いつでも、どこでも、どのデバイスからでも同じWindowsデスクトップにアクセス:ITプロ必携の超便利システム管理ツール集(15)
「リモートデスクトッププロトコル」(RDP)によるリモートデスクトップ接続は、Windows標準のリモートコンソール接続機能です。以前はWindowsとMacだけにクライアントアプリが提供されていましたが、現在はWindows以外のデバイスにもアプリが無償提供されています。
今回紹介するツール
[ツール名]Microsoft Remote Desktop
[対象]Windows、UNIX、Linux、Mac OS X、iOS
[提供元]マイクロソフト
[ダウンロード先]Windowsストア、Google Play、iTunes、Mac App Store(記事本文参照)
マイクロソフト純正のリモートデスクトップアプリ
マイクロソフトは現在、Windows 8/8.1向けに「リモートデスクトップ」アプリを、Android、iOS、Mac OS X向けには「Microsoft Remote Desktop」アプリを無償提供しています。Windows Phone 8.1 向けのアプリもありますが、日本ではデバイス自体が提供されていませんので省略します。
いずれのアプリも安全性の高いネットワークレベル認証(NLA)をサポートしています。また、RemoteAppプログラムの接続、RemoteFX仮想GPUの使用、リモートデスクトップ(RD)ゲートウェイ、マルチタッチに対応しており、Windows Serverの「リモートデスクトップサービス」(RDS)のクライアントとして使用できます。もちろん、リモートデスクトップ接続をサポートするWindows PCに対してリモート接続できるので、個人ユーザーでも使用することができます。
なお、マイクロソフトは「Remote Desktop Connection for Mac」も提供していますが、こちらはMac OS X 10.6(Snow Leopard)以前向けの古いデスクトップアプリケーション(RDP 6相当)になります。
Windows版のアプリは主にタッチデバイス向け
Windowsは「リモートデスクトップ接続クライアント」(Mstsc.exe)を標準搭載しており、リモートデスクトップアプリがなくても不自由はしません。Windows 8はRDP 8.0、Windows 8.1はRDP 8.1のクライアントを標準搭載しています。Windows 7 Service Pack(SP)1向けにも、最新のRDP 8.1に対応するための更新プログラムが提供されています。
- Windowsで使用できるRemoteAppおよびデスクトップ接続能の更新プログラム(マイクロソフト サポート)
Windowsストアから無償提供されるリモートデスクトップアプリは、Windows 8以降のモダンUI環境で動作するアプリであり、タッチデバイスでの利用に最適化されています(画面1)。
Windows 8向けに最初に提供されたこのアプリの初期バージョンは、Windows 8特有の“ウィンドウの端の扱い”が、ローカルデスクトップとリモートデスクトップアプリで共通となっていました。そのため、リモートのWindows 8に接続すると「ローカルとリモート、どちらのチャームやサムネイルを表示しているのか区別できない」という問題がありました。
現在のアプリは、ウィンドウ端からのチャームやサムネイルの表示はローカルPC側になり、リモートPC側は接続バーのアイコンからアプリのメニューを開いてチャームやアプリの切り替えを行うように改善されています(画面2)。
実は、リモートデスクトップアプリは、RDSのRemoteAppプログラムには対応していません。リモートデスクトップアプリは、RDSが公開しているデスクトップ(セッションまたは仮想デスクトップ)やRemoteAppプログラムのフィード(RemoteAppとデスクトップ接続)には対応していますが、これはRDSが公開している接続アイコンをアプリのトップページに表示するだけのものです。この接続アイコンをクリック(タップ)すると、Windows標準のリモートデスクトップ接続クライアント(Mstsc.exe)が起動します(画面3)。
RemoteAppプログラムはデスクトップとリモートアプリのウィンドウをシームレスに統合する機能なので、Windowsストアアプリの機能だけでは実現できないのでしょう。
リモートデスクトップアプリでは、Windows 8ならRDP 8.0、Windows 8.1ならRDP 8.1のほとんどの機能を利用できます。“ほとんどの機能”としたのは、リモートデスクトップアプリからはRemoteFX USBやシャドウ接続(RDSの別のユーザーセッションのリモート表示/接続機能)が利用できないなど、一部対応していない機能もあるからです。
Android版、iOS版、Mac OS X版のアプリはRDP 7.1互換
AndroidやiOS(iPad、iPhone)のモバイルデバイス向け、およびMac OS X向けのMicrosoft Remote Desktopアプリは、本稿執筆時点(2014年10月末)でそれぞれ「8.0.11」(Android)、「8.1.4」(iOS)、「8.0.9」(Mac OS X)のバージョンが無償公開されています。
バージョンに「8」が付いているからといって、RDP 8.0やRDP 8.1に対応しているわけではありません。また、RemoteFX対応をうたってはいますが、RDSのVDIで提供される“RemoteFX仮想GPUの表示”への対応であり、その他のRDP 8.0以降のRemoteFX機能(UDP対応やRemoteFX USBなど)には対応していません。つまり、RDPクライアントとしては、RDP 7.1互換ということになります。
これらのアプリの最大の特長は、RemoteAppに対応していることでしょう。RDSで公開されたRemoteAppプログラムや「Azure RemoteApp」(現在プレビュー中)のクライアントとして機能します。Azure RemoteAppについては、以下の記事も参考にしてください。
Mac OS X版の場合は、Macのデスクトップ上にWindowsのデスクトップアプリケーションのウィンドウをシームレスに統合して利用することができます。AndroidやiOSデバイスの場合は、アプリケーションを全画面表示するイメージになります(画面4、画面5)。モバイルデバイスの小さな画面上で、Windowsの大きなデスクトップを表示したり、操作したりするのは大変ですが、RemoteAppプログラムとしてアプリケーション単位で操作できれば、その点は大きく改善されるでしょう。
画面4 Android版のMicrosoft Remote Desktopアプリ。Remote Resourcesは、RDSのフィードを受信するための設定、Microsoft RemoteAppはAzure RemoteAppクライアントの機能
ただし、残念ながらRemoteAppは企業向けのテクノロジであり、利用するにはWindows ServerのRDSまたはAzure RemoteApp(現在プレビュー中)の環境が必要です。
Windows版、モバイルデバイス版、Mac OS X版のアプリはいずれも、企業のRDS(VDIを含む)環境のクライアントとしての利用が想定されており、そのための機能(ネットワークレベル認証、RDゲートウェイ、RemoteFX仮想GPU、RemoteApp)が充実しています。
企業において「いつでも」「どこでも」「どのデバイスからでも」共通のWindowsデスクトップ(またはデスクトップアプリケーション)にアクセスでき、業務を継続できる、そのためのクライアントです。個人的に利用する場合は、ごく一部の機能だけしか利用できないということになります。
Android向けにBeta版が登場
Android版のMicrosoft Remote Desktopアプリについては、2014年10月21日、「Google Play」に新バージョン(8.1.0)のBeta版が登場しました。新バージョンは、UIが刷新され、複数のセッションに同時接続して切り替えられる機能がサポートされています(画面6)。
- Microsoft Remote Desktop Beta(Google Play)
企業向けのRemote Resources、RD Gateway、Microsoft RemoteAppへの対応は、今後の更新で追加されるそうです。なお、iOS版は2014年9月にすでに「8.1.0」(現在は8.1.4)がリリースされており、複数セッションのサポートや日本語を含む多言語対応となっています。
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筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Hyper-V(Oct 2008 - Sep 2014)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手がける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。
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