Windows Server 2016の今後の“更新”が怖い:山市良のうぃんどうず日記(98)(2/2 ページ)
テスト環境として構築したWindows Server 2016の物理サーバと仮想マシン。その一部でWindows Updateやシャットダウンに異様に時間がかかるといった現象に遭遇しました。そんな中、Windows Serverの次期バージョンに関する新方針の発表もあって、いろいろな面で“更新”に対する不安が高まっています(筆者の個人的な感想)。
Windows Serverも年2回の機能更新に?
2017年6月もWindows Server 2016のWindows Updateに振り回されたわけですが、6月15日、マイクロソフトからWindows Serverの更新に関する衝撃的な発表(筆者にとって衝撃的)がありました。Windows Serverに「Semi-annual Channel」という更新チャネルが設定され、年に2回(9月と3月)のサイクルで機能更新、つまり新バージョンが提供されることになるというのです。Windows Serverに合わせ、System Centerについても継続的に更新されるようになります(Configuration Managerについては、2016年からLTSBとCurrent Branchの2種類のオプションがあります)。
- Delivering continuous innovation with Windows Server[英語](Microsoft Hybrid Cloud Blog)
- Frequent, continuous releases coming for System Center[英語](Microsoft Hybrid Cloud Blog)
- Windows Server Semi-annual Channel Overview[英語](Windows IT Center)
これまで、Windows Server 2016は「Long Term Servicing Branch(LTSB)」として10年のサポート(メインストリームサポート5年+延長サポート5年)が提供され、Windows Server 2016の「Nano Server」に関しては「Current Branch for Business(CBB)」として、Windows Serverソフトウェアアシュアランス(SA)を通じて年に2〜3の機能更新が提供されることになっていました(その約束とは異なり、現時点までにNano Serverの新バージョンは提供されていません)。
Windows 10およびOffice 365 ProPlusについては、2017年秋から「Semi-annual Channel(Pilot)」の提供が始まり、9月と3月の年2回の機能更新にそろえられることが発表されています。
- Office 2016の新機能が見当たらない? ライセンスと更新チャネルの話|【重要】2017年秋、Office 365の更新チャネルの名称とタイミングが変わります(連載:Windowsにまつわる都市伝説 第84回)
Windows Serverの「Semi-annual Channel」もまた、このリリースサイクルにそろえられるということになります。次期バージョンは“Windows Serverバージョン1709”、その次は“バージョン1803”という感じです。Windows Serverの「Semi-annual Channel」の各バージョンは18カ月サポートされるということです。
なお、Windows Serverの「Semi-annual Channel」は、Server CoreインストールとNano Serverが対象であり(デスクトップエクスペリエンスのインストールオプションは後述するLTSCでのみ提供)、新バージョンを取得するには、Windows Server SAが必要です。Azure仮想マシンとしてなら、Windows ServerのライセンスやSAなしで、最新バージョン(あるいは幾つかのバージョン)をデプロイして利用できるようになるはずです。
絶えず進化し続けるクラウドアプリの基盤としてなら「Semi-annual Channel」は重要かもしれません。しかし、オンプレミスのインフラ系サーバの場合、年に2回あるいは最大引き延ばして18カ月ごとのバージョンアップなんて悪夢でしかありません
でも安心してください。現行のWindows Server 2016は、Windows Server SAの有無に関係なく「Long Term Servicing Channel(LTSC)」(LTSBから改名)として10年のサポートが提供されますし、「Premium Assurance」という契約でさらに6年サポートを延長することができます。LTSCは、2〜3年に1度のサイクルで新バージョンが提供されるそうなので、Windows Serverの次期LTSCバージョンは2019年以降になると思います。LTSCはインフラ系サーバ環境向け、Semi-annual ChannelはWebアプリのプラットフォームなど新しいOSイメージ上に再デプロイするのが容易な環境(PaaS型クラウドやWindowsコンテナなど)向けという住み分けになるのではないでしょうか。
なお、Windows Server SAは、アップグレード権だけではありません。Windows Server SAを契約したからといって、「Semi-annual Channel」に移行しなければならないわけではありません。次期LTSCへのアップグレード権にもなりますし、以下のサイトで説明されているように、「障害復旧目的のコールドバックアップ」「延長ホットフィックスのサポート」「Azureハイブリッド使用特典(Azure Hybrid Use Benefit、サーバライセンスをAzure仮想マシンで使用することで仮想マシンの価格が最大40%オフに)」などの目的で利用することもできます。
