iPhoneは格安SIMカードで利用できるの? できないの?:格安SIMカード活用術(1/2 ページ)
量販店に専用カウンターもできるなど、定着しつつある「格安SIMカード」。iPhoneで利用したいという人も多いのではないだろうか。ただiPhoneの場合、設定方法に注意すべき点がある。
現在、日本国内ではau、NTTドコモ、ソフトバンクの携帯電話会社3社が自社のSIMカードでのみ利用できるSIMロック版のiPhoneを、アップルがSIMフリー版のiPhoneを提供している。
日本国内で販売されているiPhoneには、携帯電話回線への接続情報である「APN(Access Point Name)」を設定する画面が用意されていない(キャリアの設定により画面が非表示になっている)。そのため、ユーザーが自由にAPNの各種パラメーターを設定することができない。iOS内部には、アップルが世界中の携帯電話会社(通信事業者:キャリア)の設定情報を「キャリア設定」として格納しており、SIMカードを挿すと自動的にAPNの設定などが行われるようになっているからだ。
Android OS搭載のスマートフォンでは、Tech TIPS「格安SIMをスマートフォンで利用するためのAPNの設定法(Android編)」で紹介したように、手動で「APN」の設定を行えば、MVNOが提供する通信サービス(いわゆる格安SIMカード)で利用できる。
しかしiPhoneでは、前述のようにAPN設定を行える画面がない上に、格安SIMカードに対する設定情報が格納されていないため、単にSIMカードを挿しただけでは利用できない。
iPhone+格安SIMカードに必須の「構成プロファイル」
実はiOSには、APNなどを設定する仕組みとして、キャリア設定以外に「構成プロファイル」と呼ばれるものが用意されており、MVNOが用意した構成プロファイルをインストールすることでAPNの設定が可能になっている。構成プロファイルは、もともとは企業で多くのiOSデバイスに同じ設定を配布するために用意されているものだが、APNを設定する仕組みとしても利用できる。
ただ構成プロファイルには、「APN Payload」と「Cellular Payload」の2種類があり、Payloadという単位で設定を記述するようになっている。iOS 6.x以前では、APN PayloadにAPN情報を記述してAPNを設定していたが、iOS 7以降ではCellular Payloadが標準となっている。
NTTドコモのMVNO各社は、iOS 8.xにおいてはAPN Payloadの構成プロファイルで、iOS 9.xにおいてはCellular Payloadの構成プロファイルでそれぞれAPNの設定ができ、格安SIMカードを利用可能としている。
ところがauのMVNOについては、APN Payloadの構成プロファイルで設定してもデータ通信が行えず、auの通信回線を使うmineoとUQ mobileはiOS 8.xにおけるiPhoneでのデータ通信の利用を「不可」としていた(音声通信は可能)。その後、IIJエンジニアのBlog「てくろぐ」においてCellular Payloadの構成プロファイルを利用することで、auのMVNOにおいても格安SIMカードのデータ通信の利用も可能であることが明らかになっている。
ただしmineoが検証を行った結果、インターネット共有(テザリング)が行えないこと、LTEでの通信が不安定になることがあるといった結果が報告され、「iPhone 5S/5Cについては、iOS 8以降はデータ通信の動作を不可」としている(後述の通り、編集部でテストした限り、Cellular Payloadの構成プロファイルをインストールすればデータ通信も可能であった)。一方、iPhone 6/6 Plus/6s/6s Plusについては、テザリングは動作しないものの、Cellular Payloadの構成プロファイルをインストールすることでデータ通信は可能としている。
各端末とSIMカードの利用可否の関係は下表の通りである。
iPhone/SIM | au SIM | au MVNO SIM | NTTドコモSIM | NTTドコモ MVNO SIM | ソフトバンクSIM | Y!mobile SIM |
---|---|---|---|---|---|---|
SIMフリー版 | ○ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ |
au版 | ○ | △ | × | × | × | × |
NTTドコモ版 | × | × | ○ | ○ | × | × |
ソフトバンク版 | × | × | × | × | ○ | × |
各社提供のiPhoneとSIMカードの動作状況(iOS 9.x) ○は動作可、△は一部機能制限あり、×は動作不可。日本国内版のSIMフリー版iPhoneには、au(KDDI)、NTTドコモ、ソフトバンク、Y!mobileの構成プロファイルがプリセットされており、各社のSIMカードを挿すだけで自動的にAPNなどが設定されるようになっている。mineoはiPhone 5s/5cのiOS 8以降は動作不可、UQ mobileはCellular Payloadの構成プロファイルを提供しておらずiOS 8以降では動作不可としている。 |
構成プロファイルのインストールと削除の手順
以上のような事情があるため、iPhoneで格安SIMカードを利用したければ、MVNOが提供している構成プロファイルをインストールすればいいわけだ。その手順と構成プロファイルの削除方法を紹介しよう。
■構成プロファイルのインストール
まずはiPhoneに格安SIMカードを挿した状態で電源を入れ、アクティベーションなどの初期設定を行う。インターネット接続が必要になるので、無線LANの設定を行う。次にiPhoneでSafariを起動し、格安SIMカードのMVNOのホームページから構成プロファイルをダウンロードする。Safari以外のWebブラウザーでアクセスすると、構成プロファイルをインストールできないので注意したい。
