富士通がSDNに基づいた新アーキテクチャを発表、第1弾はDC向けネットワーク仮想化製品:エンドユーザーのQoE向上が目的
富士通は5月8日、「SDN」の概念に基づいた新アーキテクチャ「FUJITSU Intelligent Networking and Computing Architecture」を発表した。データセンター、広域ネットワーク、スマートデバイスなど、特性の異なる3つの領域を連携させ、エンドユーザーのQoE向上を目指す。
富士通は5月8日、ソフトウェアでネットワークを制御する「SDN」の概念に基づいた新たなアーキテクチャ「FUJITSU Intelligent Networking and Computing Architecture」を発表した。併せて、同社では、新アーキテクチャに基づく製品の第一弾として、データセンター(DC)向けにソフトウェアの機能強化と新たなハードウェア製品を提供する。
FUJITSU Intelligent Networking and Computing Architectureとは、データセンター、広域ネットワーク、スマートデバイスなど、特性や要件の異なる3つの領域でサーバ、ストレージ、ネットワークなどのリソースを仮想化し、その仮想化したリソースを「仮想インフラ層」と「分散サービス基盤層」の2つの階層で管理・制御するもの。
昨今、モバイルやビッグデータ、クラウド、ソーシャルなどのトレンドに伴い、ネットワーク需要の変動が激しさを増している。また、仮想サーバや接続デバイス数の爆発的な増加により人手での運用は限界に近づいている。加えて、動画やセンサなどサービスの多様化に伴う品質要件の多元化も課題となっている。
こうしたネットワークの導入や運用における複雑化、煩雑化を改善し、「最適なサービスレベルを実現し、エンドユーザーの体感品質(QoE:Quality of Experience)を向上すること」(富士通 執行役員常務 サービスプラットフォーム部門 ネットワークビジネスグループ長 大槻次郎氏)がこのアーキテクチャの目的である。
製品第一弾はDC向けネットワーク仮想化製品
この考えに基づく製品の第一弾として、富士通では、データセンターでの運用性向上を目指した2製品とソフトウェアのアップデートを発表した。具体的には、リソース管理ソフトウェア「FUJITSU Software ServerView Resource Orchestrator」の機能強化と、ネットワーク仮想化対応スイッチ「コンバージドファブリックスイッチ」、仮想アプライアンスプラットフォーム「FUJITSU Network IPCOM VX シリーズ」のハードウェア製品を提供する。
FUJITSU Software ServerView Resource Orchestratorとは、サーバ・ストレージ・ネットワークのICTリソースを一元的に管理し、要求に応じて仮想サーバ、仮想ストレージ、仮想ネットワークなどの必要なリソースを自動的に配備、設定するもの。今回発表されたバージョン3.1では、SDNに対応した新たな同社ネットワーク機器の管理・制御機能が強化された。コンバージドファブリックスイッチ、IPCOM VX シリーズと連携することで、仮想サーバの追加・削除・移動に伴うネットワークの設定を自動的に行えるほか、仮想システムの配備時にシステムごとのファイアウォールやロードバランサも配備できる。価格は23万円(以下、税別)から。
コンバージドファブリックスイッチは、仮想サーバのライブマイグレーションに連動し、自動的に仮想ネットワークを設定・変更するネットワーク仮想化スイッチ。サーバ/ストレージ収容向けTop of Rack(ToR)スイッチと、PRIMERGYブレードサーバ用内蔵スイッチブレードが提供される。「スイッチ間はメッシュ構造で最短に接続し、スイッチ間の通信経路を複数化、経路を分散して利用することで、スイッチが持つ通信帯域を最大限に活用する」(富士通 常務理事 プラットフォームソフトウェア事業本部長 堀洋一氏)ことができるという。価格は、ToRスイッチが360万円から、スイッチブレードが180万円から。
もう1つのハードウェア製品であるFUJITSU Network IPCOM VX シリーズは、ネットワークサーバ「IPCOM EX」のファイアウォール、ロードバランサ機能を仮想化し、1台のハードウェアで複数の仮想化されたIPCOM EXをテナントごとに配備する製品。マルチテナントのセキュリティを1台の装置で提供できる。性能・機能・容量に応じたテンプレートがあらかじめ用意されているため、サイジングの簡易化が図れるとしている。また、ハードウェアI/O仮想化技術を搭載することで、「複数動作時の性能劣化を最小化」(堀氏)している。価格は190万円から。
今度の展開としては、広域ネットワークの仮想化に対応する「SDNマネージャ」、仮想専用線機能を持つ「SDNサービスノード」を2013年度末から提供し、スマートデバイス向けの製品・サービスの体系化も進めていく予定。
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