格安SIMで、容量オーバーによって通信が制限されたときの対処方法(IIJmio編):Tech TIPS
スマートフォン/タブレットの通信費用を節約できる格安SIMだが、ある容量を超えて通信すると速度が落ちたり、実質的に通信が止まったりしてしまう。その事前/事後の対策は?
対象サービス:IIJmio高速モバイル/Dサービス
解説
スマートフォン/タブレットなどのモバイルデバイスの通信費用を節約する手段として、「格安SIM」が注目されている。格安SIMとは、MVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)が携帯電話会社の通信回線を借用して提供している、安価な通信サービスのことだ。その詳細は右上の関連記事を参照していただくとして、「格安」をうたうサービスに何らかの「制限」があるのは世の常だ。格安SIMの場合、通信速度/容量に一定の制限があることが特徴の1つでもある。すなわち、1カ月当たりの通信容量が決まっていて、それを超えると通信速度が下がるといった制限が設けられている。
本稿では格安SIMの1つ「IIJmio高速モバイル/Dサービス」を例に、決められた容量を超えて通信すると何が起こるのか、超えた後にはどう対処すればいいのか、超えないようにするには何に注意すべきか、筆者の実例も交えつつ説明しよう。
- 「高速モバイル/Dサービス」の説明ページ(IIJmio)
●高速通信用の容量を使い切ると通信速度が下がる
IIJmioの「高速モバイル/Dサービス」にはいくつかのプランがあるが、いずれもある容量までは下りで最大150Mbpsという「高速通信」が可能だ。当月に割り当てられた高速通信用の容量(IIJmioでは「クーポン」と呼ばれる)を使い切ると、「低速通信」すなわち通信速度が最大200kbpsに制限されるようになる(低速通信中にクーポンは消費されない)。
筆者の主観だが、低速通信中は、各アプリケーションの使い勝手が以下のように変わった。
- リモートデスクトップ: 画面の更新が目に見えて遅れ、仕事に使うにはつらい
- 動画再生: コマ落ちがはっきり分かる
- Webブラウズ: よほど重いコンテンツを除けば、ちょっと遅くなったと感じる程度で、実用的に閲覧できる
- メール送受信: 大きな添付ファイルを除けば、遅くなったことに気付かない
スマートフォンやタブレットの場合、通常はそんなに大容量の通信が生じない。そのため、筆者が知らぬ間に低速通信モードに陥ったときには、「今日はちょっとネットが遅いな」と感じただけだった(Windows PCで通信していたら、すぐに気付いたかもしれない)。
●3日で366Mbytes以上通信すると「止まる」
低速通信モードのまま、(1枚のSIMで)3日間のうちに366Mbytes以上の通信を行うと、今度は「通信規制」がかかり、さらに低速になる。通信速度は大幅に下がり、以下のように各アプリケーションの使い勝手は非常に悪くなる。
- リモートデスクトップ: タイムアウトにより、最初の接続が確立できない
- 動画再生: まったく再生できないことが多い
- Webブラウズ: かなり遅くなり、画像などが表示されない
- メール送受信: タイムアウトにより、しばしば送受信に失敗する
通信規制時の上限速度は公表されていないが、おそらく10kbpsとか20kbps程度だろう。仕事どころか趣味でも、ほとんどの用途に耐えられないレベルであり、一刻も早く回復を図るべきだ。
●容量オーバーに気付かなかったワケ
筆者が通信規制に遭遇したとき、低速通信モードに変わっていたことに気付かなかった。その理由の1つは、前述の通り低速通信(200kbps)でも用途やアプリケーションによっては十分に「使えた」からだ。
もう1つ理由として挙げられるのは、使用容量の「合計」をキチンと把握していなかったことだ。筆者が利用している「ファミリーシェアプラン」では、1本の契約で最大3枚のSIMを利用できる。筆者は2台のモバイルルーターに1枚ずつSIMを装着し、その表面のディスプレイに表示される累積の通信容量をチェックしていた。
もうお気付きだと思うが、筆者は常用中のルーターの方だけで使用容量をチェックしていて、普段使っていない他方のルーターはちゃんと確認していなかった。そして筆者が知らぬうちに、普段使っていない方のルーターで大容量の通信(Wi-Fi版iPadによるiOS8の更新パッケージのダウンロード)が発生した。その結果、筆者の予測を超えるペースで、残っていた約1Gbytes分のクーポンが一気に消費され、低速通信を経て通信規制に至ったわけだ。
