五輪エンブレム盗用疑惑は、なぜ防げなかったのか――デザインワークプロセスの新しい形とは?:Go AbekawaのGo Global!〜Patrick Llewellyn編(2/3 ページ)
デザイナーと企業を結ぶ「99designs」のPatrick Llewellyn氏に、マーケットプレースが世界のデザイナーに与える可能性について、そして東京オリンピックのエンブレム盗用疑惑について伺った。※Llewellyn氏から日本のエンジニアへのメッセージ動画付き
東京オリンピックエンブレムの盗用疑惑は、どうすれば防げたのか?
阿部川 東京オリンピックのエンブレムをめぐる一連の騒動をご存じかと思います。このようなコピーライトやトレードマークの問題に対して、どのように対処していますか?
ルウェリン氏 とても難しい問題ですね。二人のデザイナーが、互いに影響し合ったわけでもないのに偶然同じようなデザインを作ってしまうことは、現実的には起こり得ると思います。
新しいアイデアだと思われるものでも、必ずと言っていいほど過去の何らかの作品にインスピレーションを受けて作られています。先駆者的な立場の人がいて、その考えを皆がフォローして、それによって新しい考え方が生まれている、とも言えます。ですから、どこまでが継承されたもので、どこからが新しいアイデアなのかを見極めるのはとても難しいのです。
99designsの利点は、多くのプロフェッショナルの目が常にあるということです。「あるデザインが誰かのものと酷似している」とか、「すでにあるデザインの意匠を侵害する恐れがある」などのコピーライトに関してコミュニケーションし、サービス内の何千というデザインについて意見を求める仕組みがあるのです。
東京オリンピックのエンブレムの件は大変残念でしたが、99desginsでコンテストが行われれば、事情が少しは違っていたかもしれません。
阿部川 「信頼」は、ここ日本では特に大切なファクタです。多くの人の目に触れながらプロジェクトが進行するのは、新しい形のデザインワークのプロセスだと言えると思います。
日本は独自であり、スペシャルでもある
阿部川 Webサイトを拝見して、日本語の表現がとても自然で的確なことに驚きました。
ルウェリン氏 ヨーロッパなどは、基本的に英語が共通語であり、通貨単位などほんの細かい点を変えるだけで業務を行えました。
しかし日本は、Eコマースの仕組みが異なっている他、Webデザインの作り方や嗜好が独特なので、日本の市場に特化したWebサイトやサービスを提供しなければなりませんでした。そこで日本のビジネスパートナーと、日本市場でビジネスを展開するためのコンセプトを共同で作り、Webサイトやサービスのローカライズ(日本化)を行いました。
阿部川 日本での競合はどこですか?
ルウェリン氏 日本市場独自の競合といえば、「ランサーズ」や「クラウドワークス」でしょうか。
阿部川 それらの企業との差別化のポイントはどこでしょうか?
ルウェリン氏 一番の違いは、99designsがグローバル規模のサービスだということです。昨今、日本の多くのスタートアップ企業が、グローバル市場を相手にビジネスを展開しようと考えています。彼らには世界規模の市場にアピールするものが必要です。
日本は高度に洗練されたデザインの歴史と力量を持ち、芸術性の高さや、工芸としての巧みさは、世界中から称賛を浴びています。
多くの素晴らしいデザイナーが日本にいることも分かっています。日本のデザイナーは、グローバル市場を相手にしてビジネスをするチャンスを、99designsでつかめると思います。
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