残業がなくなれば、人生はバラ色になるの?――ワークライフバランスの正しい取りかた:仕事が「つまんない」ままでいいの?(26)(4/4 ページ)
ワークライフバランスが叫ばれている昨今、残業も大きな問題になっています。しかし、「残業=悪」なのでしょうか。仕事の不満や悩みを解消するヒントをお届けする本連載。今回のテーマは、エンジニアの「仕事と残業の在り方」です。
自分にとっての「充実とは何か」を考えてみよう
もっとも、ここで「ワークライフバランス」の言葉の問題を指摘しても、あまり意味のないことかもしれません。皆さん1人1人が「ワークはライフの一部である」「仕事によって得られる人生の充実感もある」ということを、再認識すればよいわけですから。
けれども、「残業=悪いこと」「仕事=悪いこと」に多くの人の意識が振れてしまうのは、問題だと思います。仕事は決して、悪いことばかりではないし、充実できる要素もたくさんある。もし、理想を何でも実現できるとしたら、一律で「残業60時間以上はダメ」ではなく、皆さん1人1人の好みや状況で判断するのが理想的でしょう。
けれども、仕事に価値を置いている人ばかりではないし、自分の意思とは関係なしに残業させられて、長時間労働で苦しんでいる人も実際にいます。そういう人たちが救われないと、社会としては問題です。そこで、どこかでバサッと一律に区切ってしまおう、というのが今のところの現実解なのでしょう。
だからといって、「残業は悪いことなんだ」「仕事はほどほどにしてそれ以外を充実させましょう」という社会の「良しあし」に流されると、仕事で充実感を得ることが難しくなります。
人生とは、何かと何かを切り離して奪い合うものではなく、いろんな要素が融合して成り立っているものだと思います。
家族、親、地域社会との関わり、仕事、そして、個人としての自分……いろんな要素がある。それらの「おいしいとこ取り」でいいんじゃないでしょうか。
ましてや、ビジネスパーソンにとって仕事は、1日の中で最も多くの時間を過ごすものです。それを「悪」にしてしまうのはもったいない。
エンジニアの仕事は、自分の感性で「充実している」や「していない」が分かる仕事です。「今の仕事で充実しているのかどうか」、もし充実していなければ、「どんな仕事や環境だったら充実しているといえるのか」「少しでも仕事を充実させるために、今の環境の中でできそうなことはないか」を、自分の感性で判断していくことが、社会の「良しあし」に流されないコツじゃないかな、と思います。
今回のワーク
大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。
1 先月の残業時間は何時間でしたか?
2 今の人生(ライフ)の充実レベルを表現するとしたら何点ですか? その中で、仕事(ワーク)が占める割合は何%ですか?
3 「人生 vs 仕事」ではなく「仕事は人生の一部」としたら、仕事とどう関わりたいか考えてみましょう
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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