「日本企業に適した」OpenStack導入への二つのアプローチ:OpenStack Summit 2015 Tokyoリポート(1/2 ページ)
日本初開催となった「OpenStack Summit Tokyo 2015」では国内コミュニティや国内企業からも魅力的な取り組みが披露された。中でも「日本市場に最適化」したソリューションで市場創出へのアプローチを開拓した伊藤忠テクノソリューションズの取り組みを紹介する。
「OpenStack」がいよいよ日本市場でも盛り上がってきた。われわれにどんなインパクトをもたらしてくれるのか、具体的に何をどうすればよいのか──日本初開催となった「OpenStack Summit Tokyo 2015」(2015年10月27〜30日開催)には、そう期待する多くの来場者が訪れた。
OpenStack Summit Tokyoでは、この期待に応えるように国内コミュニティや国内企業からも魅力的な取り組みが披露された。2011年よりOpenStackソリューションを展開する伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)もその1社だ。同社は「日本のOpenStack市場の状況と、成功のためのアプローチ」と題したセッションにより、OpenStackを活用するための市場分析と展望から導く「日本市場に適した導入方法」を説明した。
日本市場は、欧米市場と比べてITインフラの導入意向が保守的である。新技術の登場から実際に導入が進むまで、欧米市場から2〜3年のギャップがあるといわれる。その背景はさまざまだが、CTC クラウドイノベーションセンター部長代行の小岩井裕氏は「やはり、変化に対する強い抵抗感があるため」と述べる。ITインフラは特に、安定運用が命題なために新しい技術の採用はリスクと考えてしまう。リスクを避けるために実績のある既存の技術を選び、新技術は他社の導入事例を参考に検討する。こんな流れだ。
このような保守的な日本企業に対し、CTCは新技術であるOpenStackでのクラウドソリューションをどう訴求していくのか。
「CTCはシステムインテグレーター(SI)として、さまざまな業種、産業の企業活動を支援してきました。OpenStackについては、2011年からSIビジネスとユーザーグループ“日本OpenStackユーザ会(JOSUG)”の両面から取り組んでおり、顧客企業に対しても、OpenStackがどんな価値をもたらすものなのか、既存の環境からどう移行できるのかを積極的に説いてきました。そうした活動の中で、理解と導入が進む効果的な方法を見つけました。“OpenStackに対する企業の姿勢の違いにより、訴求のアプローチを変える”ことです」(CTCの小岩井氏)
「企業の姿勢別」に、アプローチの方法を大きく三つに分けた。「アプローチA」は、OpenStackがもたらすインパクトを理解しており、活用に積極的で「既に使っている/すぐに使いたい」という企業向け。「アプローチB」は、OpenStackのインパクトを理解しており、活用意向も積極的だが、「調査中」あるいは「使う可能性はあるが、今すぐではない」という企業向け。「アプローチC」は、OpenStackのインパクトはいまいち理解していないが、「業務部門からの要望があるから。使う可能性はある。勧められれば検討する余地はある」という企業向けだ。
これは、「変化に対する、抵抗感の強さの違い」で分類することもできる。それぞれに差があるリスクを減らしながら、それぞれの企業に合ったソリューションを利用していくことが顧客にとっての最適解になるという考えだ。勧める商材も以下のように変わる。
- アプローチA:ベンダー提供の商用製品を使った構築方法にする。商用製品のソリューションを提案する
- アプローチB:OpenStackとオープンソースソフトウエア(OSS)を使った構築方法にする。OpenStack環境を構築するソリューションを提案する
- アプローチC:アプリケーション開発環境の構築を勧める。OpenStack環境を利用するソリューションを提案する
CTCはいずれのアプローチでも提案もできるが、特に「これから使う可能性がある」企業の拡大に努めているという。つまり、当てはまるのはアプローチBとCの「いろいろな都合が残っており、変革が進みにくい」企業だ。
「アプローチBは、OpenStack環境を構築するソリューションです。コンサルティングやインテグレーションにフォーカスし、テクノロジーリーダーとのパートナーシップにより、米国と変わらないスピードでIT利用を推進できるようにします。アプローチCは、OpenStack環境を利用するソリューションです。クラウドネイティブなアプリケーション開発にフォーカスし、APIの理解やアジリティの獲得を目指しています」(CTCの小岩井氏)
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