが広がる。これまでFelica技術を利用したおサイフケータイを展開しているNTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルも、3社ともにNFCの採用を表明しており、NFCにおけるおサイフケータイの対応が進めば、電子マネーだけでなく、NFCタグの読み取りといったNFCソリューション全体の活性化が期待できる。iPhoneではおサイフケータイが使えないことが障壁となっていたユーザーにとっても、NFC対応は期待が集まるところだろう。
国内で2機種がNFCに対応しているAndroid
NFCやLTE対応が期待されるiPhoneと比較すると、スペック面については先を行くのがAndroid。NTTドコモからはLTE対応機種が4機種リリースされている他、NFCについてもサムスン電子のGalaxy SII LTEとGalaxy NexusというGalaxyブランド2機種が国内ではNFCに対応している。
スペック面でも、2011年冬から発表された製品のうち、ハイスペックモデルではHD解像度のディスプレイやデュアルコアのCPUなどを採用しており、他を圧倒するレベルに達している。
スペック面ではすでに先行するAndroid端末が、今後必要とするのは端末のオリジナル性だろう。アップル1社が手掛けるiPhoneと異なりAndroidはメーカー各社がそれぞれのカスタマイズを踏まえて発売することになり、必然的にメーカーごとの特色が必要になる一方、現状ではタッチ操作中心でiPhoneに近いインターフェイスの製品が中心だ。
また、防水やおサイフケータイ、赤外線通信、ワンセグといった機能も国内メーカーではほぼ標準化しつつあり、海外メーカーもおサイフケータイやワンセグなどの機能を取り込みつつあることから、スペックでの差別化は非常に難しくなりつつある。
こうした流れを踏まえて2012年に期待したいのは、スペックではない部分における端末の差別化だ。その1つの例はシャープが積極的に取り組む10キー搭載のAndroidだろう。各社の積極的なプロモーションも奏功して、最近ではスマートフォンが流行になりつつあるが、全体のシェアで見ればまだまだ2割程度であり、今後はいわゆるフィーチャーフォンが下火になりゆく一方、フィーチャーフォンのユーザーがAndroidへ移行していく流れが加速する。
現状のスマートフォンユーザーはシェアが増えているとはいえ、まだ新しいものに対応できる若い世代が中心となっている中で、今後さらなるシェア拡大のためには、携帯電話の操作に慣れ親しんでいるユーザーを取り込むためにも10キーのようなハードウェアはより重要になるだろう。
多くの携帯電話はデザインで選ばれているというのも1つの重要な事実。すでにQ-pot.のようなデザイン性の高いモデルやPRADAブランドのスマートフォンも登場しているが、今後はこうしたデザイン重視の端末も拡大するだろう。こうしたデザイン性の重視は、デザインが1つしか存在しないiPhoneとは差別化できる部分だ。
また、高機能化が進むスマートフォンにおいて、逆に機能を抑えている機種にも期待したい。多機能がゆえに操作が難しく、セキュリティ的にも不安を感じてしまう層も一定数存在する中で、富士通がフィーチャーフォンで定期的にリリースしている「らくらくフォン」のように、使いやすい機能だけに抑え込んだシンプルなスマートフォンや、自由にはアプリをインストールできず、親の許可が必要になる子供向けスマートフォンなど、さらなるスマートフォンの普及に合わせた端末の拡充が始まることを期待したい。
世界に先駆けて最新OS「Windows Phone 7.5」搭載端末をリリースしながらも、2011年は「IS12T」の1端末のみで終わったWindows Phone。リリース時こそauから華々しく登場したものの、その後登場したiPhoneへauが力を入れ始めたことで、Windows Phoneは宙に浮いたままの感がある。
2012年のWindows Phoneは、何はともあれ取り扱いキャリアや端末の拡充が一番の課題だろう。OSとしては非常に使いやすく、スマートフォン慣れしていないユーザーにも使いやすいインターフェイスになっていると感じる面も多いものの、対応端末がいまだにIS12Tしかないという現状は厳しいものがある。
Webサービスやスマートフォンアプリを手掛ける事業者も、現状すでにiOSとAndroidという2つのOSへ対応する必要があるところへ、さらに対応すべきOSが増えることへ消極的であるという声も聞かれ、コンテンツ面での支援は難しい。まずはキャリアや端末が増え、一定数のユーザーが見込めない限りコンテンツがついてこないという点では課題は大きい。
とはいえスマートフォンの使い勝手という点だけでなく、いまだビジネスの場では主流であるMicrosoft Officeファイルの再現性が、非常に高いというのはビジネスユースで大きなメリット。そうした意味から鍵を握るのは法人市場だと推察されるが、コンテンツやサービスの拡充という点で、ぜひ一般消費者向けの端末もラインアップがそろうことを期待したい。
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