OpenStackをベースにvCPE機能を検証、商用展開を視野に――デル、ブロケードらOSCA参加企業が成果を発表:CPEのクラウドサービス提供が具体化
レッドハット、デル、インテル、ブロケードというOSCAメンバー企業4社が、vCPEの商用化に向けた共同検証の結果を発表。OpenStackやLinuxなどを使ったvCPEの実用化に向けて弾みを付ける。OSCAも「OSCA 2.0」として、新たに「Software Defined X」「IoT」にも活動範囲を拡大するという。
2015年10月20日、レッドハット、デル、インテル、ブロケード コミュニケーションズ システムズ(以下、ブロケード)の4社は協同で、OpenStackを利用した通信およびサービス事業者向けのクラウド型NFV(Network Functions Virtualization)ソリューション商用化に向けた共同検証の結果を発表した。
今回の検証は、通信におけるユーザー側の設備である「CPE」(Customer-premises equipment)を、キャリア側のクラウドで仮想的に実装し(vCPE)、実運用可能なレベルでのサービス提供が可能なことを示すリファレンスとして位置付けられる。
具体的には、1台のサーバーに40インスタンスの仮想ルーター(vCPE)を集約、40Gビットのインターフェースで、各インスタンスの通信性能を1Gビット均等に維持、合計で、物理ネットワークと同等の40Gbpsの通信性能を達成している。
「vCPEのクラウド提供が実現すれば、拠点側に必要な設備はレイヤ−2の設備(ブロケードのEthernetファブリックなど)のみで済む。ルーターやファイアウオールといったレイヤー3以降の機能はVPN(Virtual Private Network)でクラウドに接続して利用できる。CPEを各拠点構内設備として置く場合の管理運用コストを圧縮する」(ブロケード 執行役員 SDN/NFVビジネス開発本部 The New IP推進室担当 尾方一成氏)
これまでも、同様の検証は行われてきたが、「今回の検証のポイントはリソース割り当てを“フェアに”配分した上で、ベアメタルと同等の性能を出したことにある。事業者がネットワーク機能を集約し、サービスとして提供する場合に重要な技術。従来はベストエフォートで性能を検証する段階だったが、今回の検証では一歩進んで、具体的なサービス提供が可能であるというリファレンスになるものを示した」(レッドハット アジア太平洋地区 事業開発戦略本部 テレコム&NFV チーフテクノロジスト 杉山秀次氏)という。
検証環境では、レッドハットの「Red Hat Enterprise Linux」を含むOpenStackディストリビューション「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 7」(RHELOSP7)、デルのサーバー「Dell PowerEdge R630」、ブロケードの仮想ルーター「Brocade 5600 vRouter」を使用している。また、通信性能に関しては、インテルが提供する「DPDK(データプレーン開発キット)」を使い、パケット処理性能を向上させている。この他、ブロケードでは、検証環境として自社の「New IPラボ」を提供している。
共同検証実験の技術詳細はホワイトペーパーとして公開されている。なお、これらの活動は日本のITソリューション企業らによる組織「「Open Standard Cloud Association(OSCA)」の活動の一環である。
デル、インテルら日本企業によるOSCAの第2弾の活動は「Software Defined X」「IoT」も対象に
そのOSCAは、この発表に先立つ2015年10月13日、「OSCA 2.0」としての活動を開始した。OSCA 2.0では従来の活動範囲に加え、新たに「Software Defined X」「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)」を活動領域に加えている。既に2015年7月にはOSCAの検証拠点としてデル東日本支社内のソリューションセンターに「Dell Bigdata/IoTラボ」を開設している。
OSCAは下記ロゴに示す通り、日本国内のサーバー/ネットワーク/データプラットフォームベンダーやSI企業らが参加、OpenStackやApache Hadoopなどのオープンな技術を使ったデータセンター内、データセンター間の接続に関する技術検証を推進し、参加企業合同で技術検証やリファレンスアーキテクチャを発表している。
直近ではミドクラやブロケードといったネットワークソリューションベンダーも参加し、性能検証や相互接続検証などの情報発信を行っている。また、2015年8月には、F5ネットワークス、デル、レッドハットの3社でOpenStackのLBaaS(Load Balancer as a Service)機能の動作検証も実施している。
OSCA設立以来3年半の活動成果として、OSCA会長でデル執行役員の町田栄作氏は「(オープンソースのIaaS<Infrastructure as a Service>基盤ソフトウエアである)OpenStackおよびHadoop関連ソリューションの普及が進んでいる」とし、現在80社以上の企業がOSCAの活動成果を受けた何らかのソリューションを導入しているとした。
現在進行中の検証プロジェクトとしては、オープンソースソフトウエアの分散オブジェクトストレージ「Ceph」のOpenStack環境での性能評価やDockerのI/O性能特性の検証の他、本稿冒頭で紹介したvCPE性能評価などがある。
インテル ビジネス・デベロップメント・グループ データセンター&IoT 事業開発本部 シニア・スペシャリスト 田口英治氏は「IoT時代のITインフラでは、IoTエンドポイントセキュリティやデータ分析など、多様な能力が求められるのと同時に、それらの要素のつながりが重要になる。それゆえにソフトウエア定義型のインフラ基盤を目指す必要がある」と、同社Software Defined Infrastructure(SDI)とOSCAの活動との関連性にも言及した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コンテナー、ネットワークへの取り込み目立つ:OpenStack12番目のリリース、Libertyの技術的注目ポイントは?
