新型うつ社員への対応法:「もしかして?」と思ったら〜 新型うつとの付き合い方(3)(1/2 ページ)
同僚や部下に新型うつの傾向が見られる人が出たら、どのように対応すればよいのでしょうか。今回はその考え方やケースごとの対応を見ていきましょう。
新型うつ傾向の人への対応は、さまざまな先入観を脇に置くことから始まります。先入観があると、そのフィルターを通してしか相手を見られなくなるからです。
先入観の一例を挙げましょう。
- 怠けだろう、性格に問題がある、弱い人間だ
- 問題を回避したがる、努力が足りない、耐えることを知らない
- コミュニケーション能力が低い、社会性が身に付いていない
- 未熟だ、子どもだ、甘えている
このような先入観を強く抱いてしまうと、抵抗感や反感が強くなり、適切な対応が取れなくなってしまいます。まずは、このような意識が前面に出ていないか振り返ることが大事です。
対応の基本
新型うつ傾向の人は、今まであまり叱られたり怒られたりした経験が無く、打たれ弱いという特徴を持つ場合が少なくありません。周囲が頭ごなしに叱責や非難を行うと、挫折感が強くなったり、その反動でその人への反感や反発、攻撃性が高まることもあります。基本は「叱る・怒鳴る」ではなく、「諭す」や「教える」という意識が必要です。
例えば社会性の無さや努力の足りなさが見られる場合には、周囲はそれを非難するのではなく、社会性の身に付け方や、仕事とは努力し続けるものであることを教えていくということです。
また昔の価値観を押し付けても響きません。
「昔はもっと厳しかった」「自分は弱音など吐いたことがない」などと言ってみたところで、「昔と今は違う」と思われて、それ以降の言葉を聞かれなくなってしまいます。新型うつ傾向の人には「本人否定や叱責から入ると問題が大きくなる」という認識が必要です。
コミュニケーションの違いについても、理解が必要です。
昔は対面のコミュニケーションや電話などの、直接顔を見たり音声を使ったりする会話が主流でした。しかし、彼らはメールで育まれた世代です。面と向かってネガティブな内容をやりとりすることに慣れていません。逆に慣れていないが故に、ポジティブな内容の対面でのやりとりは、「自分が認められている」とダイレクトに感じますので、とても効果があります。
対象者が問題を抱えたら
新型うつ傾向の人に問題が起こったときに、「成長の機会だ」「様子を見てみよう」「困ったら相談に来るだろう」と対応を先延ばしにすると、いつの間にか問題が大きくなっていることがあります。本人は「何もサポートしてくれない」「他人ごとのように思われた」「見捨てられている」などの被害者意識を持つこともあります。
特にIT業界は、本人の意識や努力だけでは補えない、技術や経験が必要になることが多いので、早い段階で問題に介入していく必要があります。そしてスキルや成長の度合いを見ていきながら、少しずつ見守る時期を長くしていきます。例えば、次の5段階で問題を把握し、レベルに応じた介入方法を検討していきます。
レベル1 → 技術やスキルで簡単に解決が図れる
レベル2 → 技術やスキルでおおむね解決できるが、少してこずる
レベル3 → 技術やスキルだけでは不足していて、助言が必要となる
レベル4 → 他者のサポートが無ければ、解決に導けない
レベル5 → すぐに直接的な手助けが必要
具体的には、レベル1では「様子を見たり、見守ったりする」、レベル2では「困ったら相談に来てねと声を掛ける」、レベル3では「具体的な解決方法を提示する」、レベル4では「ヒアリングを行い、問題点を分析する」、レベル5では「熟練者と一緒になって解決に当たる」などの介入が必要です。
問題は、上司や周囲がレベル1やレベル2であると認識していても、本人はレベル3やレベル4と感じているなどの乖離(かいり)が生じている場合です。それを回避するためには、「大丈夫そうかな」「解決できそうかな」「サポートが必要なら言ってね」などの声掛けを、日ごろから行うことが大切です。
新型うつ傾向の人は、「周囲の認識レベルより、本人は1〜2段階深刻に捉えていることが多い」という認識が必要です。
次ページでは、具体的な疑問や個別のケースに触れていきましょう。
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