放送前にテレビCMの広告効果を予測――野村総研、AIを活用した効果予測モデルを開発
野村総合研究所(NRI)は、AIを活用したテレビCMの効果予測モデルを開発。放送前にテレビCMの広告効果を高精度で予測し、色彩、タレントや商品の表示時間、BGM、カット数などを変更した場合にどの程度効果が改善するかについてシミュレーションできるという。
野村総合研究所(NRI)は、AI(人工知能)を活用して、放映前にテレビCMの効果を予測するモデルを開発したと発表した。
NRIが提供する広告効果測定プログラム「インサイトシグナル」サービスで収集するシングルソースデータ(同一対象者から一定期間収集したメディアへの接触状況と、消費・購買行動を収集したデータ)をAIで分析することで、「どの程度の広告効果が見込めるか」を高精度で予測できるという。
具体的には、テレビCMを放映した場合、そのCMがきちんと認知される(覚えやすい)のか、そのCMによって消費者の購入・利用意向がどの程度向上するかについて、「CM認知スコア」「購入・利用意向スコア」で数値化し、定量的に予測する。
さらに、色彩、タレントの表示時間、商品の表示時間、BGM、カット数などを変更した場合、どの程度、広告効果が改善するかについてもシミュレーションできる。
同予測モデルを用いて、テレビCMによる広告効果を予測したところ、CM認知スコアについては95.3%、購入・利用意向スコアについては91.3%という精度で、正解率(AIによる予測結果と実際の測定結果の一致割合)を判定できたという。
この検証では、過去にインサイトシグナルで取り扱った約3万サンプルの消費者から得られた広告効果データと、203事例のテレビCMについて画像解析や音声解析など複数の手法を組み合わせて特徴量を抽出したデータとをひも付け、これらのデータを機械学習したAIで両者の関係性を明らかにした。機械学習の過学習を回避するために、交差検証(クロスバリデーション)なども実施しており、予測モデルが広告効果の予測に利用できる精度を持つことを検証できたという。
同社は、インサイトシグナルで、より高精度かつ多様な視点から放映予定のテレビCMについて事前に効果予測ができるサービスの提供を2018年度中に開始する予定としている。
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