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データベースウォッチャーが振り返る2015年、「次に“来る”DBの技術トレンド」とはDatabase Watch(2015年総集編)(3/3 ページ)

クラウド、IoT、ビッグデータ、あるいは機械学習やAIなど、これまで“ITバズワード”だった技術が、急速に実需として具体化しています。その“データ”はどこに蓄積されるのか。そう、データベースです。データベースの最新事情を追う連載「Database Watch」から、2015年の動向を振り返り、「次に“来る”DBトレンド」を先読みします。

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2016年は豊作!? データベースソフトウエアの新バージョン

photo インメモリ技術における「Oracle Database 12c Release 2」の改善ポイント
(「オラクルが確約した“クラウド6箇条”と“Database 12c R2”の気になるトコロ」から)

 このように2015年も、データベース関連の話題は多岐にわたりました。あらためて主要な商用リレーショナルデータベース製品全般の動向も振り返っておきましょう。

 2015年は主要ソフトウエアで新バージョンのリリースがない年でした。その代わりに2016年は豊作となりそうです。加えて、近年では新バージョンのリリース方法に変化が生じているのも興味深いところです。

 まずは次期バージョンについて。オラクルは「Oracle Database 12c Release 2」を2016年にリリースする予定です。詳細は「オラクルが確約した“クラウド6箇条”と“Database 12c R2”の気になるトコロ」「クラウド時代の“Oracle Database”はどこへ向かうのか」にて紹介しました。オンプレミスとクラウドを隔てなく使えるハイブリッドクラウドを強く意識した設計がなされ、12c Release 1に対し、マルチテナント機能の拡張やプロセッサーで性能強化を図る「Software in Silicon」による強化がポイントです。

 次にマイクロソフト。次期バージョン「SQL Server 2016」は、その名称の通り2016年にリリース予定です。製品としての正式リリースは先かもしれませんが、新機能はマイクロソフトのクラウドサービス「Microsoft Azure」にあるデータベースサービス「SQL Database」のパブリックプレビューという形で段階的に提供されています。この詳細は「クエリストアって何だ? SQL Server 2016のパフォーマンス向上に注目」をご覧ください。

 SQL Server 2016のポイントは、ミッションクリティカルな要件にも耐え得る性能の強化を中心に、データ分析やクラウド環境における拡張性を高めたことにあります。中でもインメモリエンジンの拡張は、データベース高速化とデータ分析需要の両立を目指しています。近年の商用データベースは具体的な実装技術や名称は異なりますが、市場やユーザーのニーズに沿って、似た方向を目指していることが分かります。

 IBMはどうでしょう。IBMのリレーショナルデータベース「DB2」は、最新版の10.5が2013年のリリースでしたので、そろそろ次バージョンの話が出てもおかしくありません。2016年は、何らかの動きを期待します。

 3社ともクラウド運用を明確に見据えていること、そして更新も集計も高い性能を出すデータベースを目指しています。後者を実現する手法として、「メモリ上で列指向のデータ形式を持つ」インメモリでのアプローチも大まかに見れば共通しています。

photo SQL Server 2016 CTP(Community Technology Preview)を公開しているTechNetのWebサイト(2015年12月現在はCTP 3.2)
(「クエリストアって何だ? SQL Server 2016のパフォーマンス向上に注目」から)

 このように、オラクルやマイクロソフトは従来の慣習通りに次期バージョンのベータ版を提供してはいますが、近年、次期バージョンのリリース方法が変わりつつあることに注目しています。これまではベータ版はあるにしても、それは一部の先端ユーザーが使うもので、一般ユーザーとしては正式版が出てからようやく新しい機能に触れるイメージでした。リリースされたばかりの新バージョンは「バグがありそうで怖い」というイメージを持つことも少なくありませんでした。

 しかし近年は「クラウドサービスにて、新機能単位で先行公開される」ようになってきています。典型的なのが先述したマイクロソフトです。SQL Serverとコードを共有する「SQL Database」で新しい機能を先行利用できるようにし、同時に検証も進められています。同様にIBMのDB2も、Bluemix上の「dashDB」で似た取り組みが進んでいます。

 つまり、「新機能」はバージョンアップの正式リリースまで待つのではなく、クラウドプラットフォームにて小さい単位で提供し、段階的に試せるようにするのが主流になりそうです。そして製品版になるころにはユーザー検証も多く経ているので、より完成度が高い状態で正式リリースできるということになります。

 もう一つ、2015年9月にDB2のユーザーコミュニティ「Club DB2」のSQLのパフォーマンスチューニング勉強会に参加し、「最適化したはずなのに性能が出ないデータベースが生まれる意外な理由」を掲載しました。ClubDB2とはいえ、考え方はリレーショナルデータベース全般に通じる話でした。データベースの性能改善ノウハウを欲するエンジニアは、この記事も再チェックしてみて下さい。こうした勉強会のリポートなど、データベースの基本的な仕組みを理解するための話題も引き続き取り扱っていきます。

 2015年もお付き合いいただき、ありがとうございました。2016年はどのような動きがあるでしょうか。新しい技術がどのような仕組みとなっているのか、データベースエンジニアとして知るべきことをお伝えできればと考えております。2016年もどうぞよろしくお願いいたします。

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