OpenStack Foundationは2015年10月15日(米国時間)、OpenStackの12番目のリリース、OpenStack Libertyの提供開始を発表した。その技術的なハイライトを、OpenStackコアデベロッパーである元木顕弘氏の監修に基づき紹介する。 - エンタープライズで使えるオブジェクトストレージを確保?:IBMがCleversafeを買収へ、オブジェクトストレージがポートフォリオに加わる
米IBMがCleversafeの買収を発表。セキュアなオブジェクトストレージ技術を自社ストレージポートフォリオに加える。 - 2015年10月26日から受験可能に:OpenStack技術者認定試験がスタート
OpenStack技術者認定試験「OPCEL認定試験」がスタートする。ディストリビューションやバージョンに依存しない普遍的な知識を問う内容だという。 - VMworld 2015:VMware NSXのカサド氏が、ネットワーク仮想化について「間違えていた」2つのこと
ヴイエムウェアのネットワーク仮想化製品であるVMware NSXの導入は広がっているというが、どういう用途で使われているのだろうか。新機能は、用途を今後どのように広げていくのか。米ヴイエムウェア ネットワーキング&セキュリティ事業部門(NSBU) ゼネラルマネージャー、マーティン・カサド氏に聞いた。 - 「OpenStack Summitの歩き方」リポート(3):Kilo、Liberty、そして“Mitaka”。OpenStackはどうなる? コアデベロッパーによる開発プロジェクトの動向まとめ
OpenStackプロジェクトの開発メンバーによる、プロジェクト全体のアップデート解説。今秋、方針が固まるMリリース「Mitaka(三鷹)」の予想も。 - 「OpenStack Summitの歩き方」リポート(2):OpenStackの波に乗る企業、それぞれの市場創出へのアプローチ
OpenStackのエコシステムに参加する企業が増えている。日本国内でも、OpenStackの技術を軸に多様なアプローチで市場をもり立てようと試みる企業が増えてきた。 - 「OpenStack Summitの歩き方」リポート(1):ユーザー企業が「コレジャナイ」と感じるのはOpenStackのせいじゃない
注目を集める「OpenStack」。ユーザー企業の関心が高まる一方で、実際にヒアリングしてみると「コレジャナイ」と、要件のミスマッチが発生することが多いという。その背景にあるのは……。 - OpenStackソリューションで採用:富士通、ミドクラのネットワーク仮想化製品を全世界でOEM提供
ミドクラは2015年7月29日、「Midokura Enterprise Midonet(MEM)」で、富士通とOEM供給契約を締結したと発表した。富士通は同社のOpenStackによるプライベートクラウド構築ビジネスで、MEMを主要なネットワーク仮想化製品として展開するという。 - 「パブリッククラウドに全インフラを移行できる企業は少数」:米グーグル、OpenStack Foundationへの参加でOpenStack上のコンテナを強化へ
米グーグルは7月16日(米国時間)、OpenStack Foundationにスポンサーとして参加した。コンテナレベルでのハイブリッドクラウド運用をやりやすくする環境の強化が、グーグルの目標だ。 - OpenShift Enterprise 3を発表:DockerでPaaSは離陸し、「分散アプリケーションシステム」に進化する、米レッドハット
米レッドハットは、2015年6月に開催したRed Hat Summit 2015で、DockerとKubernetesに基づくPaaS基盤の最新リリースである「OpenShift 3」のオンプレミス運用版、「OpenShift Entterprise 3」を発表した。同社は、Dockerによって一般企業によるPaaSの利用が拡大しつつある、同社の製品はさらにその次を目指すという。 - Red Hat Summit 2015:米レッドハット、モバイルアプリ開発/運用基盤の発表に見る、「オープンと統合の融合」というテーマ
米レッドハットは2015年6月23日(米国時間)に開幕したレッドハットの年次イベント「Red Hat Summit 2015」で、モバイルアプリ開発/運用基盤製品の「Red Hat Mobile Application Platform」を発表した。その背景には、オープンと統合というテーマがある。