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進化を続けるWindows Serverのストレージ機能【徹底解説】Windows Server 2012 R2(2)(2/2 ページ)

これまでの企業システムでは、ハードウェアベンダーが提供する専用ストレージを使用するのが定番だった。Windows Server 2012 R2ではWindows Server 2012で強化されたストレージ機能をさらに向上させ、それらの機能をフルに活用することで専用ストレージに代わる新たな選択肢の1つとして検討に値するまでなったといえる。今回はWindows Server 2012 R2でさらなる進化を遂げたストレージ機能を解説する。

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SMB 3.0のパフォーマンスを引き出すストレージ活用法

 以降は、下図のようなSMB 3.0を使用したNASストレージサービスの構成例をベースに解説していこう。

図5
図5:仮想化ホストとストレージの分離構成例

 Windows Server 2012 R2が提供するNAS(Network Attached Storage)機能であるファイル共有アクセスでは、最新の「SMB(Server Message Block)3.0」が利用できる。SMB 3.0の代表的な機能を紹介しておこう。

  • SMBマルチチャンネル

 複数のNIC(Network Interface Card)を同時に使用することで、ネットワーク帯域の増加、負荷分散、障害対策を行う

  • SMBダイレクト

 リモートダイレクトメモリアクセス(RDMA)をサポートするNICでは、リモート上のファイルを高速で低レイテンシ通信が行える

  • SMBリモートファイル記憶域

 ファイル共有に仮想マシンファイルやSQL Serverのデータベースを配置できる

  • SMB透過フェイルオーバー

 スケールアウトファイルサーバー(Scale-Out File Server:SOFS)がフェイルオーバーしても、クライアントは継続してアクセスできる

  • SMBスケールアウト

 SOFSの全てのノードからアクセス可能になる。クラスターノードを増やすだけでファイルサーバーの帯域をスケールアウトできるので、クライアントの負荷分散も容易になる。

 SMB 3.0では、ファイル共有に仮想マシンを配置することも可能になっている。これは「仮想化基盤における仮想化ホストとストレージの分離」、という新しい設計トポロジーができたことを意味する。仮想化ホストとストレージ間のネットワークには10ギガビットイーサネット(GbE)やInfiniBandを使用する上、SMBマルチチャンネルやSMBダイレクトによってさらなる高速化が期待できるだろう。

SOFSによるHyper-V over SMB

 SMB 3.0のファイル共有では、仮想マシンやデータベースファイルの配置もサポートされる。前者を「Hyper-V over SMB」、後者を「SQL Server over SMB」と呼ぶことがある。SMB 3.0のファイル共有にアプリケーションデータを配置することはスタンドアロンサーバーでも可能だが、ファイルサーバーに障害が発生すると全ての仮想マシンがアクセス不可能になってしまう。そこでファイルサーバーをクラスター化して、仮想マシンを配置するストレージの可用性を担保するのだ。これにはSMB透過フェイルオーバー機能によって、クラスターのフェイルオーバー時でも継続的なアクセスを可能にするSOFSが適している。

 SOFSは記憶域としてフェイルオーバークラスターの「クラスターの共有ボリューム(CSVFS)」を使用するファイルサーバーであり、全てのノードからアクセスが可能だ。SOFSのファイル共有に仮想マシンを配置するHyper-V over SMBの構成を採ることで、仮想化ホストとファイル共有間のネットワークにはSMB 3.0が使用される。この際、SOFSへのクライアントアクセスの負荷分散は、共有単位で平準化が自動的に行われる。同様に、障害ノードの復旧時やノードの追加なども負荷が自動的に平準化される。

クラスター化された記憶域スペースをSOFSで使用するには

 クラスター化された記憶域スペースを使用するには、3台以上のSAS接続で全てのノードに接続されている必要がある。この場合、Shared SASでRAID機能を完全に無効化できる製品を使用する必要があるが、現状では対応製品が少ないことが課題となるだろう。

 クラスター化された記憶域スペースを使用することで、ストレージサーバーとしての可用性は向上し、エンタープライズ環境での実用にも十分に耐えうる環境が構築できる。

仮想化基盤でのストレージとしての活用法

 プライベートクラウドの仮想化基盤における設計トポロジーとしては、仮想化ホストに共有ディスクを接続したクラスター構成を採る方法が一般的だ。共有ストレージへの接続方法としては、先に紹介したストレージ専用のプロトコルを使用するSANストレージと、共有フォルダのようにアクセス可能なNASストレージがある。

 SANストレージはハードウェアベンダーが提供するストレージ機能を選択する方法と、Windows Server 2012 R2の標準機能であるiSCSIターゲットサーバーを使用する方法がある。iSCSIターゲットサーバーで構築するストレージ環境は仮想ディスクを使用するため、保存先に記憶域スペースを使用すれば、より柔軟な構成を採ることができる。

 NASストレージは、SOFSを使用することでストレージの冗長性を確保した構成が組めるが、その際はSOFSのクラスターノードのディスク構成をShared SAS、FC、iSCSIから選択することになる。現状、この部分がNASベースのWindowsストレージ環境を構成する際の課題であるのは否めない。なぜなら、結局SOFSではクラスターとSANを使用することになるので、その部分はコスト増となるからである。

 ただし、運用、管理面ではHyper-Vホストとストレージを分離できるので、Hyper-Vホストではストレージを管理する必要がなくなり、仮想マシンはUNC名で指定できるのは大きなメリットだろう。

筆者紹介

阿部 直樹(あべ なおき)

エディフィストラーニング株式会社所属のマイクロソフト認定トレーナー。Active Directory、Network、Security、Hyper-V、Clusterなどを担当。マイクロソフト トレーナー アワード(2010年)およびMicrosoft MVP for Hyper-V(Apr 2010 - Mar 2014)を受賞。個人ブログ『MCTの憂鬱』でマイクロソフト関連情報を発信中。


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