Hadoopとの出会いが転機に〜トレジャーデータCTO 太田一樹氏インタビュー:若手起業家の素顔(2/2 ページ)
米トレジャーデータのCTOを務める太田一樹氏にインタビューする機会を得た。プログラミングを始めたきっかけや、Hadoopとの出会い、起業についてなど、28歳の若手起業家の素顔に迫った。
ビル・タイのお墨付きが契機に
――米国での起業にはどういった背景がありますか。
クラウデラを見ていても感じるのですが、ソフトウェア製品はほとんどがシリコンバレーから生まれているという現状があります。そういった中で、「やはりそこには何かあるんだろうな」というふわっとしたものと、ベンチャーを立ち上げる際の土壌の良さのようなものがあります。米国のエンジェル投資家は、ベンチャー企業への投資に慣れているし、育て方も手慣れています。そういう「温かみ」のようなものを感じ、自然と米国で起業したいという気持ちになったのですが、最初の2〜3カ月は鳴かず飛ばずで投資家の反応も薄かったです。ですが、その間にビジネスプランの修正を重ね、アイデアをブラッシュアップさせていきました。
今はトレジャーデータの取締役会長で、著名投資家のビル・タイからの投資を決めたことを契機に、「ビル・タイが投資している会社」として、米ヘロクの創業者など、さまざまな投資家から出資を得られるようになりました。芳川さんとも「今まではなんだったんだろう」と言いながら投資を集めていきました(笑)。幸いなことに、米ヤフーの創業者で有名なジェリー・ヤンも出資してくれて、今では300万ドルほどの資金が集まりました。これが会社を立ち上げた時の経緯です。
――トレジャーデータCTOとしての役割、取り組みは何でしょうか。
CTOというのは実は定義の無い役職で、会社によってそれぞれ役割が違っているのです。完全なるビジネスマンでどうやって市場を取っていくかを常に考えている人がいたり、インフラをどうスケールすれば大量のアクセスをさばけるかを考えている人がいたり……。
そういった中で、自分の役割は一体何なのだろうかと考えた際に、どちらかといえばセールスで大きなディールを取ることが好きだったり、マーケットに対して製品を当てていくことに興味を持っています。日々の業務では、大きめのディールに技術者、およびビジネスマンとして関与したり、どの業界にどの製品を狙っていくかなど半年先の戦略を練ったりしています。
――会社および個人としての今後の展望や方向性を教えてください。
まず会社の展望としては、より多くの顧客にリーチするシングルプロダクトのビジネスをデータ解析の世界で作り上げていきたいと考えています。ビッグデータの重要性が叫ばれる中、市場は今コンサルティングビジネスの様相を呈してきています。いろいろと複雑なことを求める顧客がいるのも事実ですが、プロジェクトを完了するまでに18〜24カ月も掛かるケースがざらにあります。トレジャーデータでは、どの顧客でも大体2〜3週間でプロジェクトが完了しています。この差は顧客にとって非常に魅力的で、そこが強みの1つとなっています。
業界別ではWeb系企業やゲーム系企業が顧客に多いのですが、非IT系企業の方に大きなマーケットがあるのではないかと考えています。先日の発表会でも、芳川さんが注力分野として製造業を挙げています。
例えば、携帯電話や車、工作機械など、あらゆる機械から上がってくるデータをトレジャーデータに溜められれば、そこから故障を検知したり、マーケティングに生かしたりといったことが実現する、というのを世の中に認知させていきたいですね。
創業時の理想を大切に
――では、個人としての展望や方向性はどうでしょうか。
個人としては、会社が大きくなっていく中で、自分の強みを伸ばしていきたいと思っています。起業直後に求められる経営者って、何でも拾える人だと思うのです。それで、会社が大きくなると、スペシャリティを持った人が集まるようになります。そのときの自分の価値ってなんだろうかと考えた際に、創業時の理想であるとか、世の中の問題点であるとか、そういった情報や知識、人とのつながりを持って、会社を1つの方向にまとめ上げて大きく成長させるというのが、私の次のテーマです。
――技術者としてではなく、経営者としての能力を伸ばしていきたいということですか。
そうですね。CTOのO、つまり「オフィサー」とはそういう役割かなと考えています。もちろん、技術的な判断が必要な際は、私の仕事となります。創業者3人のうち、芳川さんにはフィナンシャルのバックグラウンドがあり、もう1人の古橋さんは「この人にコードを書かせれば、とにかく良いものができる」という技術者。トレジャーデータの中核となるプロダクト(fluentdなども含め)はほぼ全て古橋さんが最初に書いたものです。私自身についていえば、技術的なバックグラウンドを持ったエバンジェリストタイプなので、今後2〜3年で狙うべき市場とそのアプローチ方法について集中していきたいと考えています。
――最後に、日本の本格展開に対する意気込みを聞かせてください。
米国で起業したにもかかわらず、創業者が日本人ということもあり、日本企業からの案件がもともと多かったのです。加えて、シリコンバレーの非常に過酷な競争に勝つために、自分たちの強み、つまり私たちのルーツである日本をうまく生かして、会社を伸ばしていく必要があると考えています。
もちろん、米国でもビジネス開発のために優秀な人材を確保し、事業を拡張していくつもりですが、とにかく日本市場を攻めていきます。繰り返しになりますが、日本の産業が強い分野、例えば製造業などでは大量のデータが日々発生しています。そういった領域に注力していきます。
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