「日本ではなぜ、GoogleやFacebookのような企業が生まれないのか? 決して技術力が劣っているからではない。私見だが、日本独自の業界構造もあり、エンジニアが『考えられたモノを形にするだけの人』と軽視されていたためではないか」(ビズリーチ 取締役CTO 竹内真氏)
「インターネットは魔法のようなツール。それを操るエンジニアは魔法使い、世界を変える人たち。なのにエンジニアの評価は低い。この現状を打破する1つの方法として、エンジニアが情報共有し、コラボレーションできるツールボックスがあるといいと考えた。エンジニア同士、エンジニアと企業などがコラボレーションすることで、エンジニアが持っている高いクリエイティビティを最大化し、世界にアピールできるようになると思っている」(同社 代表取締役 南壮一郎氏)
このような考えの基、ビズリーチは5月29日にエンジニアのコラボレーションサイト「codebreak;」(コードブレイク)をオープンした。
機能として、プライベート利用でもリポジトリ数・共有ユーザー数が無制限のGitホスティングサービス「gitBREAK」(ギットブレイク)、企業主催の招待制ミートアップ(勉強会)に参加できる「cafeTERIA」(カフェテリア)、他のエンジニアのスキルと年収を見ることで自分の市場価値を把握する「viewPORT」(ビューポート)、求人情報検索機能「jobBOARD」(ジョブボード)の4つを備える。
エンジニアはメールアドレスと「スキルタグ」(保持スキルと経験年数、熟練度)を登録することで、すべての機能を無料で利用できる。
gitBREAKは、リポジトリを非公開にした場合でも無料で利用でき、リポジトリ数および共有ユーザー数にも制限がない。「GitHubやBitbucketと異なり、プライベートでも完全無料・無制限の世界初のサービス」(竹内氏)という。
cafeTERIAは、企業がクローズドなミートアップを主催し、登録されたスキルタグに基づいて、自社の求めるスキルを持つエンジニアを招待する。エンジニア側は、参加者のスキルレベルがそろっていることで、高度な内容の情報交換ができるというメリットがある。また企業側は、採用候補として「会いたいエンジニア」を選んで招待でき、リラックスした雰囲気の中で技術やキャリアの情報交換をし、将来の採用機会につなげられる。
この招待制ミートアップの第1回は、codebreak;オープン前日の5月28日、ディー・エヌ・エー主催で実施された。2月にオープン済みのベータ版サイトのユーザー約3200人から、Webのサーバサイドの経験を持つエンジニアにアプローチし、29人が参加した。
招待制ミートアップでは、「グニャラくん」ことディー・エヌ・エー ソーシャルゲーム事業本部の末永匡氏が「音楽サービス『Groovy』にも使われたソーシャルゲーム向け開発手法について」とのテーマで講演。独自のWebアプリケーションフレームワーク開発秘話などを話した。その後、参加エンジニアは小卓に分かれてビールと軽食を囲み、末永氏を含めたディー・エヌ・エーのエンジニアおよびエンジニア出身の人事担当など5人ほどの社員と歓談した。
初めのうちは堅い様子だった参加者も次第に打ち解け、現在の自分の業務内容や苦労話、講演で紹介されたフレームワークへの技術的な質問などを参加者同士や社員と話し、会は時間を延長してかなりの盛り上がりを見せていた。
事後のアンケートでは、「ディー・エヌ・エーの知らなかった一面が見られた」「技術者を大切にしていることが分かった」「実際のサービス立ち上げの様子を聞くことができ、スピード感を持って開発していることが分かった」などの声があったとのことで、参加者にとって技術、キャリアの両面で得るものがあったことがうかがえる。
招待制ミートアップ利用の背景として、ディー・エヌ・エー 技術企画グループ グループリーダー 稲村直穂子氏は「Web業界で就業するエンジニアの絶対数が少なく、採用したくてもそれが困難な状況がある」という。「Webエンジニアは少なく、SIerなどからの流入もまだまだ少ない。オープンな勉強会やキャリア採用セミナーも活用しているが、エンジニアと直接出会える手法を、もっともっと増やしたい」
従来のオープンな勉強会では、技術のあるエンジニアには会えるが、キャリアの話はしづらい。また勉強会の文化として、参加者がWebエンジニア中心になる傾向がある。また、キャリアセミナーでは参加者が転職希望者に限られ、技術フックの集客は難しい。
これに対し招待制ミートアップでは、「企業名でスキルを選定して招待することで、(将来の転職先候補として)自社に少なからず興味を持つエンジニアが参加する」「結果的に、技術の話もキャリアの話もできる」「こちらから招待することで、Webエンジニアだけでなく、Webに興味を持ちスキルのあるSIerのエンジニアや研究者、機械系などIT系以外のエンジニアとも会える。また、オープンな勉強会やキャリアセミナーには参加しにくいような要職のエンジニアとも会える」などのメリットがあると感じているという。
開催後の感想として、「やはり従来の手法より、自社への興味が高いエンジニアが多いように感じた」「そういうエンジニアと直接話し、技術だけでなくキャリアの話ができたので、何を大切にしているか、どういうキャリアを積んできたかを知ることができた」と稲村氏は話す。もっと話を聞きたいエンジニアも多くいたとのことだ。
招待制ミートアップの第2回は6〜7月ごろにミクシィ主催、第3回は7月ごろにクックパッド主催で開催される予定。
今後のcodebreak;の展開として、南氏は、ユーザー数を2014年5月末に20万人、2016年5月末に100万人に拡大することを掲げている。また、2014年にサービスの英語版を提供する予定とのことだ。
南氏は「gitBREAKを、和製GitHubとして世界展開したい。全世界のエンジニアに利用してもらい、日本のエンジニアが世界のエンジニアとコラボレーションして成長できるようにしたい」と抱負を語った。
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