MVNO | サービス名 | 構成プロファイル | |
---|---|---|---|
auのMVNO | |||
KDDIバリューイネイブラー | UQ mobile | → | |
ケイ・オプティコム | mineo Aプラン | → | |
NTTドコモのMVNO | |||
ASAHIネット | ASAHIネット LTE | → | |
DMM.com | DMM.com | → | |
DTI | ServersMan SIM LTE | → | |
IIJ | IIJmio | → | |
NTTコミュニケーションズ | OCNモバイルONE | → | |
NTTぷらら | ぷららモバイルLTE | → | |
U-NEXT | U-mobile | → | |
エキサイト | BB.exciteモバイルLTE | → | |
ケイ・オプティコム | mineo Dプラン | → | |
ニフティ | NifMo | → | |
ハイホー | hi-ho LTE typeD | → | |
ビッグローブ | BIGLOBE LTE・3G | → | |
ワイヤレスゲート | ワイヤレスゲートWi-Fi+LTE | → | |
日本通信 | b-mobile | → | |
主なMVNOの構成プロファイルのダウンロード先 |
ダウンロードが完了すると、[プロファイルをインストール]画面が表示されるので、右上の[インストール]をタップする。
構成プロファイルをダウンロードする
これはmineoの例。iPhoneのSafariで構成プロファイルのダウンロードページを開き、構成プロファイルへのリンクをタップする。
(1)構成プロファイルへのリンクをタップすると、構成プロファイルがダウンロードされる。
構成プロファイルをインストールする
ダウンロードした構成プロファイルを確認し、iPhoneにインストールする。
(1)ダウンロードした構成プロファイルを確認する。
(2)[インストール]をタップして、次の画面に進める。
次の画面でパスコードを設定している場合は、パスコードを入力する。
[警告]画面で、「このプロファイルは署名されていません」と表示されるが、気にせずに右上の[インストール]をタップする。Cellular Payloadの構成プロファイルの場合、さらに「お使いのiPhoneのネットワークトラフィックは、モバイルデータ通信の構成によりフィルタリングまたは監視される場合があります。」という警告も表示されるが、IIJによればフィルタリングや監視は行われないということだ。[インストール完了]画面が表示されたら、右上の[完了]をタップして、インストールを完了する。
警告内容を確認する
[警告]画面で表示された内容を確認して、[インストール]をタップして先に進める。
(1)プロファイルに署名がない旨の警告が表示される。
(2)Cellular Payloadの構成プロファイルは、この警告が表示されるが、IIJによればフィルタリングや監視が行われることはないという。
(3)[インストール]をタップする。
iOS 8.x以降ならば、いずれの場合もCellular Payloadの構成プロファイルをインストールする。またすでに構成プロファイルがインストールされている場合は、構成プロファイルの削除を求められることがあるので、後述の方法で構成プロファイルを削除してから、再度、構成プロファイルのダウンロードから行う。
プロファイルのインストールに失敗した際の警告画面
すでに別の構成プロファイルがインストールされている場合、このような警告ダイアログが表示されるので、指示に従って構成プロファイルを削除してから、再度、インストール作業を行う(削除の手順は後述する)。
(1)すでに構成プロファイルがインストールされている場合、このようにプロファイルのインストールが行えなかった旨の警告が表示されることがある。
構成プロファイルのインストールが完了したら、無線LANをオフにして、LTE回線で接続できることを確認する。この際、接続できるようになるまで少し時間がかかる場合があるので、画面左上隅に「4G」または「LTE」というステータスが表示されるまで待ってみよう。接続できないような場合は、構成プロファイルを一度削除してから、再度、ダウンロードとインストールを行うこと。
■構成プロファイルを削除する
前述の通り、別のMVNOの格安SIMカードに変更する場合、すでにインストール済みの構成プロファイルの削除が求められる。[設定]−[一般]−[プロファイル]をタップし、[プロファイル]画面で削除したいプロファイルを選択し、次の画面で[プロファイルを削除]をタップ、次の画面でパスコードを入力すると、プロファイルが削除できる。なお、プロファイルが一つもインストールされていない場合は、[一般]に[プロファイル]メニューは表示されない。
インストール済みプロファイルを削除する
[設定]−[一般]−[プロファイル]をタップする。[プロファイル]画面で削除したいプロファイルを選択すると、この画面になるので、[プロファイルを削除]をタップすればよい。次の画面でパスコードを入力すると、選択した構成プロファイルが削除できる。
(1)[プロファイルを削除]をタップする。
ただ格安SIMカードからauのSIMカードに戻したような場合、構成プロファイルを削除しただけでは、LTEで接続されず、3G(CDMA2000 1x)による接続になってしまうことがあるようだ。このような場合、[設定]−[一般]−[リセット]画面の「すべての設定をリセット」を実行するとよい(「ネットワーク設定をリセット」でも改善しそうだが、試した限りにおいて構成プロファイルは削除され、設定がリセットされるものの、症状は改善されなかった)。構成プロファイルの設定が完全に削除・リセットされ、LTEでの接続が可能になるはずだ。なお「すべての設定をリセット」を行うと一部のアプリのパスワードや壁紙、通知設定なども削除されてしまうので注意したい。
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