現場から見たDevOpsを推進する組織運営 入社5年目の技術者の声から:特集:DevOpsで変わる情シスの未来(2)(3/3 ページ)
DevOpsの手法を考える際、ツールや環境整備に目が行きがちだが、最も重要なのは、チームコミュニケーションとチームの目的の持ち方である。ビジネスを推進する情報システム部門の位置付けを考える。
最終的に目指すものはどこに?
今後、同社では、この組織改革やプロセス改革をどのように推進していくのだろうか。
「最終的には開発チーム全員がChefのレシピが書けて、インフラのことを理解できるようになるのが目標。いまはその過程にあるといえます」(石川氏)
過程である、というのは、同社が持つインフラ全体が膨大であること、サービス運営の歴史的経緯から物理サーバ環境が残っていることによる。
「高価なフラッシュストレージなどを駆使して、超高速レスポンスを狙った構成で運用しているサービスがいくつかあります。その構成でも運用がぎりぎりの状態、というシビアな要件のものに限っては、現在でも物理的なサーバ環境を利用しています」というように、同社サービスの中でも古くからあるものや、シビアな要件のものは現在も物理環境下にある。こういった構成の場合、Chefによる自動化の恩恵は受けにくい状態だ。
現在同社では、社内で5人の移設促進チームを編成し、50%程度残っている物理サーバ環境の仮想環境への移行プロジェクトを推進しているところだという。2014年4月にはデータセンターの移設も予定している。これに伴い、環境立ち上げやテスト、デプロイの自動化なども、全社規模で実現できる体制を整えつつある。そうなった場合、現在の状況からさらにもう一段、サービス提供スピードを上げるには、「開発担当者であってもChefレシピを使いこなせる状態が理想」なのだという。
ではそのとき彼らは「インフラ担当者」ではなくなるのだろうか?
「そうではなく、今まで以上に開発やUIの技術者と会話ができるインフラの専門家になっていくのだと考えています」(石川氏)
組織・プロセスの改革がもたらすDevOpsしやすい環境整備
本稿では、サイバーエージェントのエンジニア部門が取り組むDevOps体制を紹介した。ツールの利用は1つの手段ではあるが、DevOpsを推進するための組織体制の変革、縦串・横串での会議体による議論の場の設定など、組織面での改革が効果を上げていることが理解できた。多様な道具の導入と併せて、組織やプロセスの在り方について、参考になるケースではないだろうか。
関連特集:DevOpsで変わる情シスの未来
今やクラウド、ビッグデータに次ぐキーワードになったDevOps。だが前者2つが通過したようにDevOpsも言葉だけが先行している段階にあり、その意義や価値に対する理解はまだ浸透しているとはいえない。ではなぜ今、DevOpsが必要なのか? DevOpsは企業や開発・運用現場に何をもたらすものなのか?――本特集では国内DevOpsトレンドのキーマンにあらゆる角度からインタビュー。DevOpsの基礎から、企業や情シスへのインパクト、実践の課題と今後の可能性までを見渡し、その真のカタチを明らかにする。
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