SEの仕事とは、たこ焼きにマヨネーズをかけるようなもの?〜適正の「りある」:えんじにあ解体新書(2)(4/4 ページ)
「SEって真面目できちょうめんな人がなるんでしょ?」「他人とコミュニケーションを取るのが苦手だから、SEに向いているかな」――SEに向いている性格、向いていない性格はあるのでしょうか。SEの現実を分かりやすく解説する本連載。今回は、現役SEがエンジニア100人に聞いたアンケートを基に、適正の「りある」を紹介します。
たこ焼きにマヨネーズをかけるのもSEの仕事
SEの仕事をたこ焼き屋の仕事に例えると「たこ焼きにマヨネーズをかける仕事」と言えるかもしれません。
これは、単純作業の例によく出される「お刺身に菊の花を添える」「シュウマイにグリンピースを載せる」「あんパンにケシ粒を置く」のような定型作業という意味でしょうか? いえ、その逆です。
おいしいたこ焼きを作るだけがたこ焼き職人の仕事ではありません。お客さまにソースやかつお節、マヨネーズ、青のりをかけてよいかを確認するとともに、かける量を調整します。お客さまと接点を持ち、お客さまの要望を聞き、その要望に応え、笑顔でたこ焼きをお渡しするまでがたこ焼き作りの仕事です。
SEも、PCの前でシステムを作るだけが仕事ではありません。お客さまのご要望を聞き、それに応え、笑顔を保つというコミュニケーションも大事な仕事です。
アンケート結果を見ていただくと分かるように、理想のSE像の1位は「コミュニケーション能力・交渉力が高い」です。何でもできるスーパーSEを意味する「オールラウンド」や、「技術力が高い」よりも大事と、現役SEの皆さんは考えているのです。4位には「マネジメント能力が高い」もあります。
この結果をどう見ればいいのでしょう。一つは、「高い技術力は持っていて当たり前」で、加えて「お客さまと交渉できる力を持つことが理想」という見方です。一つ目のアンケート結果にもあったように、SEはきちょうめんで真面目な人が多く、コミュニケーション力や交渉力に長けた人は少ないものです。自分にないものを持っている人が理想と考えた結果なのかもしれません。
もう一つは、アンケートにある通りで、「技術力」よりも「コミュニケーション能力・交渉力」の方が大事という見方です。技術力が不要とは言いません。でも、そこそこの技術力があり、加えて高いコミュニケーション能力や交渉力をあれば、エース級のSEとして活躍できるということです。
私はこのアンケート結果は、後者の見方をすべきと考えます。つまり、技術力よりもコミュニケーション能力・交渉力の方が大事ということです。たこ焼き屋でいうと、おいしいたこ焼きを作るよりも、マヨネーズをかけてお客さまに笑顔でお渡しする方が大事ということです。
実際、日々のSEの仕事では、技術的なことよりも、お客さまとの調整で困ることの方が圧倒的に多いのです。PCの処理速度をより高めたいとか、短納期で納入したいなどの、技術的な課題もありますが、それらを解決するためには、予算を捻出してもらってハードスペックを高めるとか、納期に余裕を持った工程で進めてもらうなどの、お客さまとの調整が必要なのです。
その調整をするためには、コミュニケーション能力・交渉力が必要です。この能力に長けたプロジェクトリーダーがいると、仕事はとてもやりやすくなります。一方、交渉力が弱いリーダーだと、技術的にできないことや、実現不可能な短納期、低予算での仕事も、ごり押しされて引き受けてしまいます。そんな仕事をさせられるメンバーはたまったもんじゃありません。
今回は、SEの仕事のりある、SEに向いている性格、SEの理想像についてお話ししました。皆さんは、ご自身はSEに向いていると感じられましたでしょうか。
もしかすると、向き不向きはあまり関係ないのかもしれません。実際、SEにはいろいろな性格の人がいますし、技術職でありながら文系出身で活躍している人も山ほどいます。また、人数がまだまだ少ないとはいえ優秀な女性SE、女性マネージャーもいます。ITが好きであれば、きっとやっていけると思います。
次回は「システムエンジニアはオタクなのか」について書く予定です。ご期待ください!
左門 至峰(さもん しほう)
現役のSE(システムエンジニア)兼ITライター。
技術士(情報工学)やネットワークスペシャリストなどのIT資格を多数保有。著書に「どこかで見た・聞いた・体験した!SEあるある四方山話〜SE100人に聞いた今どきのSEの生態」(技術評論社)、ネットワークスペシャリスト試験対策の「ネスペ」シリーズ(技術評論社)、情報セキュリティスペシャリスト試験対策の「セスぺ」シリーズ(日経BP社)など多数。
Twitter:@3mon44
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