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クラウドとIoT、機械学習を活用したモニタリング/フィードバックの仕組みで糖尿病患者の自己管理を支援Oracle Cloudが可能にした短期間でのシステム提供(2/3 ページ)

クラウドやIoT、機械学習などの先進技術をヘルスケア分野に応用する動きが活発化している。その1つが、あいち健康の森健康科学総合センターが中心となって進める、患者の自己管理の支援を通して生活習慣病の改善を目指す取り組みだ。[パブリッククラウド][Oracle Cloud]

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日々の健康状態をモニタリングし、モバイルアプリでフィードバック

 こうした考えから、このプロジェクトは患者自身による糖尿病管理に向けた生活習慣の改善を、ITを活用して効果的に支援していくことを目指したものとなっている。

 通常、患者は数カ月に1度、あるいはそれ以下の頻度で外来診療に訪れる。しかし、現場で診療やアドバイスを行う医師には、前回の診療時と当日の検査数値の他に参考にできるデータがないのが実情だという。そこで、プロジェクトではネットワーク機能を備えた活動量(歩数)計、体重計、血圧計などを利用して患者の日々の健康状態をモニタリングし、「診療の空白期間」における患者のデータを取得する。同時に、スマートフォン向けアプリケーション「七福神アプリ」を使い、モニタリングした数値に基づく患者へのフィードバック(数値の集計結果や七福神のキャラクターによる応援メッセージなど)をより短いサイクルで行い、行動変容を促す仕組みの構築を目指している。

医師が「患者の診療の空白期間」も的確に把握できる情報を提供し、かつ、患者本人の「行動変容を促す」ように設計されたシステムを開発

 実際のシステム化に当たっては、21の病院、2つの保健指導機関との連携、患者の個人情報の取り扱いに関する各医療機関での倫理審査、対象者の確保など、さまざまな手続きが必要となった。また、経済産業省の実証事業として推進したこともあり、期間や費用面での制約が厳しかったことから、システム構築についてはすでに市場に流通しているヘルスケアデバイスを採用し、インフラに関してはパブリッククラウドの活用を検討したと加藤氏は話す。検討の結果、このインフラ部分については「Oracle Cloud」が採用された。

「糖尿病患者への行動変容支援プロジェクト」の全体スケジュール

 これらと並行して、患者の行動変容を促すフィードバックの仕組みとして七福神アプリの開発が進められた。加藤氏は、「糖尿病を患った皆さんの中には、生活習慣を少し変えるだけで数値を改善できる可能性が高いことをご存じない方が少なくはありません。七福神アプリでは、実際の生活管理は意外と簡単で、我慢しすぎる必要もないことを理解していただけるような情報提供を行うよう工夫しました」と話す。数値を基に七福神のキャラクターがアドバイスを行ったり、メッセージ配信の頻度を週2回に抑えたりといった点についても、検討を重ねた末に決定した。

糖尿病患者に「生活習慣を少し変えるだけで数値を改善できる可能性が高い」ことを正しく伝えることを目的に開発された「七福神アプリ」

 また、このプロジェクトでは、患者が持つヘルスケアデバイスから収集した生活データやアプリの利用状況などのデータを機械学習のアプローチによって詳細に分析することで、最終的な目標である「検査数値の改善」に対して、各項目がどのように影響を与え合っているのかのモデルを作成することも目指している。このモデル化が可能になれば、それぞれの患者に対して、どのような治療や対応を行えば、より効果的に生活習慣が改善されるかといった指標作りに発展させていける。これらの取り組みを通して、「糖尿病患者の治療や指導に関して医療関係者の助けとなる知見が得られることに期待しています」と加藤氏は話す。

Oracle Database Cloud Serviceの豊富な機能が短期間でのシステム提供を可能に

photo 日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud/Big Data/DISプロダクト本部担当ディレクターの下道高志氏

 加藤氏によるプロジェクトの紹介が終わると、続いて日本オラクルの下道高志氏(クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud/Big Data/DISプロダクト本部担当ディレクター)が登壇し、このプロジェクトの技術面の取り組みについて補足説明を行った。

 まず、IoTのフロントエンドとなるデバイスとしては、Bluetooth通信に対応したオムロン製の活動量計、体重計、血圧計が採用された。これらのデバイスで取得したデータは、同じくオムロンが運営するネットサービス「WellnessLINK」に蓄積される。このプロジェクトでは、WellnessLINK上のデータをOracle Cloudのデータベースサービスである「Oracle Database Cloud Service」にインポートし、その上でさまざまな処理を行っている。

photo オムロンの活動量計などで得られたデータをスマートフォン経由でサーバに蓄積する「WellnessLINK」

 「このプロジェクトでは、約1カ月という短い期間と限られた予算の中で、IoTデータの蓄積、統計分析、スマホアプリ(七福神アプリ)に対するメッセージ送信、そして機械学習など、さまざまな要件を実現する機能の実装が求められました。また、重要なポイントとして、健康/医療データを扱うため、セキュリティが確実に確保されている必要もありました。これらの条件から、Oracle Database Cloud Serviceが最適と判断されたのです」(下道氏)

 上記の要件を満たすために、Oracle Database Cloud Serviceのエディションは「Oracle Database 12c Enterprise Edition High Performance」を採用し、Oracle Database Enterprise Editionの基本機能に加えて、同エディションで利用可能な「Oracle REST Data Services(ORDS)」「Oracle Application Express(APEX)」「Oracle Advanced Analytics」および「Data Miner」「Transparent Data Encryption(TDE)」の各オプションを使用している。

 これらのうち、ORDSはREST APIを利用したOracle Databaseへのアクセスを可能とする機能だ。ORDSは、モバイルアプリなどHTTPクライアントからのGETやPOSTによるHTTPリクエストをSQLにマッピングし、クエリの実行結果をJSON形式に変換してクライアントに送り返す。このプロジェクトでは、患者に対して定期的なフィードバックを行うために七福神アプリを開発したが、ORDSにより、一般的なWebアプリケーション開発のスキルでOracle Databaseを使うアプリケーションの開発が可能となり、工数削減に寄与したと下道氏は話す。

RDBがJSONフォーマットのデータを提供する「Oracle REST Data Services(ORDS)」

 Oracle APEXはOracle Databaseに標準で備わるWebアプリケーション開発ツールであり、Oracle Database Cloud Serviceを使って動作するWebアプリケーションをWebブラウザ上で簡単に作成できる。今回のプロジェクトでは、実証実験の進行に伴って明らかになった追加要件(例えば、現場の医療関係者からの「ユーザーがアプリにアクセスする頻度を観察したい」「それぞれの指導医に対して、患者個人の測定値を提供したい」といった要求)を実装する際に使われた。実際のアプリケーション作成は下道氏らが行ったが、「数分程度で開発が行えるため、追加要件をいただいた翌日には修正版のアプリケーションを提供することができました」と話す。

判定サマリー(個人用)

 Oracle Advanced AnalyticsとData Minerは、Oracle Database Cloud Service上に蓄積したデータを用いた機械学習により、データ間の関連性を分析し、予測モデルを作成するために使用した。分析対象の属性を指定することで、対応する複数の学習アルゴリズムを同時に実行することができ、「プロジェクト開始後1カ月分のデータからも有意な分析結果を導き出すことができた」(下道氏)という。

機会学習を用いた分析手法で実現

提供:日本オラクル株式会社
アイティメディア営業企画/制作:@IT 編集部/掲載内容有効期限:2017年4月5日

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