演繹法を駆使してメンバーを納得させる:ITエンジニアのチームリーダーシップ実践講座(13)(1/3 ページ)
演繹法や帰納法などの論理思考を活用すれば、メンバー間の話し合いや家族への小遣いアップ交渉もうまくいく(かもしれない)。
チームメンバー間の意思疎通を良くする論理思考。今回は「演繹法(えんえきほう)」と「帰納法(きのうほう)」を解説します。
※この連載は、『ITエンジニアのためのチームリーダーシップ実践講座』(上村有子著)の第1章〜第3章を、著者と出版社の許可の下、一部修正して転載するものです。
根拠を並べる
議論の構造を図解すると、メンバーそれぞれが共通の認識で問題を整理できます。構造が曖昧なまま話を進めて後で議論が蒸し返されたり、話の方向を見失ってやみくもに相手を否定したりするような、非生産的な議論を避けられます。
前回「論理思考を会話に応用する」で紹介した「ロジックツリー」を、まず書いてみましょう。書き終わると、葉っぱの部分にたくさんの要素が洗い出されます。例えば「内部情報の不正流出予防」でしたら、「情報管理責任者を明確にする」「ファイルアクセス権限の徹底」などの対策案がリストアップされます。
全ての対策を実施するのが最も望ましいのかもしれませんが、予算や時期、関係部署との調整などの制約があり、全部は実施できないこともよくあります。そこで次のステップは、リストアップされた要素に優先順位を付け、状況に合わせて取捨選択します。
洗い出した項目の中から「いる/いらない」を判断するには、何らかの判断基準で合意を得ることが必要です。なぜいるのか? なぜいらないのか?――思い付きで理由を示しても、なかなか相手を納得させることは難しいので、ソクラテスの時代から使われている理由付け(Reasoning)方法の「演繹法」や「帰納法」を活用します。
演繹法で根拠を述べる
演繹法は、最初に「世間で広く一般に認められていることを引き合いに出し」次に「自分の主張もそれに当てはまる」という論法で根拠を提示する方法です。
先ほどの「顧客情報の不正流出予防」について「啓蒙活動を行うべきだ」と主張したいときは、次のように進めます。
1
一般に「番犬注意」のはり紙のある家は、「見つかりやすく危険」という心理作用が働き、泥棒が入りにくい
2
わが社でも日ごろから「不正流出に神経をとがらせている」ことを社員に浸透させておけば、心理的な抑制につながる
3
だから、事故発生時に会社が社会からどんな制裁を受けるかを説明するパンフレットなどを配布して、日ごろから啓蒙活動を行うべきだ
このように「一般に」→「わが社でも」→「だから……」と話を組み立てていきます。
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