ゲームバー、Cortana、Edge、HoloLens、Bridge、DirectX 12、ANGLE――Windows 10はゲーム開発者に何をもたらすのか:CEDEC 2015まとめ(5/5 ページ)
8月26日に開催されたゲーム開発者向けイベントの中から、ゲームバー、Cortana、Edge、HoloLens、UWP、Bridge、DirectX 12、Cocos2d-x、ANGLE、Visual Studio Tools for Unity、Xbox LiveなどWindows 10関連の講演模様をお届けする。
Windows 10の登場で利用価値が大きく増した「Xbox Live」
マイクロソフトは長らくボックス型のゲーム専用機である「Xbox」シリーズを手掛けてきた。Windows 10がリリースされたことで、今後、ゲーム開発者は「Xbox」だけではなく、Windows PC、Windows Phoneなど、幅広いデバイスに向けたゲームを一度でリリースすることが可能になる。ここでポイントになるのはゲームに関連した各種サービスを提供する「Xbox Live」も、Xbox以外のデバイスから活用できるようになる点だ。
米マイクロソフト Xboxアドバンストテクノロジーグループ シニアソフトウエアエンジニアを務めるFerdinand Schober氏は「Xbox Live on Windows 10: ゲームサービスとマルチプレイヤー」と題したセッションの中で、Windows 10のリリースによってユーザーの利用シーンが広がる「Xbox Live」に関する説明を行った。
WindowsゲームをXbox Liveに対応させる利点
Schober氏は、Windows 10において、ユーザーをゲームに誘導する多数の「エントリポイント」が新たに加えられたと説明する。標準搭載の「Xboxアプリ」「ゲームバー」に加えて、アプリの最新情報をタイル上に表示できる「ライブタイル」、またXboxアプリやゲームアプリ本体と連動してデスクトップ上に通知を行う「トースト」「アクションセンター」などのOS標準機能もその一部だという。
Xboxアプリは、ユーザーがローカルで遊んでいるゲームに関する情報の管理に加え、Xbox Live上での「フレンド」に関する情報を一覧したり、コミュニケーションを行ったりするための機能を持っている。「ゲームバー」によってキャプチャした動画や静止画の管理、SNSなどへのシェアもXboxアプリ上で行う。他のユーザーが遊んでいるゲームや成績、解除された実績などを他のユーザーが見ることで、まだ遊んでいない、もしくは最近あまり遊んでいないゲームタイトルへの関心を持ってもらうための仕組みにも使えるわけだ。
「WindowsゲームをXbox Liveに対応させることで、Windows 10に用意された新たな機能を通じて、より多くのユーザーを獲得できるようになる」(Schober氏)
Schober氏によれば、Xbox Live機能は全てのWindows 10デバイスで利用可能になるという。ゲーム内から呼び出せるXbox Live機能用の共通UIなども用意されており、ゲームをUWPアプリとすることで「全てのWindows 10デバイスで統一されたXbox Liveのエクスペリエンスを提供できる」という。
ゲームに必須のネットワーク機能を利用できる「Xbox Live」のサービス
Xbox Liveには、近年のゲームにおいて標準的になったさまざまなネットワーク関連サービスが標準で用意されている。ユーザーIDによるパーソナライズ、ソーシャルプロフィール、コミュニティ機能といったものから、マルチプレーヤーセッションやマッチメイキングといったものまでが含まれる。これらの機能を自社で用意し、運用することが難しい開発者であれば、そこについては「Xbox Live」を検討する価値が高いというわけだ。これらの機能は、Xboxだけではなく、全てのWindows 10デバイスから利用できるようになる。
Xbox Liveは、当然のことながらマイクロソフトのクラウドサービス上で運用されている。運営規模に応じた構成の拡張が容易に行える他、独自の「データプラットフォーム」を持っている点もポイントになる。このデータプラットフォームでは、ゲーム内で発生するイベントの設定に加えて、ユーザー情報の統計も取ることができる。ゲーム運営の改善に必要なユーザー状況の解析に当たり、こうした機能は必須といえるだろう。
「Xbox Liveと深く統合されたWindows 10の登場によって、その活用範囲はあらゆるデバイスに対して広がっていく。さらにXboxアプリやライブタイル、通知機能を使って、ゲームに対するユーザーのコンタクトポイントも大幅に増加する。今後、ゲームを開発する際にはWindowsへの対応と、そこでのXbox Liveの活用を考慮してほしい。実装方法自体は非常にシンプルだ」(Schober氏)
次回は、人工知能や機械学習に関する4セッションの模様をお届け
このように今回は、Windows 10のゲーム向け機能を中心に、さまざまなデバイスやグラフィックエンジン、ゲーム開発ツールなど、ゲームのUI/フロントエンドに関する機能やその開発における最新情報をお届けしたが、いかがだっただろうか。
ゲーム開発においてUI/フロントエンドはもちろん重要だが、バックエンドの重要性も忘れてはならない。最後に紹介したセッションでもXbox Liveで活用されるユーザー情報やデータプラットフォームの話があったが、こういったデータを機械学習などで蓄積し、解析することでゲームの改善や次作の開発に生かすことはもちろん、最近では人工知能(AI)に応用することも珍しくない。次回は、このような機械学習やデータ解析、人工知能に関する四つのセッションの模様をまとめてお伝えする。
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