こうした事態を防ぐには、常日頃からクーポンの残量を正確に把握しておく必要がある。以下では、その手軽な方法と、低速通信あるいは通信規制から脱する具体的な手順を説明する。
操作方法
●使用可能な残りの容量を確認する方法
IIJmioの場合、次の2種類の方法で残量の確認や高速通信(クーポン)のオン/オフができる。
- WebブラウザーでIIJmioの設定ページを参照する
- モバイルアプリ「IIJmioクーポンスイッチ(みおぽん)」で参照する
前者のWebブラウザーの場合、「クーポン残量照会」ページ(モバイル用、PC用)を開いて「総残量」を確認すればよい。ただ、IIJmioのアカウントによるログインが必要で、少々手間がかかる。スマートフォン/タブレットなら、後者のモバイルアプリの方が素早く操作できてよいだろう。アプリは各ストアから無償でダウンロードできる。
- iOS向け「IIJmioクーポンスイッチ(みおぽん)」(Apple App Store)
- Android向け「IIJmioクーポンスイッチ(みおぽん)」(Google Play)
上記のアプリをインストールして起動すると、まずログイン画面が表示される。IIJmioのアカウント情報を入力してログインすると、以下のように各種ステータスが一覧表示される(以後、アカウント情報は入力する必要はない)。高速通信(クーポン)のオン/オフや、通信規制中かどうかの確認も可能だ。
「IIJmioクーポンスイッチ(みおぽん)」でクーポンの残量などを確認する
これはAndroid OS用アプリで、3枚のSIMを契約しているアカウントの情報を表示させたところ。iOS用アプリも使い方はほぼ共通だ。
(1)残っているクーポンの容量(SIM×3枚分の合計)。この分だけ高速通信が可能。
(2)これをタップすると、SIM内部に格納されているクーポン容量といった詳細なクーポンの状態が表示される。
(3)これをタップすると、各SIMの詳細情報が表示される。
(4)これをタップすることで、クーポン使用(高速通信)のオン/オフができる。
(5)通信規制がかかったSIMには、このメッセージが表示される。
(6)クーポンのオン/オフを変更したら、これをタップすること。
(7)最新の残量を確認するには、これをタップして表示内容を更新する。
クーポンが残り少なくなってきたら、すぐ後で説明しているようにクーポンを追加購入することで高速通信を維持できる。あるいは上の画面の(4)でクーポン(の使用)をオフにし、低速通信モードにすることでクーポンの消費を抑えることも可能だ。ただしその場合は、通信規制がかからないように、1枚のSIMで3日間に366Mbytes以上の通信が生じないように注意が必要だ(通信容量を節約する方法については、別稿で解説したい)。
●通信規制後、再び高速通信ができるようにする
通信規制がかかった後でも、クーポンを追加購入することで再び高速通信ができるようになる(費用は100Mbytes当たり216円)。それには、Webブラウザーで以下のどちらかのページを開き、100Mbytes単位で容量を選んで購入し、クーポンをオンにする。
- 「高速モバイル/D」モバイル用設定ページ(IIJmio)
- 「高速モバイル/D」PC用設定ページ(IIJmio)
以下、Androidスマートフォンでの例を説明する。
購入が完了するとクーポンの残量がすぐに増えるはずなので、前述のみおぽんで確認すること。その上で、クーポンを「オン」にして高速通信を有効化する。
注意すべきは、クーポンを追加購入しても、クーポンをオフにしている(低速通信モードの)間は通信規制によって速度が大幅に下がったまま、という点だ。通信規制はクーポン購入に関係なく、規制が始まってから3日間が過ぎるまで解除されない。つまり、規制される低速通信モードではなく、必ず高速通信モードを選んでクーポンを消費しなければならない、ということだ。その3日以内に追加クーポンを使い切ると、再び通信規制で速度が大幅に低下する点にも注意が必要だ。
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