「あいつに頼もう!」エンジニアと営業の理想的な関係:ITエンジニアの市場価値を高める「営業力」(3)(1/2 ページ)
エンジニアが市場価値を上げるには、営業力が必要だ。元SEで営業経験もある著者が、「エンジニアが身に付けておきたい営業力」を語る。
開発と営業、同じ人が担当するのが一番だが……
前回「営業プロセスを理解しているエンジニアが強いワケ」では、エンジニアが知っておくべき営業の仕事内容を紹介しました。
営業が引き立ててくれればエンジニアの市場価値は高まりますし、そもそも同じ社内で開発担当と営業担当の仲が良いに越したことはありません。営業と仲良くなるために、まずはエンジニアが営業の仕事を理解しようということで、一般的な営業のプロセス、中でもエンジニアが協力できるステップについてお話ししました。
かなり概念的な話でしたが、多くの方が興味を持って読んでくださったようです。それぐらい、エンジニアvs.営業の対立に問題を感じている方が多いのかもしれません。
同じ人が開発と営業の両方を担当すれば、そのような対立は生まれません。実際、エンジニアが営業も担当するという取り組みをしている会社もあります。この記事で紹介しているプラムザは、顧客への初回訪問以降、全てエンジニアが営業を行っています。
「エンジニアが営業とプロジェクトマネージャを兼ねる」というこの形態は、もしかしたら小さな組織だからできることなのかもしれません。規模の大きい組織であれば、分業する方が合理的な気もします。
また、プラムザも、顧客の新規開拓はアウトソースしています。見込み客を探し出す仕事は、時間がかかる上に専門性も高いからです。もっといえば、これをやりたがるエンジニアは少ない。つまり、局面は限られますが、営業専任の人が必要なことになります。
ですので、以下は開発担当と営業担当が別の人であることを前提に書きます。
私自身の体験を基に、エンジニアが営業と理想的な関係を築き、市場価値を高める方法について考えてみたいと思います。
「最強同士がくっつく」とは?
私がまだ大阪で通信用ミドルウェアの開発を行っていたころ、開発にK課長という人がいました。1990年ごろは独立系のSIerでも通信のミドルを作っていたのです。しかも結構利益率の高い仕事でした。
われわれの部隊は大阪にいながら、東京の仕事ばかりしていました。東京と大阪の両方に本社がある会社なのに、東京にはその技術を持つ部隊がなかったからです。
K課長も私もお酒が大好きで、しかも2人とも独身だったので、一時期は毎日のように飲みに行っていました。
K課長は東京へ行っては、営業から大きな案件をもらってきます。そんなK課長に、私は聞いたことがありました。
「どうして、そんなに仕事が取ってこられるのですか?」
「森川君。それはな、最強の開発と営業がくっつくからなんや」
聞いたときはなんとなく納得したのですが、後で考えるとよく分かりませんでした。
われわれがいた開発チームは、確かにその分野では強かった。“最強”の開発と言っても言い過ぎではなかったかもしれません。ただ、当時の私には“最強”の営業というものが想像できなかったし、どうしたらそのような営業と“くっつく”ことができるのかというと、これまたさっぱり分かりませんでした。
「口を開けて待っていても仕事なんか来るもんか」
その後バブルの崩壊で、われわれの最大の顧客だったある業界が次々とIT予算を絞ってきました。それと軌を一にするかのように、マイクロソフトなどがPCサーバ上で動く安価な通信ミドルをパッケージとして販売するようになりました。
こうなるとわれわれに仕事はありません。部門ごと崩壊し、多くの部員は仕事のある東京に転勤となりました。業務アプリケーションのインフラ構築などで、保有している技術を活用せよとのことでした。
最初われわれは部長以下、独立した部門として転勤しました。東京の会社が顧客の大きな案件を抱えていたからです。
しかしその案件が終わったら、われわれは大量の社内失業者になってしまいます。私をはじめとするリーダークラスの社員に課されたミッションは、その案件を収束しつつ、次の案件も確保せよというかなりむちゃなものでした。それでもやらざるを得ません。
最初は、営業が勝手に仕事を取ってきてくれて、それが自分たちに割り振られると思っていました。
実際、そういう案件もありました。しかしそれは、われわれが大阪にいたときに請けていた仕事と比較すると、1桁も小さなものばかりでした。
あるとき部内会議で、案件獲得の進ちょく状況を報告する際、私は営業が仕事を取ってきてくれないことに関する愚痴を言いました。そのとき、ある課長に叱責(しっせき)を受けたのです。
「バカもん。口を開けて待っていても仕事なんか来るもんか」
口を開けて待っていてもダメ……。ガツーンと頭を殴られた気がしました。
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