RubyやPythonができるからって何?――エンジニアがパーツに成り下がらずに生き残る方法:夏休みSpecial 山本一郎×細川義洋対談 キャリア残酷物語(2/3 ページ)
@ITの人気連載「開発残酷物語」の山本一郎氏と、「IT訴訟徹底解説」の細川義洋氏がエンジニアのキャリアについて、超真剣に話し合った。
乗り物にこだわらず、目的地にこだわれ!
大手ベンダーは、手掛けている分野が広くいろいろな受け皿があるため、希望するキャリアパスを実現できる可能性がまだある。
しかし下請けの中小企業では、それさえも難しい。
山本氏が関わってきたゲーム業界は二次請けや三次請けの会社も多く、現場のエンジニアは、「もっとスゴいエンジニアになりたい」が、スゴくなるにはどうずれば良いのかが分からない。
そもそも「スゴいエンジニアってどんなエンジニア?」という人もいるという。
「どこまでも美しいコード書く、技術をトコトン極めるという考え方もあるかもしれませんが、対象となる業務への知見があるのがスゴいエンジニアだと私は思います」(細川氏)
細川氏によれば、理想は看板(社名)がなくても仕事の依頼が来ること。特定の業務について、きちんとしたバックグラウンドを構築していけば、それがそのまま強みとなり、エンジニアとしての価値につながるという。
「どうも昨今の転職サイトや、クラウドソーシングなどを見ていると、1つの技術にこだわり過ぎている人が多いような気がします。『Pythonができる、だからそれに見合った仕事が欲しい』みたいな」(山本氏)
「みんな枝葉にこだわってますよね。でも本来はそうではなく、その技術を使って『御社の生産管理を何とかします』ぐらい言えないと。技術と業務知識がセットになって、初めて価値が生まれるんです」(細川氏)
目的を達成するための「手段」であるはずの技術が、エンジニアのキャリア形成の中で「目的」になっていることがある。
「例えば、OpenLinkとOpenData使って、『新しいものを作ろう』と頑張っている人がいる。一方で、『私はRESTFUL APIを完璧にマスターしています』という人がいる。RESTFUL APIがなくなったら、生き残れるのがどちらかは明白です」(細川氏)
ここまで細川氏の話をじっと聞いていた山本氏が、分かりやすい例えを持ち出した。
「ある人の現段階でのキャリアの理想が『新幹線で福岡に行くこと』だと仮定しまょう。この場合、目的は『福岡に行くこと』であって、『新幹線に乗ること』ではありません。しかし、新幹線にこだわってしまう人がいるんですよねー。福岡に行きたいのか、それとも新潟に行きたいのか、がないんです」(山本氏)
「それ、分かります。『福岡に行きたい』という目的がハッキリしている人は、新幹線が止まったら飛行機で福岡に行きます。バスでも、車でも徒歩ででも、何とかして福岡に行こうとします。でも新幹線にこだわっている人は、新幹線が止まったら福岡には行けません。廃線になってしまったら、一生福岡にたどり着けません」(細川氏)
「R言語だ、Pythonだとこだわる人がいるけれど、データサイエンスを熟知している人なら、R言語もPythonも関係ない。すでに動いている環境を見ながら調整することが必要になるわけで、そのとき最適な手段を使えば良いだけの話ですからね」(山本氏)
転職サイトなどでは、経験言語や開発環境にチェックを付ける。このチェックした項目イコールスキルだと思っているエンジニアは多いだろう。
しかし、これらの要素はエンジニア本体の装備でしかない。C#を書けるエンジニアがC#の技術者を求めている企業に転職する、これは企業が「商品棚に並んだ『パーツ』を買って、足りない部分に入れる」のと同等であり、エンジニアが企業にとって都合のよい「差し替え可能なパーツ」になりかねないのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- エンジニアよ、部品になるな――Go Galaxyな男の運命の拓き方
宇宙葬や人工衛星キット開発など宇宙関連事業を手掛ける「スペースシフト」の金本成生氏。学生時代にIT企業を起業、米国で就職、宇宙事業に進出、とフィールドを広げてきた金本氏に、エンジニアのキャリア構築法を伺った - ベンダーよ、シェルパの屍を越えていけ 〜 細川義洋×山本一郎「なぜ、システム開発は必ずモメるのか?」
リスペクトなきプロジェクトには死が待っている―― 山本一郎さん(やまもといちろう a.k.a.切込隊長)と、東京地方裁判所 民事調停委員 細川義洋さんによるDevelopers Summit 2014の最終セッションは、雪の寒さとは違う意味で会場を震え上がらせた - カンボジアは残存率3割弱、離島の男性は全滅――山本一郎氏が聞く、オフショア&ニアショアで働き手を開拓し続けた企業の8年間
トラブルの原因は何だったのか、どうすれば良かったのか、同じトラブルを起こさないようにどういう手だてを取ったのか。実在する開発会社がリアルに体験した開発失敗事例を基に、より良いプロジェクトの進め方を山本一郎氏が探ります - 恐怖! 暴走社長「仕様は確定していませんが、納品はしてください」
自社の不手際でプロジェクトが遅延しているのに、ベンダーを訴えたユーザーの社長。勝ち目のない裁判に社長が打って出た理由は何だったのだろうか? - 文系エンジニアはなぜ誕生したのか〜日本の現実
「職業はITエンジニアです。大学の専攻は英文学です」「私は文系SEだから、プログラミングは苦手です」――このような「文系エンジニア」が、あなたの周りにもいないだろうか? 日本独自の文系エンジニアは、どのような経緯で誕生し、どのような働き方をしているのか。「文系」「理系」で分類することに意味はあるのか。日米のエンジニアが真剣に解説する