- ソフトウェア アシュアランスの対象製品|サーバーおよびクラウド プラットフォーム(マイクロソフト ボリューム ライセンス)
Windows Server 2016の今後の更新を考えると心配になる
リリース後半年でWindows Updateが何やらおかしくなってきているWindows Server 2016ですが、累積的な更新プログラムのサイズは既に1GBを超えています(KB4022715のMicrosoft Updateカタログでのダウンロードサイズは1099.9MB)。この先、延長サポートの期限である2027年1月までを考えると、いろいろ心配になってきます。例えば、Windows Updateに異様に時間がかかる症状は根本的に解消されるのでしょうか。
Windows Server 2016で発見された不具合が、「Semi-annual Channelのバージョン1709で修正されました」「バージョン1803で修正される予定です」という扱いになることだけは止めていただきたいものです。
「Creators Updateのお知らせ」問題は解消
2017年6月のWindows Server 2016向けの更新で、1つだけグッドニュースがあります。2017年3月の更新以降、Windows Server 2016の「設定」→「更新とセキュリティ」→「Windows Update」に「お待たせしました!間もなくWindows 10 Creators Updateをお使いいただけます。いち早く手に入れる方法を確認しますか?」(英語版では“Good news! The Windows 10 Creators Update is on its way. Want to be one of the first get it?”)という案内が表示されるという問題がありました。
Windows 10 Creators Updateの対象ではない、Windows 10 Enterprise 2016 LTSBにも同様に不適切な案内が表示されていました。この表示の問題が、6月の更新でようやく解消しました(画面4、画面5)。
画面5 2017年6月の更新が完了した直後のWindows Server 2016。Creators Updateのお知らせは表示されなくなった。Windows 10 Enterprise 2016 LTSBでも問題は解消
この問題の回避策(レジストリ値「HideMCTLink」による非表示)を説明したサポート技術情報には、現時点(Last Review:May 18,2017 - Revision:15)で問題が修正されたことは書かれていません。
- How to disable Windows Creators Update notice for users[英語](Microsoft Support
6月の更新プログラムに関するサポート技術情報にも、この問題が修正されたことは書かれていません。しかしながら、6月の累積的な更新プログラムを個別にダウンロードしてインストールしてみたら、レジストリ値「HideMCTLink」は作成されていないので、何らかの方法で表示されなくなったようです。Windows Serverの「Semi-annual Channel」が始まると、復活したりして(冗談です。デスクトップエクスペリエンスのインストールオプションは、Semi-annual Channelでは提供されません)。
最新情報(2017年7月28日追記)
2017年7月27日(米国時間)、Windows 10 バージョン1703のCBB向けリリースが発表されました。リリース情報としては、今回のリリースから「Semi-Annual Channel」という表記と概念に変更になっています。
新しい概念ではCBが「Semi-Annual Channel(Targeted)」(以前の発表時には(Pilot)でしたが変更されました)、CBBが「Semi-Annual Channel」(以前の発表時にあった(Broad)という表記は削除されました)。
なお、Windows 10のUIやグループポリシー設定は以前のCB/CBB表記のままです。また、Windows 10 バージョン1703のSemi-Annual Channel向けリリースの発表と同時に、Windows 10 バージョン1511のサポートが「2017年10月10日」に終了することが発表されています。
- Windows as a service: Simplified and Aligned[英語](Microsoft Windows for IT Pros)
- Overview of Windows as a service[英語](Microsoft Windows IT Center)
最新情報(2017年8月28日追記)
2017年8月23日にリリースされたWindows 10 Insider Previewのビルド「16273.1000」のポリシー設定において、従来のCB/CBB表記から「半期チャネル(ターゲット)」「半期チャネル」(英語版では「Semi-Annual Channel(Targeted)」「Semi-Annual Channel」)の表記に変更されていることを確認しました。ただし、これはWindows 10 Fall Creators Updateに向けた開発中のプレビュービルドであり、さらに変更される可能性もあります。
筆者紹介
山市 良(やまいち りょう)
岩手県花巻市在住。Microsoft MVP:Cloud and Datacenter Management(Oct 2008 - Sep 2016)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。マイクロソフト製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows Server 2016テクノロジ入門−完全版』(日経BP社)。
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